プロの手の内がわかる!
がん疼痛の処方 さじ加減の極意
1版
聖隷三方原病院 副院長 緩和支持治療科 森田達也 編集
定価
3,960円(本体 3,600円 +税10%)
- A5判 374頁
- 2016年11月 発行
- ISBN 978-4-525-42151-9
“知識”と“ノウハウ”を習得できる疼痛緩和ケアの必読書!
緩和ケアは,患者の多様性という点で他の領域と大きく異なり,患者個々に合わせた綿密かつフレキシブルな対応が求められる.本書は,緩和ケアの基礎知識に加え,オピオイド鎮痛薬,鎮痛補助薬,非オピオイド鎮痛薬といった鎮痛薬の全体の処方せんを示しながら,さらに時系列にプロフェッショナルが実践している絶妙なさじ加減を解説した.
- 序文
- 目次
序文
塩がなければ料理の味はどうなってしまうのだろうか,と思うほど,「今一つ味がないな」と感じるときに,塩を少しつまんで入れると味ががらっと変わる.塩は永遠の調味料だ.筆者はよく料理をするほうではないが,それでも,少しの調味料のバランスが料理の味を決定的に違うものにすることを知っている.
ごぼうのスープを作るときは,ごぼうの味を前面に出したい.だしは昆布に決めている.味付けは塩と,少量のごま油を入れる.醤油は入れたとしても少ししか入れない.そのごぼうの下処理時間によっても味付けが異なっていて,土の香りがいっぱいするときは調味料を多めに入れても大丈夫だが,ふと気がついたら水にさらしすぎていて香りが飛んでしまっているときには,調味料が多いとごぼうの味が台無しになってしまう.ごぼう本来の味を楽しむためには,調味料の組み合わせをその都度変える必要があり,それを「さじ加減」と呼ぶ.
これは料理本の紹介ではない.何の話しをしているかというと,「痛ければオピオイドを使えばいい」「神経障害性疼痛にはガバペンチン誘導体を使えばいい」といったことは世の中によく知られるようになってきた.しかし,これだけでは,塩ラーメンには塩を入れる,生姜焼きにはしょうがを入れるということを知っているだけである.実際に,その患者に合わせて鎮痛薬を使うために,どれくらいの量をどのタイミングで,また他の鎮痛薬との兼ね合いも見てどのように使っていくかということ,要するに,「さじ加減」は何も分からない.
本書は,細かい鎮痛薬の使用方法,いわゆるさじ加減を知りたいときに手に取ってほしい.また,そのために必要な一般的知識についても一冊のなかに盛り込んだ.実際の臨床現場では,患者の状態に合わせて「この薬を少し減らして別の薬を少し増やして」「この薬は朝ではなく夜にして」「今回は教科書的な使い方から少し外して」のような,さじ加減が実践されており,これを共有することを意図して企画した.緩和治療における鎮痛薬の調整は,本当に,料理のさじ加減とよく似ている.さじ加減一つで料理の味(患者の鎮痛や満足度)が,がらっと変わる.執筆は実際に患者を多数みている緩和治療の専門家にお願いした.各医師によりバリエーションがあるが,そこも楽しんでもらえるといい.
本書が,教科書の一通りの知識では飽き足りない,毎日毎日の処方を工夫している医師,薬剤師の参考になれば幸いである.
2016年10月
森田達也
ごぼうのスープを作るときは,ごぼうの味を前面に出したい.だしは昆布に決めている.味付けは塩と,少量のごま油を入れる.醤油は入れたとしても少ししか入れない.そのごぼうの下処理時間によっても味付けが異なっていて,土の香りがいっぱいするときは調味料を多めに入れても大丈夫だが,ふと気がついたら水にさらしすぎていて香りが飛んでしまっているときには,調味料が多いとごぼうの味が台無しになってしまう.ごぼう本来の味を楽しむためには,調味料の組み合わせをその都度変える必要があり,それを「さじ加減」と呼ぶ.
これは料理本の紹介ではない.何の話しをしているかというと,「痛ければオピオイドを使えばいい」「神経障害性疼痛にはガバペンチン誘導体を使えばいい」といったことは世の中によく知られるようになってきた.しかし,これだけでは,塩ラーメンには塩を入れる,生姜焼きにはしょうがを入れるということを知っているだけである.実際に,その患者に合わせて鎮痛薬を使うために,どれくらいの量をどのタイミングで,また他の鎮痛薬との兼ね合いも見てどのように使っていくかということ,要するに,「さじ加減」は何も分からない.
本書は,細かい鎮痛薬の使用方法,いわゆるさじ加減を知りたいときに手に取ってほしい.また,そのために必要な一般的知識についても一冊のなかに盛り込んだ.実際の臨床現場では,患者の状態に合わせて「この薬を少し減らして別の薬を少し増やして」「この薬は朝ではなく夜にして」「今回は教科書的な使い方から少し外して」のような,さじ加減が実践されており,これを共有することを意図して企画した.緩和治療における鎮痛薬の調整は,本当に,料理のさじ加減とよく似ている.さじ加減一つで料理の味(患者の鎮痛や満足度)が,がらっと変わる.執筆は実際に患者を多数みている緩和治療の専門家にお願いした.各医師によりバリエーションがあるが,そこも楽しんでもらえるといい.
本書が,教科書の一通りの知識では飽き足りない,毎日毎日の処方を工夫している医師,薬剤師の参考になれば幸いである.
2016年10月
森田達也
目次
chapter 1 がん疼痛における処方設計-さじ加減の実践例-
痛みがとれないとき
1 急速に悪化する脊髄圧迫症候群の疼痛
2 腕神経叢の神経障害性疼痛
3 骨盤腔の神経障害性疼痛
4 高用量のフェンタニル貼付剤―疼痛の悪化―
5 骨転移の強い体動時痛
6 消化管閉塞の強い腹痛
7 直腸肛門の強い疼痛
8 胸壁の激しい疼痛
副作用が強いとき
1 嘔気で難渋するオピオイド―導入―
2 嘔気で難渋するオピオイドの増量―入院―
3 嘔気で難渋するオピオイドの増量―外来―2
4 便秘で難渋するオピオイドの増量
5 精神症状で難渋するオピオイドの増量―高齢者―
6 精神症状で難渋するオピオイドの増量―眠気1―
7 精神症状で難渋するオピオイドの増量―眠気2―
特別な状況のとき
1 透析患者の疼痛
2 呼吸困難を併発した疼痛
3 小児に対するオピオイドの投与
4 独居の患者に対するオピオイドの投与
5 頭頸部がんの化学放射線療法の時の痛み
chapter 2 がん疼痛と治療の基礎知識
1 がん患者の痛みの評価
2 がん疼痛に対する治療戦略
chapter 3 各種鎮痛薬の臨床薬理
1 オピオイド
2 鎮痛補助薬
3 非オピオイド鎮痛薬
chapter 4 オピオイドの投与設計の基本
1 オピオイドの増量(定期投与)
2 オピオイドスイッチング
3 がん突出痛とレスキュー薬―経粘膜吸収フェンタニル製剤の位置づけ―
4 鎮痛補助薬の併用
5 高用量のオピオイドでも除痛できない患者への投与設計
6 肝・腎機能障害を合併した患者への投与設計
chapter 5 オピオイドによる副作用か否かの見極めと発現時の対応
1 オピオイド依存
2 悪心・嘔吐
3 眠気・せん妄
4 便秘
chapter 6 オピオイドを使用する上で押さえておきたい患者応対のポイント
1 医療従事者が知っておきたいがん患者の心理
2 オピオイドに対するがん患者の心理
3 オピオイドについての家族のとらえ方
索 引
痛みがとれないとき
1 急速に悪化する脊髄圧迫症候群の疼痛
2 腕神経叢の神経障害性疼痛
3 骨盤腔の神経障害性疼痛
4 高用量のフェンタニル貼付剤―疼痛の悪化―
5 骨転移の強い体動時痛
6 消化管閉塞の強い腹痛
7 直腸肛門の強い疼痛
8 胸壁の激しい疼痛
副作用が強いとき
1 嘔気で難渋するオピオイド―導入―
2 嘔気で難渋するオピオイドの増量―入院―
3 嘔気で難渋するオピオイドの増量―外来―2
4 便秘で難渋するオピオイドの増量
5 精神症状で難渋するオピオイドの増量―高齢者―
6 精神症状で難渋するオピオイドの増量―眠気1―
7 精神症状で難渋するオピオイドの増量―眠気2―
特別な状況のとき
1 透析患者の疼痛
2 呼吸困難を併発した疼痛
3 小児に対するオピオイドの投与
4 独居の患者に対するオピオイドの投与
5 頭頸部がんの化学放射線療法の時の痛み
chapter 2 がん疼痛と治療の基礎知識
1 がん患者の痛みの評価
2 がん疼痛に対する治療戦略
chapter 3 各種鎮痛薬の臨床薬理
1 オピオイド
2 鎮痛補助薬
3 非オピオイド鎮痛薬
chapter 4 オピオイドの投与設計の基本
1 オピオイドの増量(定期投与)
2 オピオイドスイッチング
3 がん突出痛とレスキュー薬―経粘膜吸収フェンタニル製剤の位置づけ―
4 鎮痛補助薬の併用
5 高用量のオピオイドでも除痛できない患者への投与設計
6 肝・腎機能障害を合併した患者への投与設計
chapter 5 オピオイドによる副作用か否かの見極めと発現時の対応
1 オピオイド依存
2 悪心・嘔吐
3 眠気・せん妄
4 便秘
chapter 6 オピオイドを使用する上で押さえておきたい患者応対のポイント
1 医療従事者が知っておきたいがん患者の心理
2 オピオイドに対するがん患者の心理
3 オピオイドについての家族のとらえ方
索 引