書籍カテゴリー:救急医学/災害医学|外科学一般

災害医学
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災害医学

第2版

  • 東京臨海病院病院長 山本保博 監修
  • NPO「HuMA」理事長 鵜飼 卓 監修
  • 国士舘大学教授 杉本勝彦 監修
  • NPO災害人道医療支援会 編集

定価:7,344円(本体6,800円+税8%)

  • B5判 484頁
  • 2009年2月 発行
  • ISBN978-4-525-41172-5

概要

国内外を問わず津波,地震,列車事故,戦争等,大きな災害を経験し,災害に対する危機管理が行政,医療現場,関係職種の人々に浸透してきている.本書は前版の啓蒙的なニュアンスから脱却し,更に1歩前進させた内容となっている.災害現場の特殊性,教育,病院における備え,対処法などはもちろん,心得ておかなければならない知識やテクニックが具体的に網羅されている.

序文

1995年のはじめに引き続いて起きた阪神・淡路大震災(1995年1月),東京地下鉄サリン事件(1995年3月)によって,自然災害と人為災害という発災の原因に違いはあったが,本格的に甚大な被害をもたらす災害が,わが国でも起こることを私たちは身をもって経験した.その為か,これらの経験を契機に災害救援や災害医療あるいは災害看護の分野にさまざまな興味と関心が寄せられ,また多くの人々が災害対応を真面目に検討することとなった.その証として,実際には各地に災害拠点病院の整備が行われ,各大学医学部では災害を臨床と研究の対象にすべく災害医学教室が設置されてきている.また日本版DMATの創設や医療者を対象とした災害研修コースが開催され,災害対応の実際的な準備が徐々に整いはじめてきた.そのような時世を背景に,『災害医学』の初版は,災害医療についてこれから学ぼうとする人々のテキスト的な役割を果たせたらとの目的で刊行された.
一方,最近の世界での災害の動向はどうであろうか? 9.11アメリカ同時多発テロ事件(2001年)の世界貿易センタービルへのテロ攻撃では,現実ではありえないような手段でテロリズムによる災害が実際に起こっている.また中国四川省を中心とした大地震による大量の被災者や傷病者の発生,あるいはミャンマーでのサイクロン・ナルギスによる甚大な被害は,災害対応の困難さを改めて教示するものではなかっただろうか.2005年のハリケーン・カトリーナによる被害は,災害対応の組織づくりが極めて整っていると考えられたアメリカでの惨事であった.災害による影響は,われわれの組織づくりや対応策を見越しているかのように変化し成長していくものであることを,これらの災害事案から学ぶ必要がある.
今回の改訂に当たっては,初版では解説できなかった災害対応の組織づくり,あるいは研修などについても項目を設け,理解を深めていただけるように編集した.この改訂版が,災害医学の今後の発展に少しでも寄与し,災害対応の最前線で働かれる人々や災害医学をこれから学んだり,あるいは研究される皆様のお役にたてば幸甚である.


2009年1月
杉本 勝彦



目次

第1章 災害医学と災害医療
 a) 災害医学の理念と教育
 b) 災害医療のあり方

第2章 災害医学と関連領域
 a) 災害医学の学問的位置
 b) 災害の人的被害に対する多方面からのアプローチ
 c) 防災の科学的根拠
 d) 人的被害予測
 e) 防災システム評価に関する研究

第3章 災害医療へのアプローチ
 1.災害の疫学
  a) 災害疫学とは
  b) 災害疫学研究の基本的手法
  c) 災害サイクルに応じた災害疫学の応用例
  d) 実地疫学の基本的ステップ
 2.災害医療における評価
  a) 災害医療と評価
  b) 災害医療のなかでの評価
  c) 災害医療の評価
 3.災害医学と情報
  a) 情報とは
  b) 災害情報の歴史―大事故は夜明け前に起きる
  c) 災害医療情報と行動心理
  d) 医療行為に必要な災害情報の種類と価値
  e) 災害情報ツール
  f) 他機関との情報伝達連携
  g) 災害医療での情報伝達
  h) 過去の災害事例における情報伝達
  i) 国際災害医療での情報
  j) 災害情報の法的な取り扱い
  k) 災害情報の問題点
  l) 災害医療情報の教育

第4章 自然災害
 1.地震災害
  a) 地震災害とは
  b) 地震災害にともなう死因と負傷病態
  c) 地震災害の医療対応
  d) 病院の地震災害対策
  e) 災害訓練
  f) 地震災害への事前の備え,被害軽減策および対応
 2.火山噴火災害
  a) 火山活動と火山噴火災害
  b) 火山噴火災害の特徴
  c) 火山噴火災害の疫学
  d) 火山噴火災害にともなう傷病の特徴
  e) 医療対策
 3.気象災害(風水害)
  a) 異常気象と気象災害
  b) 台風(ハリケーン,サイクロン)
  c) 竜巻
  d) 集中豪雨などによる河川の氾濫,洪水
  e) 土砂災害
  f) 雪害
  g) 異常高温
 4.災害と感染症
  a) 災害と感染症の特殊性
  b) 被災地の保健衛生
  c) 災害時に多い感染症とその対策
  d) 公平さと参加をめざして

第5章 人為災害
 1.火災
  a) 大規模火災とは
  b) 火災の分類
  c) わが国の火災の現状
  d) 日本における大火の歴史
  e) 建物火災
  f) 火災傷病者に対する医療
 2.交通災害
  A 列車事故(鉄道運転事故)
   a) わが国の列車事故の現状
   b) 列車事故の事例
  B 航空機事故
   a) 航空機の誕生と事故防止
   b) 航空機事故の動向
   c) 航空交通安全対策
   d) 救護活動と体制について
  C 高速道路事故
   a) 高速道路事故の特徴と対策
   b) 特殊車輌による事故(爆発・火災,化学災害など)
   c) 千歳高速道路玉突き・多重衝突事故
   d) 高速道路事故とドクターヘリ
   e) 高速道路におけるヘリコプターの活用―現状と今後の展望
  D 海難事故
   a) 海上災害の分類
   b) 海難の状況
   c) 危険物などの大量流出事故の状況
   d) 海上災害発生時の指揮命令系統
   e) 災害医療からみた海難事故
   f) 洋上での急患搬送
   g) わが国における最近の主な海難事故
 3.産業事故
  a) 1,000人以上の死傷者が発生した事例と産業事故
  b) 産業事故の背景

第6章 災害対策
 1.Preparedness and Planning
  a) preparednessとplanning
  b) disaster preparednessの運用サイクル
  c) 災害医療におけるpreparedness
  d) わが国の災害対策
 2.災害におけるLogistics(ロジスティクス)
  a) ロジスティクスの概念と定義の検討
  b) 活動に必要な情報収集と評価,および関係機関との連携
  c) 災害救援派遣における具体的ロジスティクス業務
  d) 現地本部・派遣元組織運営などの後方支援体制
 3.災害時の医療の原則
  A 災害現場での医療
   a) 災害発生後の時期と救援医療活動
   b) 災害の種類による現場での対応
   c) 現場救護所における治療の目的と原則
   d) 災害時出動のための準備
   e) 医療活動の場所
   f) 治療の実際
  B 搬送間の医療
   a) 搬送間の医療の目的
   b) 搬送の分類
   c) 主な搬送手段と搬送間の医療における留意事項
   d) 災害時広域搬送と優先順位
   e) 搬送間の医療の現実と今後
  C 病院での医療
   a) command and control(C:指揮と統制)
   b) safety(S:安全)
   c) communication(C:情報伝達)
   d) assessment(A:評価)
   e) triage(T:トリアージ)
   f) treatment(T:治療)
   g) transportation(T:搬送)
 4.Confined Space Medicine(瓦礫の下の医療)
  a) CSMと「瓦礫の下の医療」;和訳の経緯
  b) 瓦礫災害とUSAR
  c) USARと医療
  d) アメリカUSAR医療システム
  e) 「瓦礫の下」の医療環境
  f) CSM活動のポイント
  g) CSMのチーム医療活動
  h) 「瓦礫の下の医療」と社会
  i) アメリカのCSM教育訓練プログラム
  j) わが国の展望
 5.トリアージ(Triage)と3T's
  a) 多数傷病者が医療体制を凌駕した時
  b) 発災直後の現地指揮体制
  c) トリアージの定義と適応
  d) トリアージ部門の配置
  e) トリアージチームと責任者
  f) 優先順位の識別区分
  g) 黒色判定への課題
  h) 識別票(トリアージタグ)
  i) 緊急度判定の理論
  j) 一次トリアージのツール
  k) 二次トリアージの基準例
  l) トリアージの限界と課題
 6.災害看護
  a) 看護とは
  b) 災害看護の定義
  c) 災害急性期看護概論
  d) 災害急性期看護各論
 7.わが国の災害医療体制
  a) 阪神・淡路大震災の教訓
  b) 災害拠点病院
  c) 広域災害・救急医療情報システム(EMIS)
  d) DMAT
  e) 広域医療搬送
  f) 政府の大震災対策
  g) 「東海地震応急対策活動要領」に基づく具体的な活動内容に関わる計画
  h) 東南海・南海地震,首都直下地震に関する検討
 8.大規模災害における広域患者搬送
  a) 大規模災害に対する医療救護体制のポイント
  b) ヘリコプター搬送を駆使した広域搬送体制の確立
 9.DMAT
  a) DMAT(Disaster Medical Assistance Team:災害派遣医療チーム)とは
  b) 災害時広域医療搬送
 10.MIMMS
  a) MIMMSの概要
  b) MIMMSコースの歴史と運営
  c) MIMMSの基本理念
  d) コース・プログラムの概略
 11.ICS(災害時コマンドシステム)
  a) ICS(Incident Command System)とは
  b) なぜICSが必要か
  c) ICSのはじまり
  d) ICSが対応する災害の種類
  e) 用語の標準化
  f) ICSの解説
  g) ICSにおける5つの部門と一般的スタッフ
  h) ICSにおける3つのコマンドスタッフ部門
  i) 災害のニーズに合ったICSの「スケール」
  j) 病院における災害時コマンドシステム(Hospital Incident Command System:HICS)

第7章 国際社会と災害
 1.国際社会における災害支援
  a) 世界の災害事情
  b) 被害拡大の要因
  c) 国際的人道医療支援
 2.災害支援(援助)に携わる国際機関
  a) 国際支援の必要性
  b) 災害対策にかかわる主要な国連機関および国際機関
 3.国(政府)の人道支援組織
 4.非政府組織―国際NGO
 5.援助協力・協調
  a) 必要性と動向
  b) クラスター・アプローチ(cluster approach)

第8章 災害と精神医学
 a) 災害がもたらす精神的影響
 b) 災害時の心理的反応段階
 c) 災害という「トラウマ体験」
 d) トラウマ反応
 e) ASD,PTSD
 f) 心理学的介入のポイント
 g) 被災住民に対する精神保健対策
 h) 精神科治療の流れ

第9章 Crisis Management inDisasters
 a) 危機管理者の立場からみた災害の定義
 b) 救急医療施設に関係する大規模災害の性質
 c) 災害時の危機管理
 d) 災害対策における病院と地域の協力
 e) 病院の災害対策
 f) 大規模災害の被災者管理・災害対策
 g) 災害時における治療
 h) 災害の余波

第10章 災害と法
 a) 災害と関連法規
 b) 災害医療対応体制に関わる法令
 c) 武力攻撃事態等への対応体制に関する法令
 d) 国際緊急援助に関わる法令

第11章 特殊災害
 1.Complex Humanitarian Emergencies(CHEs)
  a) CHEsへの介入
  b) 評価・データ回収・分析
  c) 直接死・間接死
  d) 疫学モデル
  e) カントリーモデル:健康状態の特性
  f) CHEsの将来
 2.マスギャザリング医学
  a) マスギャザリング
  b) マスギャザリング医学
 3.難民保健から避難民援助へ
  a) 避難民問題の変遷
  b) 避難民をめぐる新しい問題
  c) 現在の避難民
  d) Complex Humanitarian Emergencies(CHEs)と多様な避難民
  e) 避難民援助
 4.テロリズム
  a) テロリズムの概念
  b) テロリズムの定義
  c) テロリズムの種類
  d) テロリズムの最近の動向
  e) 最近のテロリズム
  f) テロリズムへの対応
 5.Biological Disasters(生物兵器・テロへの対応)
  a) 生物テロの特徴
  b) 生物テロに使われる恐れのある病原体
  c) 生物テロと曝露経路
  d) 生物テロと感染管理
  e) 生物テロ関連疾患
 6.Chemical Disasters(化学兵器・テロへの対応)
  a) NBCハザードにおけるchemical disastersの位置づけ
  b) 個人防護
  c) 検知,鑑別診断
  d) ゾーンニング
  e) 除染
  f) chemical disastersに対する院内の体制
  g) 解毒薬の確保
  h) 情報管理
  i) 医療機関での一次救命処置,除染の流れ
  j) 二次トリアージと二次救命処置
  k) その他の留意点
  l) 具体的にそれぞれの医療機関はいかなる準備を行うべきか
 7.核災害
  a) 核災害とは
  b) 核/放射線災害のシナリオ
  c) 核/放射線災害であることの判断
  d) 核/放射線災害現場での医療対応
  e) 医療機関における医療対応
  f) 核災害時のメンタルヘルス対策
 8.International Repatriation(国際帰国搬送)
  a) 海外旅行者の現状
  b) 高齢化と海外旅行
  c) 緊急搬送(evacuation)と帰国搬送(repatriation)
  d) 海外での事故・傷病に対する対応―国際搬送

第12章 災害医学用語
 1.機関名
 2.その他の略語

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