書籍カテゴリー:精神医学/心身医学|産婦人科学

向精神薬と妊娠・授乳
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向精神薬と妊娠・授乳

1版

  • トロント小児病院小児科臨床薬理部長/トロント大学医学部小児科教授 伊藤真也 編
  • 国立成育医療研究センター周産期・母性診療センター主任副センター長/妊娠と薬情報センターセンター長 村島温子 編
  • 順天堂大学越谷病院メンタルクリニック教授 鈴木利人 編

定価:3,780円(本体3,500円+税8%)

  • B5判 221頁
  • 2014年9月 発行
  • ISBN978-4-525-38231-5

概要

精神疾患を有する女性の妊娠・授乳に対応する!
本書は母性内科領域の基礎知識や心理的サポート,豊富な向精神薬の安全性情報,多岐にわたる症例解説を盛り込み,精神疾患を有する女性の妊娠・授乳に必要な知識や情報をまとめた.精神科領域,産婦人科領域で即戦力となる実地書である!

序文

妊娠中や授乳期の女性患者に薬物治療が必要なとき,臨床現場ではどのように対応すれば良いのだろうか.医学が著しく進歩した今でも,この問題は多くの患者やその家族,そして医療従事者を悩ませている.特に精神・神経疾患は,比較的長期間の継続的治療が必要なこともあって取り扱いが難しい.このような状況で適切な判断ができるように,さまざまな角度から向精神薬の妊娠・授乳中の安全性について,この分野で実際に臨床に携わっている専門家が丁寧に解説したものが本書である.妊娠・授乳中の薬剤安全性が難しい問題であるのは日本も外国も同じである.しかし,社会環境や文化の違いなどから,薬剤の副作用発現のリスクの捉え方には微妙な差があるようだ.これは20年以上カナダで胎児・授乳児を含めた小児への薬剤毒性の診療を続けてきた筆者の私見であるが,このことは外国で作られた治療ガイドラインを日本で使うときにある程度の修正が必要になることを示唆している.そういう意味でも,日本の現場で臨床活動にあたっている方々の執筆による本書の意義は大きい.
 第1章では基本的な知識が解説されている.添付文書についてもこの章に含めたが,臨床的にも重要な話題であり,添付文書のみに頼る臨床活動に潜む危険性がおわかりいただけるだろう.第2章では向精神薬を妊婦・授乳婦に使用する際に直面するさまざまな現実を解説していただいた.このような,一見すると医学専門知識の枠組みから外れたようなテーマは医科学の亜流とする向きもあるかもしれないが,この領域での知識とそれを応用する技術は実際の診療になくてはならないものである.第3章は薬剤の各論で,8種類のグループが詳細に述べられている.第4章は症例を基にした,これらの知識の応用編とも言うべき章で読者の理解を深めるのに重要である.この領域で正しい知識が広く伝わっていくのに本書が少しでも貢献してくれればこれほどの喜びはない.
 最後に,本書の企画・編集に多くの時間と労力を注ぎ込んでくれた南山堂の皆さまにお礼申し上げるとともに,母親そして患者としてこの問題に日々関わっている多くの女性が,さらに質の高い医療を受けられるようにという思いをここに記したい.

2014年 7月
編者を代表して 伊藤真也

目次

第1章 妊娠・授乳期に関する基礎知識の整理
1 母性内科領域の基礎知識
1)妊婦への薬物治療の考え方
2)妊娠時期と児への影響
3)妊娠可能年齢の女性への薬剤投与の実際
4)薬剤の母乳への移行性と乳児に与える影響
5)母乳育児のメリット
2 添付文書情報の捉え方
1)添付文書の記載要領
2)妊娠・授乳期に関連する添付文書情報の問題点・限界
3 妊娠・出産による精神状態への影響とトータルケア
1)妊婦・産褥婦の精神状態が胎児・乳幼児に与える影響
2)周産期の親子に対するソーシャルサポートサービス
4 周産期における飲酒・喫煙の影響
1)アルコール 
2)タバコ
3)禁煙補助薬

第2章 向精神薬投与と妊娠・出産・育児
1 妊娠と薬情報センターにおける向精神薬相談事例
1)相談者の約半分が向精神薬を使用していた
2)バルプロ酸ナトリウムについての相談
3)向精神薬を使用していた女性の飲酒・喫煙率および薬物乱用
4)授乳中の薬剤についての相談
2 挙児希望者・妊婦に対する向精神薬の適正使用—臨床における現状と課題—
1)向精神薬の使用形態の変化
2)精神疾患に罹患する女性患者の社会参加と妊娠
3)向精神薬の催奇形性や毒性に関する評価
4)周産期における向精神薬の使用
5)妊娠時の向精神薬の多剤併用と薬物調整
6)周産期に薬物治療を行わないことのリスク
7)産褥期の精神症状の調整と授乳の両立
8)適切なインフォームド・コンセントの実施と患者・家族の自己決定権
3 妊婦・授乳婦の向精神薬使用:国際比較
1)胎児薬物毒性の情報提供サービス
2)日本と諸外国の医療制度の違い
3)向精神薬の処方率
4)妊娠・授乳中の向精神薬処方
5)授乳婦と薬
4 妊婦における向精神薬の薬物動態と処方設計
1)妊婦における薬物治療の必要性
2)妊娠中の生理変化と薬物動態
3)妊娠中の薬物動態変化の臨床的な解釈
4)TDM
5 向精神薬服用による出生後の疾患と発達の予後
1)新生児薬物離脱症候群(NWS)
2)母体SSRI 服用と新生児遷延性肺高血圧症
3)母体SSRI 服用と自閉症
4)バルプロ酸ナトリウムと認知機能への影響
5)新生児出血傾向と抗てんかん薬
6 向精神薬の胎児毒性と情報提供上の留意点
1)向精神薬服用のリスクに対する女性の考え
2)治療中断のリスク
3)催奇形性の説明
4)新生児期の症状
5)神経行動先天異常

第3章 向精神薬の薬剤情報と有益性・危険性の考え方
1 SSRI・SNRI・NaSSA
1)妊婦・授乳婦への有益性
2)妊娠期
3)授乳期
2 三環系・四環系抗うつ薬
1)妊娠期
2)授乳期
3 炭酸リチウム
1)妊娠期
2)授乳期
4 抗不安薬
1)妊娠期
2)新生児不適応症候群(新生児薬物離脱症候群)
3)授乳期
5 睡眠薬
1)妊娠期
2)新生児不適応症候群(新生児薬物離脱症候群)
3)授乳期
6 定型抗精神病薬
1)定型抗精神病薬
2)抗コリン性抗パーキンソン病薬
7 非定型抗精神病薬
1)妊娠期
2)授乳期
8 抗てんかん薬
1)先天異常
2)先天異常の内容
3)多剤併用の影響
4)抗てんかん薬の使用量と先天異常発生率 
5)認知機能への影響
6)妊娠中の薬剤使用に関するまとめ 
7)抗てんかん薬と授乳

第4章 症例から学ぶ — 精神症状のコントロールと妊娠・授乳
1 うつ病
1)周産期のうつ病の特徴 
2)周産期のうつ病に対する精神薬理学的治療のアプローチ
3)専門外来におけるうつ病の具体的な症例
2 双極性障害
1)双極性障害とは
2)双極性障害における妊産婦の管理の基本原則
3)双極性障害の女性患者が妊娠を希望する場合の対応
4)症例1(妊娠を断念した事例)
5)症例2(計画妊娠・出産をした事例)
3 統合失調症
1)無治療ないし服薬中断
2)妊娠中の服薬
3)機能奇形
4)統合失調症女性患者と妊娠後期
5)新生児の体重への影響
6)周産期合併症
7)産後の再燃・再発
8)授 乳
9)症例1(計画妊娠の事例)
10)症例2(偶発妊娠の事例)
4 てんかん
1)てんかん発作の妊婦・胎児への影響
2)AED の児への影響
3)妊娠可能年齢の女性てんかん患者の治療
4)症例1(計画妊娠の事例)
5)症例2(偶発妊娠の事例)
5 不安障害(パニック障害・強迫性障害)
1)パニック障害と妊娠・出産
2)強迫性障害と妊娠・出産
3)パニック障害・強迫性障害の妊娠期・産褥期における薬物療法
4)症例1(パニック障害: 偶発妊娠の事例)
5)症例2(強迫性障害: 妊娠中の発覚事例)
6 睡眠障害(ナルコレプシー, レストレス・レッグス症候群)
1)ナルコレプシー
2)症例(計画妊娠の事例)
3)レストレス・レッグス症候群
4)症例(妊娠中の発症事例)
7 摂食障害
1)摂食障害とは
2)症例(偶発妊娠の事例)
3)摂食障害患者の妊娠・出産への対応
8 アルコール依存症と境界型パーソナリティ障害の重複障害
1)アルコール依存症とパーソナリティ障害
2)アルコール依存症の治療
3)症 例
9 薬物依存症
1)薬物依存症とは
2)薬物依存症女性患者の妊娠・出産の問題
3)周産期の薬物依存症の治療的対応
4)薬物依存症患者への基本的な対応
5)症 例
10 自閉症スペクトラム障害の夫をもつ妊婦・授乳婦のサポート
1)高機能ASD の夫をもつ女性の妊娠・出産・授乳
2)ASD と思われる女性の妊娠・出産

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