書籍カテゴリー:総合診療医学/プライマリ・ケア医学|精神医学/心身医学

日常診療に心身医療を取り入れてみよう

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日常診療に心身医療を取り入れてみよう

1版

  • 芝山内科院長 芝山 幸久 編

定価:3,456円(本体3,200円+税8%)

  • B5判 195頁
  • 2004年2月 発行
  • ISBN978-4-525-41531-0
  • ISBN4-525-41531-2

概要

クリニックなどの日常診療では患者の訴えに心因が疑われる例は多い.更に,現代は全ての患者に,何らかの精神的対応が求められている時代とも言えよう.大学の心身医療専門外来の経験をもつ編者が,すべての開業医に心身医学的アプローチを習得してもらいたいとの思いをこめて内容を厳選した.明日からの診療に即役立つ実用書である.

序文

ある学会のランチョンセミナーの依頼を受けて,講演の仕事を頂きました.講演の趣旨はプライマリ・ケアの視点から見た不安とうつに関するもので,主に開業医を対象にしたものでした.かなり広い会場でしたが,立ち見が出るほどの盛況でした.私のような心療内科医の端くれの講演など聞いてくれる人はほとんどいないと思っていましたので,大変驚きました.うれしい気持ちと同時に,医療の現場では心のケアに対する関心がとても高いことを実感しました.本書はこの講演が一つのきっかけで企画が立ち上がりました.開業医はいろいろな患者さんと遭遇しますが,特に心身症的な患者さんはどの診療科でも診る機会が多いと思います.日常診療に役立つような心身医療のコツあるいはヒントを提供するのが本書の最も大きな目的です.
私は最近,趣味で陶芸を始めました.そこの陶芸の先生はうるさいことは何一つ言いません.いきなり,電動ろくろを使ってもOKなのです.やりたいことから始めればいい,その方が早く上達するという考え方です.ところが一度だけ,先生から「もっと,土と会話してください.土の感触を味わうのです.」と注意を受けたことがありました.初心者の私は,早く作品を作ろうとして,粘土をこねる回数が少なかったのです.結果だけを早く求めようとして,肝心の土に対する愛情が少なかったことが,先生に見破られてしまいました.実際,土を練ったり,たたく回数が少ないと空気が十分に抜けずに焼くと壊れてしまうことが多いのです.陶芸は作る過程をじっくりと楽しめれば,良い作品が出来上がるのです.心身医療も同じだと思うのです.例えば,過敏性腸症候群の患者さんを治療する場合,消化器症状を早く消失させようと治療介入しても,なかなかうまくいきません.患者さんとじっくりコミュニケーションをとり,患者さんに共感的理解を示し,治療関係をコツコツ築き上げることで徐々に治療が展開することがあるのです.
本書は心身医療を実践されている臨床医の先生方に分担執筆していただきました.忙しい診療の合間に執筆していただいた先生がほとんどです(産休の直前まで執筆していただいた先生もいらっしゃいました).心身医療の経験を生かし,教科書的な記述は最小限にとどめて,なるべく実践的な内容になるようにお願いしましたので,日常診療のヒントになる箇所が必ず見つかると思います.第1章では,心身医療に関するよくあるご質問をQ&Aでまとめました.第2章から第4章は心身医療を日常診療に取り入れていくための臨床知識が,具体的に書かれています.第5章は心身医療のケーススタディですが,各先生の診療スタイルの特徴が読みとれると思います.また,執筆していただいた先生全員に,診療のコツや工夫をコラムに書いていただきました.日常診療のヒントが見つかれば幸いです.なお,文体を統一するために患者さんの呼び方を「患者」と統一させていただきましたので,ご了承ください.

目次

〔1〕環境を整える Q and A
1.診療時間
・診療時間を取る工夫
・診察時間と満足度
2.診察室・待合室の工夫
・診察室の工夫
・待合室の工夫
3.標榜
4.問診票
5.心身医療の保険診療
6.精神科との連携
7.心身医学の研修システム
8.認定医

〔2〕臨床知識を得る
1.心身医療のコミュニケーション技法
1.安心して話しやすい態度,身だしなみ
2.患者と会話を交わすときの位置
3.プライバシーの配慮
4.非言語的メッセージを読み取る
5.診察室を出るときの会話が大切
6.開かれた質問(open-ended question)
7.共感(相手の身になって言葉をかける)
8.雑談を取り入れる
9. 患者のいった言葉を繰り返す

2.心身医学の基礎知識と心身医療の進め方
1.心身医学の基礎知識
1.心身医学とは何か
2.心身医療とは何か
3.心身医療の一般性・専門性
4.医学的モデルと成長モデル
5.アレキシサイミア
6.治療的自我
2.プライマリ・ケアの外来にて

3.心身医療に役立つ質問表 PHQ
1.PHQとは?
2.臨床現場のPHQの使用実例
3. PHQの有効性と今後の展開

4.高齢者医療における心身医学
1.身体症状を訴える精神疾患(うつ病,心気症)
1.うつ病
2.心気症
2.高齢者の心理社会的要因(Bio-Psycho-Social Modelの応用)
3.臨床倫理学の応用(単なる延命でなくQOLを重視した医療)
1.高齢者のQOL
2.DNQの確認を含む倫理的観点

5.不安障害
1.パニック障害
1.パニック発作
2.パニック障害
3.パニック障害と広場恐怖
4.パニック障害の発生メカニズム
5.パニック障害の疫学
6.パニック障害の鑑別診断
7.パニック障害の初期対応
8.パニック障害の薬物療法
9.パニック障害のその他の治療
 10.パニック障害の転帰
2.社会不安障害(社会恐怖)Social Anxiety Disorder
1.社会不安症とは
2.社会不安障害の症状
 3.社会不安障害の疫学
4.社会不安障害の鑑別
 5.社会不安障害の治療

6.うつ状態患者の対応
1.うつ病になりやす性格
2.うつ病になる誘因
3.うつ病の症状
1.精神症状
2.身体症状
4.問診チェックリスト
5.うつ病患者の注意点

7.不定愁訴患者の対応
1.不定愁訴とは
2.どのような場合に医療的介入が必要か
3.心気的傾向の患者のコミュニケーション

8.摂食障害患者の対応
1.摂食障害とは
1.拒食症のなりたち
2.過食症への転機
2.神経性食欲不振症の早期発見
1.早期診断の意義
2.神経性食欲不振症の診断基準
3.行動特性,心理特性
4.身体的特徴
5.問診のコツ
6.拒食症の検査所見
7.鑑別診断
3.過食症とうつ病
1.過食症の診断
2.過食症の精神状態
4.過食症に対するSSRIの効果
1.SSRIの特徴
2.投与方法
3.投与例
4.専門医への紹介のタイミング

9.内科と心身医療
1.気管支喘息
2.白衣高血圧
3.過敏性腸症候群
4.糖尿病

〔3〕 必要な薬を使いこなす
1.抗不安薬の使い方
1.抗不安薬の作用
2.各種抗不安薬の特色
3.抗不安薬を使用する目的
4.抗不安薬が有効な病態
5.抗不安薬の副作用
6.抗不安薬の実際の使い方

2.抗うつ薬の使い方
1.三環系・四環系抗うつ薬
1.トラゾドン(レスリン,デジレル)
2.スルピリド(ドグマチール,アビリットなど)
2.SSRI(Selective Serotonin Reuptake Inhibitor)
1.フルボキサミン(ルボックス,デプロメール)
2.パロキセチン(パキシル)
3.SNRI(Serotonin Noradrenalin Reuptake Inhibitor)
1.ミルナシプラン(トレドミン)
4.抗うつ薬を使用するタイミング

3.睡眠薬の使い方
1.睡眠薬の特徴
2.睡眠薬使用上の注意点
1.薬物療法を開始する前に
2.薬物療法における注意点
3.常備すべき睡眠薬の種類と特徴
4.睡眠薬使用のフローチャート
5.睡眠薬の副作用と患者さんへの説明

〔4〕生活指導その他  開業医だからこそできること
1.生活習慣とストレス
1.睡眠覚醒のリズムとストレス
2.食習慣とストレス
3.アルコールとストレス

2.ストレス解消法の指導
1.ストレス解消法の基本
1.実践することが大切
2.いろいろと試してみる
3.自分に少しわがままで

3.休養の取り方
1.休養の分類

4.自律訓練法
1.自律訓練法の適応
2.いつ,どこで練習するか
3.訓練姿勢
4.練習回数と時間
5.標準練習の実際

〔5〕プライマリ・ケアで遭遇しやすいケーススタディ
 ケース1 頭痛と不眠を主訴に来院したうつ病
 ケース2 身体的愁訴を伴う不安障害
 ケース3 この子に元気のでる薬をください
 ケース4 いわゆる心臓神経症
 ケース5 気分不安定を主訴に来院したバセドウ病
 ケース6 任地へ赴任後に乾性咳嗽が続いた患者
ケース7 過労を契機に過換気発作を繰り返した患者
 ケース8 パニック発作を繰り返し電車恐怖から出社困難になった患者
 ケース9 過換気発作を繰り返す患者
 ケース10 心配性患者の治療導入
 ケース11 軽度の過食症のコントロール
 ケース12 昇進を契機に過敏性腸症候群が増悪した患者
 ケース13 罪責的な妄想をともなううつ病とパニック障害の合併した患者
 ケース14 進路に悩むことを契機に摂食障害となった患者
 ケース15 入院を拒否する摂食障害の患者
 ケース16 母親に無理やり連れてこられた神経性食欲不振症