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カテゴリー: 癌・腫瘍学

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外来化学療法室 がん薬物療法カンファレンス

1版

名古屋大学医学部附属病院化学療法部 教授 安藤雄一 編集

定価

3,850(本体 3,500円 +税10%)


  • B5判  215頁
  • 2015年8月 発行
  • ISBN 978-4-525-42131-1

外来がん薬物療法では,医療者の高い専門性とともに,多職種連携による治療の質と安全性の向上が求められる.本書は,抗がん薬の適正使用,特別な臨床背景,副作用のマネジメントなど,外来化学療法で遭遇する問題を取り上げ,多職種の視点をカンファレンス事例で示した,これまでにない外来化学療法のサポートBOOKである!

  • 目次
  • 序文
  • 書評 1
  • 書評 2
目次
第1章 外来化学療法の実践
1 外来化学療法とチーム医療の実践
2 がん薬物療法を専門とする医師の専門性
3 外来化学療法の実施に影響する精神症状

第2章 多職種カンファレンスの実際
■抗がん薬の適正使用
1 カルボプラチン+パクリタキセル①
   カルバート式で用いる腎機能を正確に評価する
2 カルボプラチン+パクリタキセル②
   アプレピタント使用時のデキサメタゾンは減量しない
3 ペメトレキセド
   腎機能低下時の安全性は確立されていない
4 カペシタビン+オキサリプラチン
   カペシタビンによる手足症候群では患者指導が重要である
5 FOLFIRI
   コリン作動性副作用に対して抗コリン薬を使用する
   遅発性の下痢に対して止痢薬を適切に使用する
6 FOLFOX+ベバシズマブ①
   オキサリプラチンによる末梢神経障害と過敏反応に注意する
   持続注入ポンプの管理を指導する
7 FOLFOX+ベバシズマブ②
   血管新生阻害薬特有の副作用に注意する
8 セツキシマブ
   低マグネシウム血症をモニタリングする
9 R-CHOP
   リツキシマブ投与時のインフュージョンリアクションに注意する
10 ベンダムスチン+リツキシマブ
   リンパ球減少による日和見感染症に注意する
11 ボルテゾミブ+デキサメタゾン
   ボルテゾミブによる末梢神経障害に注意する
12 テムシロリムス
   臨床症状がない間質性肺疾患では投与を継続できる
13 トラスツズマブ+ペルツズマブ+ドセタキセル
   HER2陽性進行・再発乳がんの標準治療を理解する
14 ゲムシタビン+エルロチニブ
   科学的根拠のない投与スケジュール変更や減量は行わない
   間質性肺疾患の徴候を見逃さない
15 ドセタキセル
   投与期間中に浮腫が生じることがある

■特別な臨床背景
16 パフォーマンスステータスの低下
   全身状態を客観的に評価して治療適応を判断する
17 腎機能障害
   添付文書などの減量基準に基づいて投与量を決定する
18 肝機能障害
   臨床試験の投与基準を参考にする
19 肥満
   肥満だけでは抗がん薬を減量する理由にはならない
20 高齢者
   生理機能の低下や薬物相互作用によって薬物効果が変動しやすい
21 外来化学療法を受ける小児
   身体的・精神的未熟性に起因するさまざまな注意点がある
   小児領域のレジメンは成人より複雑である
22 抗凝固療法を受けている患者
   ワルファリンとの薬物相互作用に注意する
23 B型肝炎ウイルス既往感染者
   HBV-DNAをモニタリングする
24 糖尿病の合併
   食事摂取が困難となった場合の対応について専門医に助言を求める
25 間質性肺炎の合併
   既存の間質性肺炎・肺線維症は薬剤性肺障害の危険因子である
26 がん疼痛の薬物治療
   抗がん薬とオピオイドの併用によって悪心・嘔吐が増強することがある
27 骨転移の薬物治療
   ゾレドロン酸による腎障害,顎骨壊死,低カルシウム血症に注意する
28 希死念慮を訴え治療を拒否する患者
   抑うつ症状の重症度を評価する
   自殺の危険性を評価して専門家へのコンサルテーションを検討する

■副作用のマネジメント
29 発熱性好中球減少症
   減量するか支持療法を強化するかは患者ごとで判断する
30 悪心・嘔吐
   催吐リスクに応じて制吐薬を使用する
31 予期性悪心・嘔吐
   悪心・嘔吐を誘発する状況や要因に注意する
32 口内炎
   抗がん薬による口内炎は予防と早期対応が重要である
33 抗がん薬による肝機能障害
   他の原因の可能性も考えて対処する
34 抗がん薬による腎機能障害
   治療中の腎機能の推移に注意する
35 末梢神経障害
   末梢神経障害による日常生活への影響に目を向ける
36 皮膚障害
   抗EGFR抗体薬による皮膚障害をマネジメントする
37 抗がん薬による心機能障害
   アントラサイクリン系抗がん薬の総投与量に注意する
38 抗がん薬による過敏反応
   薬物過敏反応の可能性を常に想定する
39 脱毛を気にする患者
   ボディイメージの変化を受け入れられなければレジメンの変更を検討する
40 抗がん薬による血管関連事象
   院内マニュアルを整備する

■遭遇するさまざまな問題
41 CVポートのトラブル
   ピンチオフ症候群に注意する
42 再発時の治療選択
   治療目的は延命とQOLの維持・改善である
43 最終ラインの治療
   コミュニケーションツールを参考にする
44 病歴の長い患者
   緊急時の対応やセルフケアについて繰り返し説明する
   経口分子標的薬ではアドヒアランスの維持が重要である
45 化学療法による妊孕性への影響
   抗がん薬と年齢によっては妊孕能温存療法を選択する
46 地域連携パス
   パスを使用してトラスツズマブを外来導入する
47 遺伝性乳がんと遺伝子診断
   HBOCの可能性があれば遺伝学的検査を考慮する
48 サプリメントと代替医療・がんサバイバーシップ
   十分な情報がないサプリメントの併用は許可すべきではない
49 経済的問題を抱える患者
   高額療養費制度など社会保障制度を知る
50 就労の問題
   些細な相談の中に就労の問題が隠れていることがある
序文
 近年,多くの病院で外来化学療法が行われるようになった.外来化学療法が普及すると,次には外来化学療法室の中身が問われるようになる.すなわち,指示された通りに抗がん薬を投与したり,患者や家族にありきたりな説明をしたりするだけでは,たとえ外来化学療法加算の要件を満たしていても,もはや「外来化学療法」の標準レベルからはほど遠いと言わざるを得ない.
 外来化学療法は,外来化学療法室に配置された専任の医師,看護師,薬剤師がうまくチーム医療を機能させて初めてその本来の役割を発揮できる.その中で,多職種によるカンファレンスは最も重要な構成要素になる.しかし,このカンファレンスでは何をどのように話し合うのか,また多職種が一堂に会する意義はどこにあるのかといった疑問が生じてくる.
 本書はこの課題に正面から取り組もうとした企画である.その最大の特徴である各論では,抗がん薬の適正使用,特別な臨床背景,そして副作用のマネジメントについて,カンファレンスに参加する医師,看護師,薬剤師それぞれの視点とともに,典型的な症例を呈示した.主な執筆者は日々同じ外来化学療法室でチーム医療をリードする医師であるが,編集の過程で執筆者が捉える医師,看護師,薬剤師の視点は多様であることに気づかされた.また,多職種の視点は互いに明確に分類されるとは限らず,ときに同じような視点を共有することがある.したがって,これら医師,看護師,薬剤師の視点の記載については,カンファレンスのテーマから少々外れていたり,重複する部分があったりしても,一部は敢えてそのまま残すように配慮した.総論では外来化学療法室における多職種カンファレンスのポイントとともに,がん薬物療法を専門とする医師の専門性,外来化学療法を受ける患者にみられる精神症状について概説した.
 本書が読者の日々のがん診療に役立つだけではなく,外来化学療法室での多職種カンファレンスへの理解につながれば幸いである.

2015年7月
安藤雄一
書評 1
南 博信 先生 (神戸大学大学院医学研究科 腫瘍・血液内科学 教授)

 面白い本が出た.「外来化学療法室 がん薬物療法カンファレンス」のことである.今やがん薬物療法は外来で行う時代である.初回は入院で様子を見て,問題がなければ2回目からは外来で,というのはすでに過去の話である.初回から外来で行う時代になって久しい.がん薬物療法に関する患者教育も外来で行う.したがって,医師だけでなく看護師や薬剤師も加わったチーム医療が不可欠となる.本書は,最初から最後まで外来におけるチーム医療の視点で書かれている面白い本である.
 本書は事例に即して書かれているので,何か問題点を調べるのにも良いが,気楽な読み物としても楽しめる.その意味でも面白い本である.おまけに個々の事例にはテーマがあり,その問題について楽しみながらしっかり勉強できる.参考文献もついているので,その気になればさらに突っ込んだ勉強も可能である.
 近年の分子生物学の進歩により分子標的薬が開発され,がん薬物療法の治療成績は飛躍的に向上したが,副作用も多彩化し,その管理に高度の知識と技量が必要となった.がん薬物療法は高度に専門化したため,もはや内視鏡や手術をしながらでは適切ながん薬物療法ができないと言われる.がん薬物療法専門医がコーディネートすべきなのである.本書を読んでいただければそれが実感できる.
 本書にも紹介されている“日本臨床腫瘍学会が求める「がん薬物療法専門医」”にもあるように,がん薬物療法は呼吸器内科,消化器内科など臓器別診療体系の中で修得するのではなく,臓器・領域横断的に修得すべきである.したがって,本書は特定のがん種に焦点を置いていない.その点でもがん薬物療法のあるべき姿を示している本である.がん薬物療法にかかわっているすべての人に薦めたい1冊である.
書評 2
寺田智祐 先生 (滋賀医科大学医学部附属病院薬剤部 教授・薬剤部長)

 11月になるとボジョレーワインが店頭に並び,購買を誘うキャッチコピーが毎年話題になります.2014年度のコピーは,「エレガントで味わい深く,とてもバランスが良い」でしたが,本書も,味わい深い症例がバランスよく散りばめられ,エレガントな一冊に仕上がっています.
 がん薬物療法が,入院から外来にシフトして, 10余年が経過しました.提供側の軸足は,安全性の構築から質の向上へと移動してきましたが,患者や現代社会のニーズは,どこにあるのでしょうか──? ベストな治療を,ストレスなく受けたいとは,誰しもが思うことでしょう.一方で,毎年のように登場する数多くの新規抗がん薬,高齢で合併症を有する患者の増加,長期生存が可能になった故に生じてきた問題….課題は山積しており,がんの薬物療法は確実に,複雑で,デリケートになってきています.このような状況下で,最善の治療を実施するためには,やはり「質の高いチーム医療の実践」しか,「答」はないと思います.
 本書の舞台は,チーム医療の象徴でもある,「外来化学療法室における多職種カンファレンス」です.Q&A形式でさまざまな症例の問題点を解決していき,後半にポイントが解説されています.主要レジメンの基本的な対応策に始まり,スペシャルポピュレーションへの抗がん薬投与,副作用マネジメント,さらには妊孕性,がん患者の精神症状のフォロー,就労問題など,個々の症例はバラエティーに富み,日常診療で遭遇する問題点が,バランスよく組み込まれています.
 特筆すべきは,医師,看護師,薬剤師それぞれの立場の思考法やアプローチが,明記されていることです.チーム医療では,各職種と円滑にコミュニケーションを図ることが重要であり,相手の立場や考え方を学ぶ上では,本書はこれまでになく実践的な内容になっています.全部で50症例あるので,1週間に1症例ずつ,1年間かけて多職種間で輪読していくことも,有効な活用方法になるかもしれません.
 表紙には,白い円卓・椅子の中に,赤い椅子が1脚描かれ,カンファレンスへいざなっているようにも見えます──.ワイングラスを片手に…,とはいきませんが(笑),あとは,椅子に座って,カンファレンスに参加するだけです!
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