書籍カテゴリー:医学・医療一般

患者さんの満足度UP
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経営学の視点から考える
患者さんの満足度UP
患者満足度追求のわな

1版

  • 多摩大学医療リスクマネジメントセンター教授 真野俊樹 著

定価:2,484円(本体2,300円+税8%)

  • A5判 183頁
  • 2010年4月 発行
  • ISBN978-4-525-43151-8

概要

医療の中心が,医療を施す側ではなく,医療サービスを受ける側に変化しており,病院経営の観点からも患者満足度(PS)の追求は避けては通れない.最近では,PS向上に奔走する病院も多いが,結果が出ていない現状もある.実は,その裏にある従業員満足(CS)と大きく相関している.「経営品質」の考えのもと,その解決のヒントを解説する.

序文

 この本は,医師不足,看護師不足に悩む医療機関に役立つようにとの思いから書いています.私自身,大学院で医療経済や医療経営を教えながら,ほそぼそとですが現役の医師としても働いています.そのようななか
で,患者重視は当然のことで,最近『医療マーケティング(実践編)』を上梓したところです.こちらの本はマーケティングですので,患者思考,患者満足経営といった視点です.
 数年前のことですが,医療現場や大学院でいろいろなことを考えているうちに,従業員が満足していなければ,顧客である患者さんにいいケアを与えることはできないのではないだろうか,ということに気がつきまし
た.そういった視点で経営学を見直してみると意外や意外,「従業員満足なしでは顧客満足はない(ESなくしてCSなし)」といった話は私が不勉強であっただけで,昔から経営学の考え方にはあったのです.
 私にとってもう一つの重要な出会いは,「経営品質」という考え方でした.この考え方も「ESなくしてCSなし」を重要なコンセプトとして持っており,アメリカの医療機関に急速に普及していたのです.最近では,
東南アジアの医療機関にも広がっている考え方です.そして,この研究を日本でも始め,研究会としても行っており,認証も始めたところです(詳細は本文中にも出てきます).
 また,アメリカにおいてこの考え方は,医療機能評価機関であるジョイントコミッションとも関連があり,「医療の質」とそれを支える「経営の質」という考え方があることもわかりました.
 さて,この本では,大きく3つの構成になっています.1?3章までは顧客満足(患者満足)についての整理です.概念の整理にもなるので,少し回りくどいかもしれません.場合によっては,とばしてもらってもかま
いません.4?7章はこの本の中心である従業員満足についてです.まだまだ医療機関になじんでいるとはいえない従業員満足について,概念の整理とそれをよくする方法を提示しています.最後の8,9章は方法論で
す.方法論といっても,一つひとつが大きなものですからこの本ですべてを網羅することはできません.しかし,直接「医療の質」や「経営の質」について関係がない人でも,このくらいは知っておいたほうがいいとい
う内容になっています.
 とくに,経営品質については1章分を割きました.経営といってもお金の話ではありません.従業員満足に大いにつながる話です.なお,この内容を実践している医療機関や企業については,さきほど触れました『医
療マーケティング(実践編)』で取り上げています.
 また,参考文献はかなり詳しく載せていますので,個別の方法をもっと詳しく知りたい方は,さらに勉強してください.
 経営層の方から現場の医療職の方まで,すべての皆さんに関心があるテーマが従業員満足だと思います.本書が,皆様の医療職としての成功に少しでも役に立てば幸いです.
 最後に,私自身の従業員満足の支えになっている家族に感謝しつつ,まえがきとさせていただきます.


2010年3月
真野俊樹



目次

序章 患者さんに満足してもらうとは?
 「患者様」への違和感
 他業界からも学ぼう
 「人」が重要
 「標準化」それとも「エンパワーメント」なのか?

1章 患者満足(PS)
 消費者はなぜお金を使うのか?
 顧客は何に満足するのか?
 満足をどう測るか?
 なぜその時々で選好が変わるのか?
 「内在的手がかり」と「外在的手がかり」
 価値観の多様化
 格差・平等と今日的価値観
 顧客満足度に対する考え方
 質と顧客満足
 患者満足度とは?
 患者満足度と顧客満足度:求めるものの違い
 患者満足度調査の研究
 満足度調査あれこれ
 真の患者満足

2章 医療の質
 ドナベディアンの提案
 医療の質の問題点
 質とは何か?
 経営学における質の視点と医療の質
 医療とコスト
 経済の低迷と医療受診
 「費用を安くはできないが…」
 臨床指標
 医の倫理・患者の権利

3章 医療の質と患者満足(PS)
 医療サービスの特徴
 患者満足度と医療者
 医療からのアプローチと経営学からのアプローチ
 品質の分類
 サービスとしての視点
 質を構成する要素
 医療や教育の役割
 経験価値と医療のコモディティ化
 患者満足度が治療成績を左右する
 サービスと標準化
 サービスエンカウンター
 スイッチング・コスト
 顧客が何を考えているのか?
 医療の質と患者満足度

4章 患者満足(PS)度追求のわな
 医療と効率化
 間違いだらけの「患者満足度への認識」
 ある事例
 基本戦略は正しいのだろうか?
 きれいにするが,豪華にはしない
 人的資源管理
 リーダーシップの重要性
 従業員満足の考え方
 患者満足度追求のわな

5章 従業員満足(ES)なくして顧客満足(CS)なし
 医療はプロフェッショナル・サービス
 応召義務のつらさ
 医療における代替制の問題
 成果主義の導入
 賃金制度の変化
 賃金は何によって決めるべきか?
 職能給の光と影
 成果主義の本質
 従業員満足なくして顧客満足はない
 エンパワーメント
 従業員に聞けますか?
 モチベーション
 2種類のモチベーション
 モチベーションを高める働き
 コンピテンシーとは何か?
 コンピテンシーの起こり
 役割葛藤
 従業員満足度がカギ
 マネジメントの変更
 ある調査から

6章 従業員満足(ES)向上による離職の減少
 組織論の視点から医療崩壊を見る
 マグネットアワードの誕生
 マグネットアワード
 マグネットアワードへの申請基準
 承認の重要性
 コミュニケーションとアサーティブネス
 人材育成
 盛田昭夫と本田宗一郎

7章 組織論による従業員満足(ES)と顧客満足(CS)の改善方法
 組織文化を変える
 組織論とは何か?
 専門家の増加
 プロフェッションとその規範
 専門家としての規範:ヒポクラテスの誓い
 ナイチンゲールの精神
 医師免許の意味
 医師の義務
 医師と弁護士
 専門職のコモディティ化
 労働者としての医師
 組織についての考え方
 組織学習

8章 質をよくする手法:満足度を上げる
 1.リスクマネジメント
  医療におけるリスクとリスクマネジメント
  個人のリスクと組織のリスク
  臨床医の疲労と患者の安全
  コンプライアンスとは何か?
  医療分野のコンプライアンス
  医療におけるコンプライアンス経営
  病院のガバナンス不在もリスク
  リスクマネジメントの具体論
 2.ISO(International Organization for Standardization)
  第三者認証
  ISO
  品質マネジメントシステム
  ISOと医療機能評価
 3.バランスト・スコアカード(BSC)
  バランスト・スコアカードの起こり
  バランスト・スコアカードのポイント
  取り組み例
  バランスト・スコアカードの魅力
  重要成功要因(KPI)と成果指標
  顧客満足度とバランスト・スコアカード
  従業員満足とバランスト・スコアカード
 4.リーン経営
  トヨタ生産方式
  トヨタでいうムダ
  リーン生産方式
  リーンシグマ
  リーン生産性方式とサービス
  リーン生産方式が目指すもの
 5.シックスシグマ
  シックスシグマの起こり
  シックスシグマ導入での変化
  6σの意味
  品質向上にはコストがかかるのか?
  シックスシグマと医療経営
  シックスシグマの改善手法?DMAIC?
  ブラックベルト
 6.TJC(The Joint Commission)
  アメリカにおける第三者認証
  TJC
  TJCの認証方法
  インターアクティブな仕組み
  JCI(Joint Commission International)
  医療を変えよう
  世界戦略と日本
  医療安全へのアプローチ
  医療安全文化の構築
 7.ホスピタリティ
  ホスピタリティとは?
  ホスピタリティの語源と今
  サービスとホスピタリティ

9章 経営品質
 すべてを包含する経営品質
 マルコム・ボルドリッジ賞(MB賞)の起こり
 経営品質の考え方
 無形資産に対する考え方
 社会との調和
 経営品質の重視する考え方
 経営品質と医療業界のギャップ
 医療経営への示唆
 医療MB賞
 日本での医療版MB賞のチャレンジ
 Quality Class(認証)
 認証の第三者性の担保
 認証委員会
 病院評価と経営品質のフレームワーク