書籍カテゴリー:癌・腫瘍学|感染症学

がん患者の感染症診療マニュアル
立ち読み

在庫状況:在庫あり(僅少)

がん患者の感染症診療マニュアル

第2版

  • 国立国際医療研究センター病院国際感染症センター センター長 大曲貴夫 監修
  • 静岡県立静岡がんセンター感染症内科 倉井華子 編集
  • 国立がん研究センター中央病院総合内科/造血幹細胞移植科 冲中敬二 編集
  • 手稲渓仁会病院 総合内科/感染症科 岸田直樹 編集
  • 静岡県立静岡がんセンター感染症内科 河村一郎 編集
  • 国立病院機構名古屋医療センター総合内科 鈴木 純 編集
  • 洛和会音羽病院総合診療科/感染症科 羽田野義郎 編集
  • 静岡県立静岡がんセンター感染症内科 伊藤健太 編集

定価:3,240円(本体3,000円+税8%)

  • B6変型判 275頁
  • 2012年10月 発行
  • ISBN978-4-525-42322-3

概要

がん患者の感染症は,がんの治療や予後にも大きな影響を及ぼすことから,そのマネジメントは非常に重要である.本書では,がん治療の場面毎,臓器別の感染症診療のポイントをコンパクトにまとめ,改訂2版では新たな編者で内容をUpdateし充実させた.感染症診療のロジックがこの一冊で学べる!がんの診療に携わるすべての人に役立つ書籍である.

序文

 がん患者は,がんそのものやがん治療の過程でさまざまな感染症のリスクに曝される.
 たとえば胃がんの患者であれば,手術の際に手術部位感染症のリスク,化学療法の際には好中球減少に伴う感染症のリスクに曝される.また中心静脈カテーテル関連血流感染症,誤嚥性肺炎,脾臓摘出後の重症感染症のリスクもあるかもしれない.つまり,がん患者と感染症はきわめて密接な関係にある.
 がん患者が感染症にかかると,がんの治療が中断する.手術や化学療法の遅れにより最適な治療が受けられない事態も発生しうる.そして,感染症により患者を失うこともある.
 がん患者ががん治療に専念できるように,また患者を感染症で失わないためには適切な感染症マネジメントが必要である.感染症にかからせない(予防),感染症を早期に適切に発見する(診断),うまく治す(治療)の3つの柱が重要となる.本書は,適切な診断と治療についてまとめたマニュアルである.
 がん患者と一口に言っても,がんがほぼ完治しフォロー中の患者から緩和医療を受けている患者,術後,放射線治療中,化学療法中の患者などバリエーションは広い.発症する感染症も市中感染から医療関連感染まで幅がある.これらの多彩な患者・感染症を適切に診断・治療していくためには,臨床感染症の基本的なロジックに基づいた考え方が必要である.
 ロジックに基づく診療とは,①どのような感染症を起こすリスクがある患者か“患者背景”を抽出し,②どこの部位の感染症か“臓器”を詰め,これらの情報から③原因となる“微生物”を推定・同定し,④“抗菌薬”を選択していく診療である.そして,⑤“経過観察”を適切なタイミングで行うことも忘れてはならない重要なステップの1つである.
 これらのステップは市中・医療関連感染症を問わず共通のものである.本書はがん患者と銘打ちながらも,市中感染・医療関連感染いずれの場でも活用できるマニュアルとなっている.
 なお,本書での“当科”とは,「静岡県立静岡がんセンター感染症内科」を指している.静岡がんセンターでは,わが国の他のがん専門医療施設に先駆けて2004年から感染症内科が活動を開始した.感染症専門医育成のプログラムを持ち,2012年の現時点で7名のフェローが卒業し,全国で活動している.今回の改訂版は志を同じくする当科の卒業生,現役生が力を合わせて作成した.
 初版作成時から4年が経過し,我々の症例経験が増えた.多くの教科書に記載されてはいないが,経験に基づくプラクティスを,改訂2版では静岡がんセンターの「パール」として追加している.また,初版からの項目も編者で議論を重ね全体を見直し,情報のUpdateを行った.2版では新たな項目として「予防接種」,「ビスフォスフォネート関連顎骨壊死(BRONJ)」,「血管内感染症」,「抗酸菌感染症(結核)」なども加え,内容の充実を図っている.
 本書は「がん診療に関わる医療者が自信を持ってがん患者の感染症に立ち向かうために」作成したマニュアルである.本書が,がん診療に携わる読者の一助となり,感染症でがん治療が遅れる患者,命を落とす患者が一人でも減ることを心から願う.

2012年9月 著者を代表して
倉井 華子

目次

第1章 感染症診療のロジック(基本編・がん患者編)
 1. 感染症診療のロジック(基本編)
  ロジック①患者背景を理解する
  ロジック②どの臓器の感染症?
  ロジック③原因となる微生物は?
  ロジック④どの抗菌薬を選択?
  ロジック⑤適切な経過観察
 2. 感染症診療のロジック(がん患者編)
  ロジック①患者背景を理解する
  ポイント①バリア障害
  ポイント② 生体機能の異常
  ポイント③ 好中球の減少
  ポイント④ 細胞性免疫の低下
  ポイント⑤ 液性免疫の低下
  ロジック②どの臓器の感染症?
  ポイント①医療関連感染症の好発部位を知る
  ポイント② 好中球減少状態でのフォーカスの詰め方を知る(1)
        好中球減少状態でのフォーカスの詰め方を知る(2)
  ポイント③細胞性免疫低下状態でのフォーカスの詰め方を知る
  ポイント④CRP,WBCで判断しない
  ロジック③原因となる微生物は?(1)
  ポイント①「背景+臓器」から原因菌を推定
  ポイント② 易感染状態・免疫低下時の原因菌を知る(1)
        易感染状態・免疫低下時の原因菌を知る(2)
  ポイント③ 易感染状態の時間的変化を知る
  ロジック③原因となる微生物は?(2)
  ポイント①抗原検査のみでは診断がつかない
  ポイント② 耐性菌感染・重複感染の見落としを防ぐ
  ポイント③ 毒性の強い薬剤を投与するときの根拠となる
  ポイント④ 治療終了の目途が立つ
  ロジック④どの抗菌薬を選択?
  ポイント①Empiric Therapyでの抗菌薬選択
  ポイント②Definitive Therapyでの抗菌薬選択
  ロジック⑤適切な経過観察
  ポイント①自然経過を知る
  ポイント②CRP,WBCのみに頼らない
  ポイント③「よくならない」理由を系統的に洗い出す(1)
       「よくならない」理由を系統的に洗い出す(2)


第2章 がん治療の場面ごとの感染症診療のポイント
 1. 固形がん化学療法時
  ●感染症の観点からみた固形がんの特徴
  ●感染症の観点からみた固形がん化学療法の特徴
 2. 造血幹細胞移植(HSCT)時
  ●確認すべき背景
  ●同種造血幹細胞移植後の感染症は3つの時期に分けて考える
  ●原因病原体-①細菌
  ●原因病原体-②真菌
  ●原因病原体-③ウイルス
  ●予防のための処方例
 3. 免疫抑制薬投与時
  ●免疫抑制薬の種類と免疫低下
   ①糖質コルチコイド
    ②細胞毒性薬
    ③特異的リンパ球シグナル伝達阻害薬
      ④-1. 生物学的製剤(サイトカイン阻害薬:TNF-α阻害薬)
   ④-2. 生物学的製剤(ポリクローナル抗体,モノクローナル抗体)
 4. 放射線治療時
  ●放射線治療時のポイント
  ●感染症の観点からみた放射線治療
 5. 外来化学療法・在宅医療時
  ●外来化学療法・在宅医療における感染症の特徴
 6. 緩和ケア時
  ●進行がん患者に伴う発熱の原因
  ●緩和ケアにおける感染症診療のポイント
 7. 手術時
  ●手術部位感染症(SSI)の定義
  ●SSIの予防
  ●予防的抗菌薬と手術部位
  ●術後発熱の原因
  ●手術部位別SSIの原因菌
  ●SSIの治療
 8. 予防接種
  ●がん患者に推奨するワクチン
  ●造血幹細胞移植後のワクチン接種のポイント


第3章 がん患者における重要な感染症症候群のマネジメント
 1. 敗血症
 2. 発熱性好中球減少症(FN)
 3. 発熱性好中球減少症〜発熱が5日以上続くときの対応〜
 4. 真菌感染症
 5. 腫瘍熱


第4章 臓器・部位別の感染症診療のポイント
 1. 中枢神経系
   (1)総 論
   (2)細菌性髄膜炎
   (3)脳室シャント感染症
 2. 頭頸部
   (1)咽頭炎・副鼻腔炎
   (2)ビスフォスフォネート関連顎骨壊死(BRONJ)
   (3)深頸部感染症
 3. 呼吸器・胸部
   (1)肺 炎
   (2)膿 胸
   (3)肺膿瘍
 4. 腹部・消化器
   (1)胆管炎
   (2)胆嚢炎
   (3)肝膿瘍
   (4)特発性細菌性腹膜炎(SBP)
   (5)二次性腹膜炎
   (6)三次性腹膜炎
   (7)下痢症(市中)
   (8)下痢症(院内)〜主に抗菌薬関連下痢症〜
 5. 泌尿器・尿路
   (1)腎盂腎炎
   (2)腎膿瘍・腎周囲膿瘍
   (3)細菌性前立腺炎
   (4)精巣上体炎
 6. 婦人科関連
   (1)蜂窩織炎〜子宮摘出後腟断端部〜
   (2)術後骨盤内膿瘍
   (3)敗血症性骨盤内静脈血栓症
   (4)子宮留膿腫
   (5)リンパ嚢胞感染
 7. 軟部組織
   (1)丹 毒
   (2)蜂窩織炎
   (3)壊死性筋膜炎
   (4)ガス壊疽
 8. 筋・骨格系
   (1)骨髄炎
   (2)化膿性関節炎
   (3)人工関節の感染症(関節炎)
 9. 血管内感染症
   (1)中心静脈カテーテル関連血流感染症
   (2)感染性心内膜炎
 10. 抗酸菌感染症
   (1)結 核
   (2)非結核性抗酸菌症


第5章 抗菌薬の投与方法
 1. 経口抗菌薬の投与方法(成人)
 2. 腎機能障害時の経口抗菌薬の投与方法
 3. 静注抗菌薬の投与方法(成人)
 4-1. 静注用バンコマイシンの初期投与量
 4-2. 静注用アミノグリコシドの初期投与量
 5. 腎機能障害時の静注抗菌薬の投与方法
 6. 持続透析時の静注抗菌薬の投与方法
 7. 「抗菌薬と抗微生物薬」および「抗菌薬と抗がん薬・免疫抑制薬」の相互作用
 8. 薬剤添付文書に記載されている併用禁忌・注意薬剤(抗がん薬・免疫抑制薬,抗菌薬)
 9. 簡易懸濁法(経口投与が不可能な患者に対しての投与方法一覧)


索 引