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カテゴリー: 癌・腫瘍学  |  産婦人科学

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妊娠期がん診療ガイドブック

1版

聖路加国際病院 腫瘍内科 北野敦子 編
聖路加国際病院 女性総合診療部 医長 塩田恭子 編
国立成育医療研究センター周産期・母性診療センター 主任副センター長/妊娠と薬情報センター センター長 村島温子 編
聖路加国際病院 副院長 乳腺外科 部長・ブレストセンター長
山内英子 編
聖路加国際病院 腫瘍内科 部長 山内照夫 編
国立がん研究センター中央病院 乳腺・腫瘍内科/先端医療科 病棟医長 米盛 勧 編

定価

4,400(本体 4,000円 +税10%)


  • B5判  270頁
  • 2018年6月 発行
  • ISBN 978-4-525-42181-6

母と子の「2つの命」を守る!

妊娠中にがん治療を行うことは,母体や胎児への安全性が不明なため,困難であるとされてきた.しかし,病状や妊娠週数などを配慮することで,子どもを諦めることなく妊娠とがん治療の両立を図り,出産・育児までをサポートできることがわかってきた.本書は,腫瘍科,産科,母性内科などの領域をまたいで編纂された国内初の書籍である.

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  • 推薦のことば
  • 序文
  • 目次
推薦のことば
 1997年,当時,聖路加国際病院の乳がんクリニックを担当していた私は,乳癌の集学的治療を学ぶために,アメリカ・テキサス州立大学MDアンダーソンがんセンターで研修する機会を得ました.そこで得たさまざまな経験は,2005年に,聖路加国際病院にブレストセンターを開設する上での大きな原動力となりました.そのうちの一つが,本書のテーマでもある「妊娠期乳癌の治療」です.当時の日本では,抗がん剤をはじめとする乳癌の治療は胎児に対する安全性が懸念されることから,人工中絶が第一義的に勧められることがほとんどでした.また,診断も遅れがちで,かなり進行した状態で見つかることも多く,手術は行えても化学療法が必要なケースはどうすればよいのかという点に関しては,暗中模索の状態でした.しかしながら,MDアンダーソンがんセンターでは,腫瘍内科のRichard Theriault教授を中心としたチームが,すでに妊娠初期,中期,後期それぞれに応じた治療指針をまとめて実践していました.薬物療法においても,胎児に対する影響の少ないFAC療法(5-フルオロウラシル,ドキソルビシン,シクロホスファミド)は,妊娠中期になれば行えるとし,さらに,児への影響に関する長期的な経過観察を行うためのデータベースを構築していました.Theriault先生は,NCCN(National Comprehensive Cancer Network)における乳癌診療ガイドラインの策定メンバーの一人であり,そのガイドラインの中で,妊娠期乳癌の診療アルゴリズムの作成を担当されていました.私自身は,日本に帰国後,2000年頃から,時にTheriault先生のアドバイスを受けつつ,妊娠期乳癌の治療に取り組みました.特に,2005年の聖路加国際病院ブレストセンター開設以降は,医師のみならず,看護師,薬剤師,検査技師,ソーシャルワーカーなど多職種によるチームアプローチが積極的に展開され,妊娠期乳癌に対する治療もより円滑に行われるようになりました.こうしたなか,乳腺外科フェローとして研鑽を積んだ一人が,本書の編集責任者である北野敦子 先生です.
 乳癌手術後の経過観察は,少なくとも10年と長きにわたりますが,妊娠期乳癌の患者さんにとっては,術後の年数と生まれたお子さんの年齢が一致します.最初に治療を行った患者さんのお子さんは,まもなく成人式を迎えます.また,毎年,子どもの成長を記す写真入りの年賀状をくださる患者さんもいます.これらは,日々奮闘努力している乳癌診療チームの励みとなっています.
 これまで取り組んできた妊娠期乳癌の治療は,乳癌のみならず,疾患特性の異なる他のがん種に共有できるノウハウも多く,乳癌以外でも同様の取り組みが必要とされています.聖路加国際病院において乳腺外科フェローの研修を終えた北野先生は,国立がん研究センター中央病院で腫瘍内科の研鑽を積まれました.本書は,その幅広い臨床経験と,多彩なヒューマンネットワークのもとに編纂されました.さまざまな妊娠期がんに対して,質の高いチーム医療を実践するのに欠かせない一冊となることを祈念しています.


2018年 春

昭和大学医学部外科学講座 乳腺外科学部門 教授

中村清吾
序文
 このたび,『妊娠期がん診療ガイドブック』を上梓する運びとなりました.本書は,私が研究代表者を務める日本対がん協会「リレー・フォー・ライフ プロジェクト未来」研究助成「母と子,ふたりの命を救う!妊娠期がんホットラインおよび診療ネットワーク開発に関するアクションプラン」にご協力いただいた諸先生方および,日本乳癌学会班研究「妊娠期乳がんに関する包括的診療体制構築に向けた研究」(主任研究者:山内英子)の協力を得て,企画・編集されました.

 妊娠期悪性腫瘍(以下,妊娠期がん)は女性の社会進出や生殖医療の進歩による高齢出産化に伴い,近年増加傾向にある病態の一つで,海外の報告では1,000妊娠に1人の頻度と報告されています.わが国での妊娠期がん発症頻度はわかっていませんが,日本人女性の第1子出産年齢はすでに30歳を超過しており,今後もこの傾向は変わらないと予測されます.乳癌や子宮頸癌は30代から増え始めるがんであり,高齢出産化が進むわが国においても,妊娠期がんは考慮しなければならない病態の一つと考えられます.
 妊娠中のがん治療は,腫瘍学的安全性と周産期学的安全性が不確かであることから,かつては人工中絶という選択肢が選ばれることが多くありました.しかしながら,近年では妊娠中のがん治療の母体および胎児への安全性を報告するデータが蓄積され,がん種や,進行度,診断時の妊娠週数などを配慮することで,がん治療と妊娠の両立も可能になってきました.

 このような医学的・社会的背景の中で,妊娠期がんに対する集学的治療の体系化は急務と思われます.一方,妊娠期がんは病態自体の「希少性」に加え,罹患するがん種が「多領域」に及ぶこと,さらに関わる医療者も「多職種」であることから,臨床現場での実践は容易ではありません.

 本書では,この「多職種・多領域」の壁を超えることを目的とし,総論では,妊娠期がん診療に関わる,外科,腫瘍内科,産婦人科,母性内科,薬剤師,臨床心理士など複数の視点から,それぞれの領域の基本的概念および,妊娠期がん診療における留意点を記しました.また各論では,臓器横断的に各がん種別の妊娠期がんの治療方針や過去の報告例などをまとめています.
 本書は「ガイドブック」ではありますが,「ガイドライン」(遵守すべきルール)ではありません.妊娠期がん診療は,がんの薬物治療開発のようにランダム化比較試験を実施し,高いエビデンスレベルを確立するような疾患領域ではありませんので,本書で参考とした多くの文献は,前方視的または後方視的コホート研究,ケースシリーズになっています.

 本書を手に取られた方の多くは,すでに妊娠期がん診療に関わっている方,あるいはこれから妊娠期がん診療に関わろうと考えている方だと思います.本書が“目の前の”妊娠期がん患者さんの診療方針や意思決定に結びつき,各施設での妊娠期がんチーム医療の実践化の一助になれば幸いです.そして,「2つの命」を守るゲートウェイとなることを期待します.

 最後に,本書に協力していただいた執筆者の先生方,そして機敏かつ根気強く出版まで寄り添っていただいた南山堂の大城梨絵子さんに心より感謝を申し上げます.


2018年 春
編者を代表して 北野敦子
目次
■本書を利用するにあたって

第1章 妊娠期がん診療に必要な各領域の基礎知識
  1.がん診療の基本
  2.妊娠管理の基本
  3.産褥管理の基本
  4.子どもの成長と発達の基本
  5.妊娠中の薬物投与の基本

第2章 妊娠期がんの総論
  1.妊娠期がんの疫学・臨床像
  2.妊娠期がん診療の原則
  3.妊娠期がんの診断
  4.妊娠中の外科治療
  5.妊娠中の放射線治療
  6.妊娠中のがん治療薬投与による影響
  7.妊娠期がん治療中の母体・胎児管理
  8.妊娠期がん患者の心理的変化とその支援
  9.妊娠期がん治療における支持療法
 10.在胎期にがん薬物療法を受けた児の長期発育

第3章 妊娠期がんの各論
  1.妊娠期乳癌
  2.妊娠期子宮頸癌
  3.妊娠期卵巣癌
  4.妊娠期悪性リンパ腫
  5.妊娠期白血病
  6.妊娠期甲状腺癌
  7.妊娠期悪性黒色腫
  8.妊娠期骨軟部腫瘍
  9.妊娠期消化管癌・泌尿器癌
 10.妊娠期肝癌・胆癌・膵癌
 11.妊娠期肺癌
 12.妊娠期頭頸部癌

第4章 妊娠期がんの症例検討
  1.妊娠期乳癌─妊娠初期診断症例─
  2.妊娠期乳癌─妊娠中期:周産期合併症による予定治療変更症例─
  3.妊娠期乳癌─妊娠後期診断症例─
  4.妊娠期子宮頸癌─ⅠB1期(扁平上皮癌)妊娠待機症例─
  5.妊娠期子宮頸癌─ⅠB1期(扁平上皮癌)妊娠継続困難症例─
  6.妊娠期子宮頸癌─ⅡB期?妊娠中に化学療法をした待機症例─
  7.妊娠期悪性リンパ腫
  8.妊娠期甲状腺癌

提供ツール
・妊娠期がんアセスメントシート
・患者さん用冊子

Column
・患者さんの体験記①
・患者さんの体験記②

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