書籍カテゴリー:癌・腫瘍学

免疫チェックポイント阻害薬の治療・副作用管理
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免疫チェックポイント阻害薬の治療・副作用管理

1版

  • トーマス・ジェファーソン大学腫瘍内科教授 佐藤隆美 編

定価:3,456円(本体3,200円+税8%)

  • A5判 251頁
  • 2016年11月 発行
  • ISBN978-4-525-42171-7

概要

知っておきたい! 免疫チェックポイント阻害薬のキホン

がん治療に新たな選択肢をもたらした免疫チェックポイント阻害薬であるが,従来の薬剤と異なり,その副作用はいつどの患者に起きるか予測が難しく,早期対応が最重要になる.本書は米国で免疫チェックポイント阻害薬を日常的に使用している腫瘍内科医が中心となり,臨床医が知っておきたい臨床効果と副作用管理の基本をわかりやすく解説した.

序文

 2011年に,米国において最初の免疫チェックポイント阻害薬であるipilimumabがFDAから認可されたとき,米国で働く臨床腫瘍医たちは二つの大きな懸念を抱いた.
 その一つは薬剤のコストであった.一人の転移性悪性黒色腫の患者をipilimumabで治療するためには,日本円にして1,000万円以上の薬剤費がかかる.もし,これが保険でカバーされなかった場合は,病院に莫大な損失を与えることになる.米国では,薬剤がFDAからの認可を受けることと,無数に存在する医療保険からその薬剤費が支払われることは必ずしも一致しない.このため,多くの大学病院がipilimumabを患者に使用することをしばらくの間は許可しなかった.やがて,その薬剤費がメディケアからきちんと支払われていることが確認され,ipilimumabの本格的な使用が始まった.
 Ipilimumabの使用をためらわせたもう一つの理由は,いままでの抗がん薬や免疫療法では見られなかった独特の副作用であった.これまでのがん治療薬とは異なり,免疫チェックポイント阻害薬の副作用は,いつ,どの患者に起こってくるかが予測できない.そのため,副作用が起こってきたときに24時間体制で対応できるシステムを構築する必要があり,このことが,がん診療のあり方に大きな変化をもたらした.また,免疫チェックポイント阻害薬が多くのがんに対して承認されるにつれて,これらの薬剤を臨床試験などで使用した経験のない臨床医が,文献や製薬会社の手引書を参考に患者の治療にあたるようになり,副作用に対する対応の不備により,それが重症化する懸念が持たれた.
 その後,それぞれの診療施設において,免疫チェックポイント阻害薬独特の副作用に対する経験が蓄積されるにつれて,次第にその治療体制が整備され,免疫チェックポイント阻害薬が外来で安全に投与できるようになった.
 日本でもいまや多くの臨床医が免疫チェックポイント阻害薬を使用できるようになり,かつての米国の状況に近づいてきている.また,副作用による死亡例も報告され,免疫チェックポイント阻害薬の副作用に対する早期対応の重要性が強調されている.このような状況のなか,免疫チェックポイント阻害薬による治療とその副作用の管理に関するガイドブックの必要性が高まってきた.
 本書はそのような要請に応えるべく,米国において免疫チェックポイント阻害薬を日常的に使用している腫瘍内科医が中心になって執筆された.日米の医療環境の違いを踏まえ,日本での免疫チェックポイント阻害薬を取り巻く状況も考慮しながら推敲を重ねた.また,免疫チェックポイント阻害薬の作用機序を理解していただくために,複雑な腫瘍免疫の機構を,できるだけわかりやすく説明することに留意した.さらに,単に薬剤の使用方法やその副作用対策だけでなく,なぜ免疫チェックポイント阻害薬が必要なのか,なぜそれが有効なのか,また,その限界は何なのかを,腫瘍免疫の専門家ではない方々にも理解していただけるようにやさしく解説することを心がけた.
 免疫チェックポイント阻害薬治療の適応,また他の治療法との併用などについては,今後も刻々と状況が変化していくことが予測される.また,その作用機序についてもデータがさらに蓄積されていくことと思われる.このような状況のなかで,本書が,がん治療の現場で免疫チェックポイント阻害薬を使って患者の治療にあたっている臨床医に,そしてその患者のケアチームのメンバーに活用され,一人でも多くの患者に安全で有効な治療を提供する手助けになることを心から願っている.
 最後に,本書の企画趣旨をご理解いただき,本書の発行を速やかに決定していただいた南山堂,特に短い期間に執筆者からの原稿を集め,発行にこぎつけるために日夜を厭わぬ努力をしていただいた熊倉倫穂氏にこの場を借りて深謝させていただきたい.

2016年9月
佐藤隆美

目次

第I章 がん免疫療法の基本
 1.がん免疫療法の研究・開発の歴史
 2.がん細胞に対する免疫応答
 3.がん免疫療法の種類
 4.免疫チェックポイント阻害薬の種類と作用機序
 5.腫瘍微小環境と免疫療法

第II章 免疫チェックポイント阻害薬の臨床開発の動向
 1.米国における臨床開発の動向
 2.日本における臨床開発の動向

第III章 免疫チェックポイント阻害薬の適応と治療
 1.悪性黒色腫
 2.肺がん
 3.腎細胞がん
 4.乳がん
 5.消化器がん
 6.血液腫瘍
 7.効果が期待されるその他のがん

第IV章 免疫チェックポイント阻害薬の副作用管理
 1.副作用管理においておさえておくべきポイント
 2.注意すべき副作用とその管理

第V章 免疫チェックポイント阻害薬の治療効果判定と治療効果予測
 1.免疫チェックポイント阻害薬の放射線学的治療効果判定
 2.抗PD-1/PD-L1抗体薬の効果予測マーカーとしてのPD-L1免疫染色

第VI章 免疫チェックポイント阻害薬と他の治療方法との併用
 1.放射線治療との併用
 2.局所療法との併用 ─ 腫瘍溶解性ウイルス療法
 3.薬物療法(化学療法薬,分子標的薬)との併用
 4.他のがん免疫療法との併用 ─ がんワクチン,養子免疫療法

表.日本で承認・申請されている免疫チェックポイント阻害薬一覧