書籍カテゴリー:形成外科学|皮膚科学

再生医療と美容
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再生医療と美容

1版

  • 名古屋大学教授・東京大学教授 上田 実 編

定価:8,640円(本体8,000円+税8%)

  • B5判 135頁
  • 2007年5月 発行
  • ISBN978-4-525-38151-6

概要

今話題の再生医療─いまだ研究段階のものから,普及の準備段階にある技術まで,幅広く展開している.その中でも最も実用的に急速に普及していくであろう美容分野の再生医療技術を,わが国の最先端の実績をもつスペシャリスト達が惜しみなく解説.線維芽細胞を用いたしわ治療をはじめ,脂肪由来幹細胞を用いた豊胸術,口腔領域の審美性の改善(歯槽骨および歯間乳頭の再生)など,最新の再生医療技術が満載です!

序文

再生医療に関して,これまでさまざまな見地から多岐にわたる論文,テキストが出版されたが,どれ一つとして真の意味で臨床医に役立つ出版物はなかった.再生医療が最終的に患者を疾病の苦しみから救うことを目指していることを考えるならば,この分野の研究に20年以上にわたって携わった者として,いささかの驚きと恨悔の念におそわれる.それほどに失われた組織を人為的に再生することは困難であり,発生生物学,材料科学や細胞生物学およびこれに関連したさまざまな分野の発達があってこそ,はじめて可能になるということである.
幸いなことに最近の細胞生物学の急速な進歩によって,生細胞を用いて薬剤や生体材料ではなしえなかった高度な組織・機能の再生が図れることが明らかになった.これには細胞の力を最大限に発揮させるための足場材料,成長因子が同定されたことや,大量の細胞を分離し安全に増殖させる装置の開発,培養添加剤の生産と供給が可能になったことが寄与したことはいうまでもない.本書では先端的な再生医療のうち臨床応用が可能となった皮膚,骨などの再生技術を紹介する.これらの情報は研究者や学生にだけではなく,臨床医にとって明日の診療に役立つ有用な情報を提供するだろう.一方,再生医療が先端的であればあるほど,従来の法的枠組みでは規制できない医療内容を包含せざるをえない.こうしたトランスレイショナルリサーチはどのようなルールのもとで社会に導入し,科学的合理性と倫理的妥当性を満たした状態で実施されるべきか,本書ではその具体的指針も紹介されている.
そもそもあらゆる疾病治療の理想は自然治癒である.われわれが行う医療行為とは治癒につながる環境を最適化し生体機能を補助するにすぎない.基本的に医師は人体の自然治癒に必要な酸素と栄養を高める手助けをするのが仕事である.再生医療はこうした自然治癒のための生体環境を巧みに操作するための技術であり母なる自然の営みを模倣する科学といってよい.
このたび再生医療の概念が究極のQOL医療である美容に応用された意義はきわめて大きい.美容医療はこれまで先端医学研究の埒外におかれ,もっぱら実学としての医療技術の開発と臨床的効果を優先した分野であった.人の外観の改善を人工材料や手術ではなく,細胞を使って自然治癒に導く再生医療は過去の美容医療の概念を根本的に変革するに違いない.
本書はこの魅惑的で重要な「再生医療と美容」という分野で先駆的な役割を果たしてきた15名の研究者・臨床医の英知と結集のたまものである.読者はかれらの示した深い知識と信頼性の高いデータから臨床応用の可能な新しい医療技術の出現を目の当たりにするだろう.われわれはついに再生医療の実用化に成功したのである.
最後に,多忙のなか,本書の執筆をお引き受けいただいた執筆者諸氏に心より感謝申し上げたい.また南山堂高見沢恵女史には格別の敬意とお礼をいわねばならない.同女史の情熱なしに本書が世に出ることはなかったであろう.

2007年3月  名古屋大学大学院医学系研究科 東京大学医科学研究所 教授  上田 実


目次

総論
I.再生医療の成り立ちと実用化にむけた課題
 1.再生医学の成り立ち
 2.再生研究の現状
 3.実用化の課題
 4.再生医療ビジネスの成功条件は
 5.まとめ

II.美容医療の現況
 1.美容医療の特徴―他の医療との相違―
 2.美容医療の現況
 3.患者ニーズの現状と変遷
 4.美容医療の課題
 5.美容医療の展望
 6.おわりに

III.細胞移植による美容医療を行うにあたって
 1.細胞移植とは何か
 2.新たな治療法開発の流れ
 3.基礎研究から前臨床試験まで
 4.細胞治療の臨床研究
 5.細胞治療の実用化
 6.細胞治療の今後の可能性
 7.まとめ

各論
I.線維芽細胞を用いたしわ治療
 1.基礎データ
 2.治療法
 3.治療の結果
 4.まとめ

II.培養表皮移植による白斑治療
 1.尋常性白斑とは
 2.尋常性白斑の分類
 3.尋常性白斑の治療
 4.その他の色素異常症への培養表皮移植の応用

III.脂肪由来幹細胞を用いた軟部組織増大術
 1.吸引脂肪と切除脂肪の比較
 2.脂肪吸引吸引物から得られる脂肪由来細胞分画
 3.脂肪組織由来細胞の組織増大術への応用
 4.CALの臨床応用にむけて
 5.おわりに

IV.毛髪再生
 1.組織再生医療の対象としての毛髪と男性型脱毛症
 2.毛包の発生と毛周期
 3.毛髪組織再生の実験的アプローチ
 4.細胞移植による組織再生技術
 5.その他の課題

V.骨髄由来細胞を用いた創傷治癒促進
 1.骨髄細胞を用いた末梢血管再生
 2.骨髄細胞とコラーゲンマトリックスの併用による創傷治癒促進
 3.おわりに

VI.生体分解性ポリマーを用いた眼窩底骨折治療
 1.眼窩底骨折における骨再建法の現状
 2.眼窩底骨折の再生医療
 3.まとめ

VII.歯槽骨再生
 1.低侵襲手術としての再生医療
 2.歯槽骨再生医療の三要素
 3.歯槽骨再生医療の臨床応用
 4.おわりに

VIII.歯間乳頭再生
 1.審美性を損なう歯肉退縮
 2.歯間乳頭の再生
 3.再生医療を用いた歯間乳頭再生術
 4.おわりに

IX.補綴治療における審美性
 1.歯と周囲組織の関係
 2.歯と周囲組織の経年的変化
 3.歯の喪失と周囲組織の変化
 4.補綴治療における口腔周囲軟組織への配慮
 5.インプラントによる補綴治療
 6.上部構造体と周囲組織の関係
 7.口腔周囲軟組織の支持不足への対処
 8.上部構造体が人工歯だけで構成される場合
 9.おわりに

索 引