書籍カテゴリー:分子医学|精神医学/心身医学

脳神経疾患 病態の分子生物学

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The Frontiers in Medical Sciencesシリーズ
脳神経疾患 病態の分子生物学
精神疾患と神経疾患の新たな理解のために

1版

  • ジョンズホプキンス大学医学部精神医学部門,神経科学部門 助教授 澤 明 編

定価:5,832円(本体5,400円+税8%)

  • B5判 191頁
  • 2005年4月 発行
  • ISBN978-4-525-38371-8
  • ISBN4-525-38371-2

概要

これまで独立に扱われてきた精神疾患と神経疾患を分子機構を軸に,<脳神経疾患>としてとらえ,体系的かつ統一的な理解をめざす.日米の第一線研究者が各専門分野について基礎知識から最新の知見までをわかりやすく解説.新しい学問領域の胎動と本質を伝える待望の好著.

序文

21世紀に入り社会の高齢化傾向はますます強まり,老化に伴う最大の障害となる“脳”にかかわる病気は,医学的観点からも社会的観点からも,より注目を集めてきている.一方,社会の複雑化などに伴う青少年の問題行動も社会的課題となっているが,それが引き金になって“こころ”の病気とのレッテルをはられてしまうことも多い精神障害に対しても社会の関心が高まっている.はたして,“脳”と“こころ”は分離した存在であろうか.
近年の脳科学の進歩,特に分子遺伝学と分子生物学の進歩により,これら“脳”と“こころ”の病気は,多様な遺伝要因と環境因子のクロストークで起こる脳機能障害のそれぞれ異なった現れであることがしだいに明らかになってきた.これらの学問体系の基本要素である“分子”の概念を通して,“脳”と“こころ”の病気は,体系的にまた統一的に理解されうるものとして研究の対象となってきた.この胎動は21世紀に入って急速に始まり,今さらに花開かんとしている.こうした最新の動向を本書ではお伝えしたいと考えている.
本書の特徴として次の2点をあげたい.第一に,神経疾患研究と精神疾患研究を同じ軸で統合的に取上げ,“脳神経疾患”研究としての全体像が鳥瞰できるようにしたことがある.実は,医学の中で“脳”と“こころ”の分離があったためにこれまではなかなか実現していなかった側面である.第二に,こうした胎動をほんの少しずつではあるが先行して具現してきている米国にあって活動する研究者にも執筆を依頼したこともあげられる.それぞれの章を担当された研究者はそれぞれその分野の第一人者であり,その多忙な時間のなかで良質の解説をご執筆いただき,この場で厚く御礼申し上げたい.
さらに重要なことは,“脳神経疾患”研究が,“分子”のロジックですっきりした簡明な体系をもつことで,他分野からの専門家を受け入れることも容易にし,広がりある腰の強い学問として発展することである.それが結局,患者と家族,ならびに社会のために貢献できる最も近道であろう.他分野の専門家とは生物系,薬学系,工学系の基礎研究者はもちろんのこと,認知科学,心理学,社会福祉学,看護学の研究者,医療実務従事者も含んでいる.臨床の現場に立つ医師,基礎医学研究者はもちろんのこと,こうした広い層の読者にこの新しい学問の胎動と本質を伝えられるならば幸いである.
最後に,ここで述べたような本書の企画方針をご支援いただいた東京大学大学院医学系研究科神経病理学教室 井原康夫教授,東京大学大学院薬学系研究科臨床薬学教室 岩坪威教授,ならびに相互に太平洋をはさんでいるということすら忘れてしまうほどの緊密さで実務のバックアップを全面的にしてくださった南山堂編集部スタッフに心から御礼申し上げたい.

2005年1月 ジョンズホプキンス大学医学部精神医学部門,神経科学部門 澤 明


目次

第I部  総 論

脳神経疾患の全体像と分子構造  澤 明
   引き裂かれてきた"脳"と"こころ":分子遺伝学,分子生物学はその分離を越え
   られるか/脳神経疾患:中枢性神経疾患と精神疾患について/脳神経疾患に対
   する分子遺伝学,分子生物学的アプローチ:臨床体系の再構築への期待/脳神
   経疾患の予防,治療へ/おわりに

第II部  神経疾患

第1章 遺伝学が生物学にもたらしたもの ─神経疾患の解析を例に─  戸田達史
第2章  ポリグルタミン病の分子生物学  五十嵐修一 西澤正豊
第3章  パーキンソン病の生物学 ─単一遺伝子異常がもたらした発症機序─  服部信孝 柴 香保里 近岡洋子
第4章  アルツハイマー病の生物学 柳澤勝彦
第5章  非アルツハイマー型変性痴呆の生物学的視点 天野直二

第III部  精神疾患

第1章  統合失調症の遺伝学  岡崎祐士 峯田 聖 谷井久志
第2章  統合失調症の生物学 ─候補遺伝子から─  疋田貴俊 澤 明
第3章  統合失調症の神経病理  橋本隆紀 D.A.Lewis
第4章  気分障害の遺伝学  前田和久 M.G.McInnis
第5章  気分障害の生物学  加藤忠史
第6章  自閉症の遺伝学と生物学  桑原 斉 金生由紀子 加藤進昌
第7章  ストレス性障害の生物学  杉山暢宏 神庭重信

第IV部  治 療

第1章  幹細胞を用いた脳神経疾患に対する細胞療法 向山洋介
第2章  アルツハイマー病のAβワクチン療法 原 英夫 田平 武
第3章  脳神経疾患とモデル動物:遺伝子から個体レベルへ 三浦正幸