書籍カテゴリー:癌・腫瘍学

緩和ケアチームの立ち上げとマネジメント
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緩和ケアチームの立ち上げとマネジメント
一般病棟で取り組むための支援ガイド

1版

  • 彩都友紘会病院副院長 後明 郁男 編

定価:3,300円(本体3,000円+税10%)

  • B5判 145頁
  • 2008年4月 発行
  • ISBN978-4-525-42551-7

概要

これから緩和ケアチームを立ち上げようとしている方々,一応立ち上げてはみたものの運営が上手くいかずに困っている方々への応援歌ともいえるようなガイドブック.実際に一般病棟で緩和ケアチーム立ち上げの苦労を経験した執筆陣による,チームを立ち上げ継続していくためのコツや,必ずぶつかる困難を克服するためのノウハウが満載の必読の一冊.

序文

緩和ケアチームを立ち上げようとしている皆さんへ ─序文にかえて─

編者は,1984年から緩和医療にかかわってきた一臨床医です.出身は麻酔科・ペインクリニック科です.現在は,2007年9月1日に大阪府茨木市に新規開院した西日本初の民間がん専門病院(彩都友紘会病院)で,緩和ケアチームの立ち上げと,緩和ケア病棟開設準備の担当管理者をしています.
本書は,これから緩和ケアチームを立ち上げようとしている方々,あるいは,一応立ち上げてはみたものの運営がなかなか上手くいかず困っている方々に,応援歌となるような参考資料を提供する目的で編集しました.
緩和ケアに対しては,1980年前後から,一般社会から強い追い風が吹いています.
がんが1981年にわが国の死因の第1位になり,以後,総死亡者数のなかの割合も絶対数も減少傾向がないままに,死因の第1位であり続けていることや,がんを克服できる時代が来るまでまだ相当の時間が必要であることが広く了解されているため,「人生のどこかで自分や家族ががんと共生せざるを得ないならば,痛みやだるさや息苦しさなどの不快な症状は,可能なかぎり緩和してもらいたい」というごく当たり前な希望から生じた追い風です.マスコミ・ジャーナリズムも,頻繁に取り上げてきました.
この追い風に対し,20世紀末までわれわれ医療・保健・福祉の領域は,全体としてはリスポンスが弱かったと思います.一部には積極的な動きが見られ,日本緩和医療学会などの緩和医療関係の学会・研究会が多数設立され参加者は増加していますが,医療現場を緩和医療の充実や促進に向けて大きく動かすまでには至りませんでした.
しかし,21世紀に入ってから,状況は大きく動き出しました.とくに2002年度の診療報酬改定における「緩和ケア診療加算」の新設,2006年2月1日の厚生労働省健康局長通達「がん診療連携拠点病院の整備について」,さらには2006年6月16日に衆議院を通過して2007年4月1日に施行された「がん対策基本法」など,国として緩和医療の充実・促進に動き出しています.標準的ながん治療に抗して治癒が望めなくなった状態の人がたくさん生じ,がん難民などという言葉も生まれるほど,がんの治癒的治療が終了したあとのケアが社会問題化したことや,化学療法・放射線療法の組み合わせによる治療(chemo-radio therapy)の普及・浸透にともない,治癒治療中の諸症状の緩和が,闘病意欲の維持のうえでも大切であるという認識の反映です.
国の動きは,これまでリスポンスが弱かった医療現場に活を入れるものです.日本のどこに立地していようと,がん患者の診療にあたる施設ならば標準的な治癒治療(キュア)とともに標準的な緩和医療(ケア)を提供することが,これまでの努力目標から,必須の義務となりました.
とりわけ各地の基幹的な中核病院は,医師確保の困難や医療費抑制などの厳しい医療情勢のなかで,生き残りをかけて「地域がん診療連携拠点病院」の認可を得る努力をせざるを得なくなっています.この認可条件の1つが,緩和ケアチームが存在して実働していることであり,緩和ケアチームはまさに政策的に誘導されて,全国的に立ち上げの促進が図られています.

編者は,目下立ち上げ準備をしている緩和ケアチーム(準備)メンバーや,立ち上げたばかりの緩和ケアチームのメンバーから,さまざまな悩みや相談を受ける機会がありますが,相談内容は次の諸点に集約されます.
・先行して活動しているチームに,緩和ケアチーム立ち上げの「苦労話が聞きたい」(それと,それをどう克服したか).
・緩和ケア病棟の緩和ケアを目標にしようと思ったが,やればやるほど,これは無理だということに気付いた.
・緩和ケア病棟の緩和ケアと一般病棟の緩和ケアチームの緩和ケアは,「緩和ケアマインドをもって行う」という理念は同じでも,緩和ケア病棟の緩和ケアを一般病棟でもやれというのは,集中治療室(ICU)における重症患者ケアを一般病棟でもやれというのと同じで,とても現実的とは思えない.緩和ケア病棟の緩和ケアと,一般病棟の緩和ケアチームによる緩和ケアは違うと考えたほうが現実に即しているのではないか.
・病院トップの緩和ケアチームに対する強いリーダーシップと支持(精神的にも,できれば物的にも)が不可欠だ.
・緩和ケアチームを,チームたらしめるためには,各チームメンバーが,互いの専門性を尊重して,互いに意見を聞きつつケアの方針を共有することが必要だとは思うが(多くの成書や論文にこう書いてある),各メンバーの力量は実際のところはなはだまちまちで,どうにもまとまりがつかない.
・なんとかチームを立ち上げても,インセンティブがなく,中心メンバーから燃え尽きて脱落していくが,どうしたものか.いったん立ち上げても継続が困難だ.
等々…です.

誤解を恐れずに申しますと,どの程度のことをやれば緩和ケアチームとして「初期段階としては」合格といえるのかがわからないというのが,一番の悩みではないかと感じています.
本書は,このような時流のなかで,「ここまでやれば,まずは初期段階としての緩和ケアチームとしては合格ですよ」という応援歌のようなガイドブックをつくりたいと考えて企画しました.
各執筆者には,執筆のご承諾をいただくに際して,まず,編者の緩和ケアチームに関する考えをお示ししました.さまざまな視点から複眼的に論ずるという手法もありますが,本書は,編者の緩和ケアチームの考え方を基本的に了とされた立場からご執筆いただいています.
冒頭に述べましたように,編者自身,目下,所属施設における緩和ケアチームの立ち上げの真っ最中にあります.ガイドブックの執筆・編集と,実際の緩和ケアチームの立ち上げを同時進行で行えるのは,希有な幸運であると,心に刻んでいます.
本書は2006年の秋に企画の話が持ち上がり,2007年の春,がん対策基本法の施行直前に企画が固まりました.その後,1年足らずで刊行することができたのは,テーマが旬であり,執筆者各位が原稿の締め切りをきちんと守っていただいたことと,編集と刊行に際して南山堂編集部の熊倉倫穂氏のひとかたならぬご尽力があったからです.編者として深く感謝申し上げます.


2008年3月
後明 郁男





目次

第1章 総論的事項:緩和ケアチームの立ち上げと初期段階のマネジメント
 1.緩和医療学と緩和ケア
 2.わが国における緩和ケアチームの発展過程と筆者の経験
 3.緩和ケアチームの必要性と目指すもの
 4.「緩和ケア病棟」の緩和ケアと「一般病棟」の緩和ケア
 5.緩和ケアチームのメンバーと役割─overview
 6.緩和ケアチームの立ち上げの実際

第2章 第一段階として目指すべきこと
 1.緩和ケアチームの構成と運営および病院当局への期待
 2.緩和ケアチームのケア対象者と最初の挨拶
 3.症状コントロール─overview
 4.どこまでできれば第一段階として良しとするか

第3章 緩和ケアチームのメンバーと役割
 1.緩和ケアチーム担当管理者
 2.チームリーダー【1】,【2】
 3.看護師【1】,【2】
 4.薬剤師
 5.医師:一般科(身体症状担当者),精神科(医療心理担当者)
 6.医療ソーシャルワーカー

第4章 一般病棟における緩和ケアチームの立ち上げの実例
 1.急性期型総合病院における緩和ケアチーム立ち上げの経験から
 2.市立池田病院
 3.市立豊中病院
 4.橋本市民病院
 5.近畿大学医学部附属病院
 6.昭和大学病院
 7.山梨大学医学部附属病院
 8.和歌山県立医科大学附属病院
 9.国立がんセンター中央病院

資料
「緩和ケア診療加算に関する施設基準について」
「がん診療連携拠点病院の整備について」
「がん対策基本法」

索引