書籍カテゴリー:癌・腫瘍学

がん終末期・難治性神経筋疾患進行期の症状コントロール 増訂版

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がん終末期・難治性神経筋疾患進行期の症状コントロール 増訂版
ターミナルケアにたずさわる人たちへ

2版

  • 箕面市立病院麻酔科部長 後明 郁男 編著
  • 大分大学大学院教授 平塚 良子 編著
  • 箕面市立病院薬剤部長 佐藤 健太郎 編著
  • 国立療養所刀根山病院副院長 神野 進 編著

定価:4,070円(本体3,700円+税10%)

  • B5判 337頁
  • 2003年8月 発行
  • ISBN978-4-525-42542-5
  • ISBN4-525-42542-3

概要

緩和医療を行う上で求められる知識・ノウハウを網羅.一般病院や療養所などの施設ですぐに実施可能なレベルで,医師,薬剤師,看護師,福祉職を読者対象とし,チーム医療の視点で執筆されている.増訂版では,新薬の情報と使用経験,従来からの薬品に対する再評価に加え,終末期の水分・栄養管理,精神症状の治療などにつき,大幅な加筆修正を行いアップデートな内容とした.

序文

国民各層に健康管理・疾病治療が広くいきわたることで,多くの日本国民は,今日,わずか40年ほど前までは想像することもできなかった健康的な日常生活を享受している.
現代医学は,感染症や外科的疾患に大きな力を示し,ときには人をして現代医療への過信を導くほどであるが,依然として治らない疾患は無数にあり,とりわけ,進行性致死性の慢性疾患や,加齢による予備力低下にもとづく体調不良や臓器機能不全には,ほとんど寄与するところがない.
一時は,現代医学を高く評価して,永遠の健康と若さがこれによって保証されるように錯覚した世相も,現代医学の限界が明らかになるにつれて,人は衰弱して死ぬものであるという冷厳な事実にあらためて気付いてきたようである.とはいえ,その視線は未だ弱々しく,直視する人は少数である.多くの人にとって,死は他人事であり,健康な日常生活を離れた,病院や特別養護老人ホームなどの施設で生じていることだからである.
しかし,少数であっても死や死にゆくこと,あるいはそのような人をケアすることに関心を持って,これを直視する人が増えつつあることは,とても重要なことである.
このような人たちが,衰弱と死を,いずれは自分にも訪れる自然で当たり前な現象であるという視点で,終末期にある人,またその家族と接するなかで,昨今の死とのぎこちない関係が自然に改まっていくような,そんな予感がするからである.希望的に過ぎるかもしれないが.
本書では,ターミナルケアの代表的対象疾患として,がんとある種の難治性の神経筋疾患(筋萎縮性側索硬化症,筋ジストロフィーなど)を取り上げた.
とくに,がんと難治性神経筋疾患という2つの疾患群を中心的に取り上げたのは,これらの疾患群の終末期の有様は,安静にしていても,死の直前まで意識が清明なまま,激しい身体的な苦悩が持続するという,延命医療の進歩がもたらした従来見られなかった「新しい終末期像」を示すからである.がんについては,1981年以来わが国の死因の第1位を占め,その数がずば抜けて多く,年間25万人にも及んでいることもある.
さらに,医療だけの視点でみると,あまりに病像の異なるこれらの疾患群を一括して論ずるのは意味がないことであるが,〓「緩和医療の必要」と〓本人とその家族の社会生活の維持のための「保健・社会福祉資源の有効活用の必要」という共通のニーズが存在するのである.
これらの疾患の終末期の患者とその家族のニーズにどう具体的に応えるかということは,死を看取る視点と具体的な援助技術をきちんともっていない場合,きわめて困難である.
身体的な苦悩を和らげるという緩和医療や看護の重要性もさることながら,残された身体機能の活用というハビリテーション,心理的な動揺に対する精神医学的援助,社会福祉資源の活用といったことが,きわめて重要な働きをする.
本書の執筆者は,日常的にここで述べるような患者や患者の家族に接しているが,所属する施設は日本各地にあるような一般病院や国立療養所である.本書で用いられている薬物や技術に特段なものはなく,ここで述べたことはどこの施設でもすぐにも実施可能なことばかりである.
がんと難治性神経筋疾患という,きわだって病像のことなる,しかして,きわめて重要な疾患をならべて考察したことは,互いの緩和医療に驚くほど貴重なヒントを与えてくれた.さらに,社会福祉学の視点で大きく括ったことで,本書は,患者と患者の家族の幸福に,今一歩近づけたのではないかと思う.
読者の皆さまのご意見,ご批判を受け,さらに実践的で利用しやすいテキストに育てていきたいと切に願う.

2000年晩秋 編者しるす



増訂版について
緩和医療学の最近の進展は著しく,基礎的な研究に加えて,臨床現場で使用可能な鎮痛薬や鎮痛補助薬,痛み以外の諸症状に対する治療薬の開発や市場へのリリースは活発な展開をみせている.すなわち,現場の医療者の持ち駒が急速に多彩になってきた.
このところ,緩和医療充実への社会的な追い風は勢いを増しているが,それに応えるべき医療者側の動きは必ずしも十分とは言えなかった.しかし,持ち駒の充実は,医療者側の動きも加速せずにはおかないであろう.
本書では,そうした背景を踏まえて新薬の情報と使用経験,従来からの薬品に対する再評価に加え,終末期の水分・栄養管理,精神症状の治療などにつき大幅な加筆修正がなされていて,実態は改訂版に近い.増訂版とした所以である.
大幅な紙数の増加にもかかわらず,南山堂のご努力により値段は据え置かれた.編者一同,南山堂に感謝するとともに,本増訂版が緩和医療推進の一助として,人生の終末期に立ち会う機会のある医療人に広く読まれることを心より期待している.

2003年6月 後明郁男(編者代表)

目次

序論 ターミナルケアと保健・医療・福祉―現状と展望―

第1章 人間性の復権としてのターミナルケアの歴史的展開
A.近代以前のターミナルケア
B.近現代におけるターミナルケア

第2章 がん終末期の身体症状とその対策
A.がん終末期とは
B.痛みとその対策
C.鎮痛薬と鎮痛補助薬
D.オピオイド鎮痛薬とりわけモルヒネを使いこなす
E.骨転移痛の治療
F.肩こり,頭痛,腰痛ならびに全身倦怠感
G.呼吸器症状とその対策
H.消化器症状とその対策

第3章 圧痛点ブロック(経穴ブロック)とSSP療法

第4章 がん終末期ケアにおける薬剤師の役割
A.箕面市立病院における現況と展望
B.病棟薬剤師の働きの実際

第5章 がん終末期ケアと内科
A.がん終末期患者と向きあう姿勢(総論にかえて)
B.内科における終末期がん治療

第6章 がん終末期における手術療法の意義と腫瘍緊急状態における外科的介入
A.外科の立場から
B.泌尿器科の立場から
C.脳神経外科の立場から
D.整形外科の立場から

第7章 難治性神経筋疾患の進行期・終末期に現れる症状とその対策
A.主要な難治性神経筋疾患の概説
B.症状とその対策

第8章 精神症状とその対策

第9章 緩和医療とリハビリテーション

第10章 看護の働き
A.終末期患者の家族へのケアの重要性について
B.難治性神経筋疾患患者の看護

第11章 福祉職の役割

第12章 終末期ケアにおける今後の課題と展望(社会福祉学の立場から)

付録 「終末期の症状緩和への援助―死を看取る視点の歴史的考察を踏まえて―」
大阪府立千里看護専門学校,キリスト教社会福祉専門学校における特別講義 講義録