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カテゴリー: 救急医学/災害医学  |  内科学一般

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動きながら考える!内科救急診療のロジック

1版

広島大学病院 脳神経内科 松原知康 著
飯塚病院 総合診療科 吉野俊平 著

定価

3,850(本体 3,500円 +税10%)


  • B5判  225頁
  • 2016年3月 発行
  • ISBN 978-4-525-41081-0

このロジックがあれば,救急診療は怖くない!

内科救急診療を難しいと感じさせる一因である,複雑に絡み合った病態を分解し,わかりやすく診療を行うためのシステマティックなアプローチ(ロジック)を紹介した意欲作.
リアルな症例を読み進めるうちにロジックを習得できる構成となっている.
救急外来や内科救急診療を頑張りたい研修医・若手医師に最適の書籍.

  • 目次
  • 序文
  • 書評 1
  • 書評 2
目次
Ⅰ.総 論

1.内科救急診療のロジック
<行動編>
0 Preparation
1 Pre-Primary survey
2 Primary survey
3 初期検査提出
4 Secondary survey
5 追加検査提出,治療介入
<思考編>
1 プロブレムを列挙する(List up)
2 プロブレムの優先順位づけをする(Prioritization)
3 鑑別診断を考え,プロブレムを統合する(Grouping)
4 各グループに対して必要な治療を開始し,入院の必要性の判断を行う(Disposition)
* Advanced:Grouping後のプロブレムについて見解を述べる


2.ERで必要なスキル
<血液ガスの解釈>
1 覚えなければならない“4つの基準値”と“3つの公式”
2 anion gap(AG)を用いた血液ガス解釈法
<エコー検査>
1 RUSH examのエッセンス
2 本書におけるエコー検査の活用法



Ⅱ.各 論

イントロダクション

●シナリオ1「きつくて動けない」
水源地を探せ!─病態の上流までさかのぼる
(搬送依頼)59歳,女性.4日前より食欲低下し,動けない.
▶Minimal review ①糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)/高浸透圧高血糖症候群(HHS)

●シナリオ2「心窩部痛・ふらつき」
何に着目すべきか?─high yield symptomを見つけ鑑別を絞り込む
(搬送依頼)70歳,男性.本日より心窩部痛,嘔吐.起立時のふらつき.
▶Minimal review ②急性副腎不全(副腎クリーゼ)

●シナリオ3「呼吸困難」Part 1
急がば回れ!─システマティックなアプローチで致死的疾患を拾いあげろ!
(搬送依頼)70歳,女性.呼吸困難.救急隊が自宅へ到着時は,SpO2:88%と低下.
▶Minimal review ③急性肺血栓塞栓症

●シナリオ4「側腹部痛」
検査結果に翻弄されるな!─手持ちの武器の特徴を知る
(搬送依頼)61歳,女性.3日前からの左側腹部痛.バイタルサインは安定.
▶Minimal review ④急性膵炎

●シナリオ5「つじつまが合わない」
ERですべきことは何か?─診断の確定に固執しない
(搬送依頼)80歳,男性.本日起床時より発言のつじつまが合わない.

●シナリオ6「屋内で低体温」
思考の早期閉鎖に陥るな!─診断に違和感がないか常に検討せよ
(搬送依頼)82歳,女性.自宅内で倒れて動けなくなっているのを家族が発見し,救急車を要請.呼びかけで開眼するが,すぐに傾眠となる.血圧は110/45mmHg,脈拍は30〜40回/分.体温は腋窩で測定不能(体は非常に冷たい).

●シナリオ7「呼吸困難」Part 2
いつでも“動きながら考える”─超重症例でも行動と思考を使い分け,局面を冷静に俯瞰する
(搬送依頼)55歳,男性.近隣の精神科病院から救急転院搬送依頼.本日夕方より呼吸状態悪化.SpO2:88%(室内気),酸素5L/分の投与でSpO2:92%.


チェックリスト

おわりに

Index


■Mini Lecture
・プローブの種類
・壊死性筋膜炎の症状
・high yieldとlow yield
・急性副腎不全(副腎クリーゼ)の症状・所見
・「AG上昇性代謝性アシドーシス」の原因が乳酸アシドーシスだけなのか確認する方法
・rewarming shock
・オッカムのカミソリ(Occam's razor)とヒッカムの格言(Hickham's dictum)
・心原性肺水腫と非心原性肺水腫

■Column
・ERでの抗菌薬
・ERでの輸液
・ERからのコンサルト
・検査の価値を感度・特異度だけで割り切らない
・付き添いの人・家族への配慮
・救急隊への配慮
・ERにおける病歴の落とし穴
・既往歴は誰に聞く?
・気管挿管の適応と人工呼吸の適応
・ERでの造影CT
序文
 この本は,内科救急診療(特に救急車で運ばれてくるような重症例)が漠然と苦手であると感じている人や,いろいろ勉強して知識は増えた気がするのに内科救急診療が上手くできないと感じている人のために書きました.

 ER*での救急車診療は,日中の一般内科外来診療や,歩いて来院される方の救急外来診療(“walk in”の救急外来診療)と比べて重症例であることが多いです.
 そのため,以下のような特徴に留意しなければなりません.
●複数の疾患・病態を合併している可能性が高い
●多彩な検査や処置をする必要がある可能性が高い
にもかかわらず,
●意識障害などによって問診で十分な病歴を得られないことがある(さらには家族が来院しておらず,情報が乏しいまま診療にあたる場合さえある)
●診療に割くことができる時間が限定されている.一方で,必要な処置が遅れると状態が悪化する可能性が高い
●複数人で同時に診療にあたることが多く,指示を出したり,状況・情報を共有したりしながら,診療を進めなければならない
 これらが内科救急診療を難しいと感じさせる要因だと思います.

 本書では,このような状況であっても上手く診療を進めていく方法を提案します.その診療法の作成にあたっては,内科救急診療が苦手であると感じている人が,経験値の影響を受けずに,どのような症例にでも対応できるような方法を目指しました.
 そこで,この本を読み終えたあと,以下の内容ができるようになることを目標としました.
●内科救急診療(特に救急車での搬送例)において,上手く情報を集める技術(=「体の動かし方」)を身につけることができる
●情報を上手く整理して使う技術(=「頭の動かし方」)を身につけることができる
●これらの技術を本書内の症例を通じて理解し,内科救急診療に対する苦手意識を払拭できる

 この本が,手にとっていただいた方々の診療の一助になればと願っています.
 最後に,この本を世に出すことを応援してくださった井村 洋 先生(飯塚病院副院長・総合診療科 部長)に,心より感謝申し上げます.

2016年1月
筆者を代表して 松原知康


*ER 本来は診療スペースである救急救命室のことを意味するが,北米型の救急診療システム(24時間・365日,すべての救急患者の受け入れ,ER専門医の存在)を指すこともある.本書では広く救急車搬送の患者を受け入れる「救急外来」,「救命救急センター」を含めるものとする.
書評 1
山中克郎 先生(諏訪中央病院総合内科)

 なんて素敵な表紙なのだろう.若い男性医師が病院の廊下を疾走している.救急患者のもとに駆けつけようとしているのだろう.本のタイトルに「動きながら考える」とある.まさに救急診療はそうだ.病棟診療とは異なり,とにかく時間がない.緊急性の高い疾患かどうか即断しなければならない.こんな時は型を決め,必要なことをルーチンで行うという診療スタイルが効果的である.

 救急車から初療室のベッドに患者を移動するまでの1分間で気道,呼吸,循環,意識レベルを簡単に評価する.次にPrimary surveyでは,「A」シーソー呼吸・陥没呼吸・stridorの有無,「B」呼吸音の左右差・呼吸複雑音の有無,「C」バイタルサイン・エコー(下大静脈径の呼吸性変動,左心室の壁運動,心嚢水・胸水・腹水の有無),「D」JCS・GCSの再評価,共同偏視,瞳孔左右差,麻痺の有無をチェックするという.重要ポイントが大変わかりやすい.

 丁寧にくまなく問診・診察することが必要なSecondary surveyでは,見逃しやすい所見について言及されている.背部の皮疹や靴下を脱がしての足壊疽の確認は,急いでいるときは観察がなおざりになりがちだ.

 (1)緊急性があり,(2)新たに発症したもの,(3)治療可能なものに基づいて,優先順位の高いプロブレムを選ぶ.同じ鑑別診断で病態が説明できるプロブレムを1つのグループとしてまとめ,説明できないプロブレムに対し新たに鑑別診断を展開していく.必要な治療を行い,入院するか帰宅するかの判断を下す.これらが「内科救急診療のロジック」であるという.なるほど…….

 鑑別診断の絞り込みに大切な,血液ガスの解釈とエコー検査についても詳細な解説がある.後半は7つのシナリオを用いて,救急室での診断と治療が臨場感を持って展開される.このように系統的に考えるクセをつけておけば,救急診療に慣れない医師でも標準化された診療が可能である.救急室で質の高い教育を行いたいと願う指導医にとっても大切な武器となる.救急診療に携わる全ての医師に強く推薦したい良書である.
書評 2
林 寛之 先生(福井大学医学部附属病院 総合診療部 教授)

 パラパラめくればこの本の良さはすぐにわかる.科学的根拠を示す論文がてんこ盛りだ.本書は内科救急のアプローチをうまく系統立てて説明しており,特に考え方,初動の仕方に絞って解説している.

 Snap diagnosisのように一発診断ができると確かに格好いいのだが,実臨床は曖昧模糊としており,そう簡単に片付けられるものではない.ベテラン医師はsnap diagnosisのみならず系統立てたアプローチを同時進行でうまく使いこなして診断している.系統的なアプローチが出来ないと,的外れな事前確率の低い検査を片っ端からオーダーして,偽陽性の検査結果に振り回されて玉砕するトホホな医者になってしまう.腹痛ならすぐに腹部CTなんて,考えていない証拠だよねぇ.王道の診断学を学ぶにはとっかかりのいい本だ.

 カンファレンスでは病歴→身体所見→網羅的検査結果→鑑別診断という形式をとることが多い
が,そんなものは絵に描いた餅である.実際は本書のように初動から鑑別診断をあげ,病歴の後に鑑別診断をあげ,それを確認するために身体所見や検査オーダーを行うという流れだ.本書が実臨床で役に立つひとつの理由として,見逃してはならない疾患をまず念頭に置くことを推奨し,ENTer(emergency,new-onset,treatable)という語呂合わせでうまく解説している.鑑別診断を絞り,プロブレムを統合していく作業を本書ではGroupingという表現を使ってうまく説明している.

 検査は,非常によく使う血液ガスとエコー検査の2つの手技に絞っており,実に潔くていい.最新のエコーの使い方は是非覚えてもらいたい.

 シナリオは本書の考え方を追体験してもらう形式になっており,スラスラ読みやすい.途中で出てくるMinimal reviewが秀逸だ.コラムも救急現場で実体験から苦労して得た話ばかりなので,机上の空論ではなく,きっと臨床家の心を打つことだろう.救急研修を控えた学生,研修医,救急がちょっと苦手な後期研修医,初期研修医に内科救急を教えないといけない立場の指導医の先生方に,是非一読することをお勧めする.
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