臨床漢方小児科学
1版
鈴鹿医療科学大学東洋医学研究所 所長 西村 甲 著
定価
4,180円(本体 3,800円 +税10%)
- B5判 255頁
- 2016年4月 発行
- ISBN 978-4-525-47481-2
迷わず選べる小児の漢方方剤!
漢方治療の実際を“小児”に特化して解説した実践書兼参考書.漢方の知識がなくても,著者オリジナルのフローチャートにより,患児の様子や症状,所見などから適切な漢方薬を選択することができる実践的な面と,小児の解剖学的・生理学的特徴を踏まえた,漢方医学の理論が学べる参考書の面も持ち合わせた.日常診療で役立つ小児科医必携の一冊.
- 序文
- 目次
序文
推薦のことば
小児の診療に携わるすべての方々にとって,漢方治療を身近なものにすることのできる実践的な教科書です.本書の出版にあたり,著者である西村 甲先生に心からの賛辞と敬意を表したく存じます.
現在,全国多くの病院で漢方外来が開設されており,小児科領域でも広い分野で漢方薬が使用されてきています.しかしながら,漢方医学独特の用語は理解しにくく,日常診療での漢方処方に躊躇しがちであることも事実です.
本書は,小児漢方医学の初学者から中級者までの幅広い医療従事者を念頭において,漢方独特の知識をわかりやすく修得でき,漢方治療に応用ができるように工夫されています.まず,第一部では,日常診療でよく見かける疾患・症候に対する漢方処方を,色刷りのフローチャートで明示してあります.西洋医学による正確な診断に基づき,経過病日などによって使い分けのできる処方が可能になっています.中級者向けには,個々の疾患・症候におけるアドバンスコースとして,漢方医学的な思考基盤が記載され,論理思考が深まるよう配慮されています.第二部では,漢方医学の一般的基本知識を基礎として,発達と発育を特徴とする小児の特殊性に結び付ける論理展開がなされています.漢方医学では,西洋医学と同じ用語である,例えば臓器名称が実体臓器を意味せず,幅広い生命活動の概念規定として表現されることも特徴の一つですが,そのような用語の特殊性についても詳細な記述がなされています.また,図表が多く使用され,論理展開の理解が容易になるような配慮があります.第三部では,漢方方剤の構成成分や適応病態が漢方医学的視点から詳述され,同時に第一部のフローチャートで使用される方剤との関連付けもなされています.全体を通じて,小児漢方医学初学者の知識獲得から中級者の診療水準の向上と理論整理まで,豊富でかつわかりやすい記述が特徴となっています.
本書は,小児の特性を考慮に入れた論理的小児漢方治療指針を確立すべく,西村先生が著した渾身の教科書です.そして,多くの臨床経験に基づいた実践的な小児漢方医学書としても,きわめて利用価値の高いものと考えます.小児医療に関わる多くの先生方が,日常業務の現場で本書を手元に置きながら診療に当たられることを期待します.
2016年3月吉日
川崎市立川崎病院 理事/慶應義塾大学医学部 客員教授 番場正博
序
小児は成人のミニチュアではないとして,その診療における特殊性が表現されている.漢方医学の世界においても,「寧治十男子.莫治一婦人.寧治十婦人.莫治一小兒」という諺がある.すなわち,成人男性を10人治すことができても女性1人すら治すことはできない,女性を10人治すことができても小児1人すら治すことはできない,としている.小児に特化した医学書の必要性は明白であるが,漢方医学においてはその出版が極めて限定的である.
今回,小児の漢方医学に関して上梓する機会を得た.小児の診療に携わる医師で,漢方医学に関しては初学者を含めて対象とし,漢方医学全般,さらには小児の特性を漢方医学の領域から十分理解し,漢方治療を実践できることを発刊の目的とした.このため,初学者であっても治療において何らかの漢方方剤を選択できること,無効あるいは効果不十分な場合には新たな方剤に変更できることが最重要課題となった.
このような内容を盛り込むために,本書の構成を以下のとおりとした.
第一部「フローチャートによる疾患・症候別漢方処方」:疾患別のフローチャートを用いて,各種症候に対する漢方方剤を提示した.ここには漢方医学用語を記載せず,現代医学的な病状把握から漢方方剤を選択できるようにした.なお,各疾患にはアドバンスコースを項立てして,中級者以上には漢方医学的病態から方剤選択の意義が理解できるよう配慮した.
第二部「小児における漢方医学の基本」:漢方医学の理論については,まず成人を対象とした基本的内容を提示した.その知識を土台として,小児の解剖学的・生理学的特徴を踏まえた漢方医学的理解に結び付けられるようにした.
第三部「漢方方剤における重要知識の整理」:現在,保険適用をもつ漢方方剤すべてにおいて,出典,方剤構成,原典,方意,適応病態,有効疾患,臨床所見を記した.基本事項全般については拙著『漢方処方と方意』で理解することとし,本項はアドバンスコースとしての位置づけとした.また,第一部のフローチャートと第三部の処方解説において登場する漢方方剤を関連付けることができるようにした.
以上の順序に従い三部構成とし,小児科臨床漢方の実践に適うものとした.
このような特徴をもつ本書が小児科漢方における学問体系化を成した発展の礎となることを期待して,書名を『臨床漢方小児科学』とした.西洋医学的なアプローチによる研究も重要であるが,漢方医学の基本理論をもとにして小児の成長,発達といった小児科学の基本的事項を解説できること,さらには,小児科特性を考慮した論理的漢方治療指針を確立することが必要である.
本書の出版においては,著者の最も尊敬する小児科医である川崎市立川崎病院理事 番場正博先生より推薦文をいただいた.身に余る光栄である.また,一目瞭然としたフローチャート作成,適切な内容構成等は,南山堂 石井裕之氏の卓越した編集能力によるものである.ここに感謝の意を表して,序の結びとする.
2016年3月吉日
西村 甲
小児の診療に携わるすべての方々にとって,漢方治療を身近なものにすることのできる実践的な教科書です.本書の出版にあたり,著者である西村 甲先生に心からの賛辞と敬意を表したく存じます.
現在,全国多くの病院で漢方外来が開設されており,小児科領域でも広い分野で漢方薬が使用されてきています.しかしながら,漢方医学独特の用語は理解しにくく,日常診療での漢方処方に躊躇しがちであることも事実です.
本書は,小児漢方医学の初学者から中級者までの幅広い医療従事者を念頭において,漢方独特の知識をわかりやすく修得でき,漢方治療に応用ができるように工夫されています.まず,第一部では,日常診療でよく見かける疾患・症候に対する漢方処方を,色刷りのフローチャートで明示してあります.西洋医学による正確な診断に基づき,経過病日などによって使い分けのできる処方が可能になっています.中級者向けには,個々の疾患・症候におけるアドバンスコースとして,漢方医学的な思考基盤が記載され,論理思考が深まるよう配慮されています.第二部では,漢方医学の一般的基本知識を基礎として,発達と発育を特徴とする小児の特殊性に結び付ける論理展開がなされています.漢方医学では,西洋医学と同じ用語である,例えば臓器名称が実体臓器を意味せず,幅広い生命活動の概念規定として表現されることも特徴の一つですが,そのような用語の特殊性についても詳細な記述がなされています.また,図表が多く使用され,論理展開の理解が容易になるような配慮があります.第三部では,漢方方剤の構成成分や適応病態が漢方医学的視点から詳述され,同時に第一部のフローチャートで使用される方剤との関連付けもなされています.全体を通じて,小児漢方医学初学者の知識獲得から中級者の診療水準の向上と理論整理まで,豊富でかつわかりやすい記述が特徴となっています.
本書は,小児の特性を考慮に入れた論理的小児漢方治療指針を確立すべく,西村先生が著した渾身の教科書です.そして,多くの臨床経験に基づいた実践的な小児漢方医学書としても,きわめて利用価値の高いものと考えます.小児医療に関わる多くの先生方が,日常業務の現場で本書を手元に置きながら診療に当たられることを期待します.
2016年3月吉日
川崎市立川崎病院 理事/慶應義塾大学医学部 客員教授 番場正博
序
小児は成人のミニチュアではないとして,その診療における特殊性が表現されている.漢方医学の世界においても,「寧治十男子.莫治一婦人.寧治十婦人.莫治一小兒」という諺がある.すなわち,成人男性を10人治すことができても女性1人すら治すことはできない,女性を10人治すことができても小児1人すら治すことはできない,としている.小児に特化した医学書の必要性は明白であるが,漢方医学においてはその出版が極めて限定的である.
今回,小児の漢方医学に関して上梓する機会を得た.小児の診療に携わる医師で,漢方医学に関しては初学者を含めて対象とし,漢方医学全般,さらには小児の特性を漢方医学の領域から十分理解し,漢方治療を実践できることを発刊の目的とした.このため,初学者であっても治療において何らかの漢方方剤を選択できること,無効あるいは効果不十分な場合には新たな方剤に変更できることが最重要課題となった.
このような内容を盛り込むために,本書の構成を以下のとおりとした.
第一部「フローチャートによる疾患・症候別漢方処方」:疾患別のフローチャートを用いて,各種症候に対する漢方方剤を提示した.ここには漢方医学用語を記載せず,現代医学的な病状把握から漢方方剤を選択できるようにした.なお,各疾患にはアドバンスコースを項立てして,中級者以上には漢方医学的病態から方剤選択の意義が理解できるよう配慮した.
第二部「小児における漢方医学の基本」:漢方医学の理論については,まず成人を対象とした基本的内容を提示した.その知識を土台として,小児の解剖学的・生理学的特徴を踏まえた漢方医学的理解に結び付けられるようにした.
第三部「漢方方剤における重要知識の整理」:現在,保険適用をもつ漢方方剤すべてにおいて,出典,方剤構成,原典,方意,適応病態,有効疾患,臨床所見を記した.基本事項全般については拙著『漢方処方と方意』で理解することとし,本項はアドバンスコースとしての位置づけとした.また,第一部のフローチャートと第三部の処方解説において登場する漢方方剤を関連付けることができるようにした.
以上の順序に従い三部構成とし,小児科臨床漢方の実践に適うものとした.
このような特徴をもつ本書が小児科漢方における学問体系化を成した発展の礎となることを期待して,書名を『臨床漢方小児科学』とした.西洋医学的なアプローチによる研究も重要であるが,漢方医学の基本理論をもとにして小児の成長,発達といった小児科学の基本的事項を解説できること,さらには,小児科特性を考慮した論理的漢方治療指針を確立することが必要である.
本書の出版においては,著者の最も尊敬する小児科医である川崎市立川崎病院理事 番場正博先生より推薦文をいただいた.身に余る光栄である.また,一目瞭然としたフローチャート作成,適切な内容構成等は,南山堂 石井裕之氏の卓越した編集能力によるものである.ここに感謝の意を表して,序の結びとする.
2016年3月吉日
西村 甲
目次
第一部 フローチャートによる疾患・症候別漢方処方
1.感冒,気管支炎,肺炎
2.気管支喘息
3.中耳炎,副鼻腔炎
4.発疹性感染症
5.起立性調節障害
6.心不全,不整脈
7.貧血,易出血
8.川崎病
9.肝 炎
10.ネフローゼ症候群,慢性腎炎
11.夜尿症
12.思春期早発症
13.糖尿病
14.肥満症
15.胃腸炎
16.過敏性腸症候群
17.機能性便秘
18.虫垂炎
19.鼠径ヘルニア
20.痔 瘻
21.脱 肛
22.悪性腫瘍
23.周術期
24.癤,癰
25.アトピー性皮膚炎
26.尋常性疣贅,伝染性軟属腫
27.アレルギー性鼻炎
28.若年性関節リウマチ
29.機能性頭痛
30.てんかん
31.チック
32.睡眠障害
第二部 小児における漢方医学の基本
Ⅰ 小児漢方を理解するために
1.緒 論
2.古典に立脚した原論的理解
3.現代西洋医学を結合させた折衷的理解
Ⅱ 漢方医学概説
1.漢方医学の特徴
2.漢方基礎理論
3.漢方生理学
4.漢方病態病理学
5.漢方病因学
6.漢方診断学
7.漢方治療学総論
Ⅲ 漢方小児科学
1.小児の一般特徴
2.漢方医学古典における小児期の認識
3.小児漢方発育発達学
4.小児漢方生理学
5.漢方発生学
6.小児漢方病態学
7.小児漢方病因学
8.小児漢方診断学
9.小児漢方治療学総論
Ⅳ 漢方医学の歴史
1.中国伝統医学史
2.漢方医学史
3.小児科分野における中国伝統医学史・漢方医学史
第三部 漢方方剤における重要知識の整理
Ⅰ 漢方方剤概説(148種エキス剤)
付録① 基本生薬による漢方方剤分類
付録② 表裏・寒熱に基づく漢方方剤分類
1.感冒,気管支炎,肺炎
2.気管支喘息
3.中耳炎,副鼻腔炎
4.発疹性感染症
5.起立性調節障害
6.心不全,不整脈
7.貧血,易出血
8.川崎病
9.肝 炎
10.ネフローゼ症候群,慢性腎炎
11.夜尿症
12.思春期早発症
13.糖尿病
14.肥満症
15.胃腸炎
16.過敏性腸症候群
17.機能性便秘
18.虫垂炎
19.鼠径ヘルニア
20.痔 瘻
21.脱 肛
22.悪性腫瘍
23.周術期
24.癤,癰
25.アトピー性皮膚炎
26.尋常性疣贅,伝染性軟属腫
27.アレルギー性鼻炎
28.若年性関節リウマチ
29.機能性頭痛
30.てんかん
31.チック
32.睡眠障害
第二部 小児における漢方医学の基本
Ⅰ 小児漢方を理解するために
1.緒 論
2.古典に立脚した原論的理解
3.現代西洋医学を結合させた折衷的理解
Ⅱ 漢方医学概説
1.漢方医学の特徴
2.漢方基礎理論
3.漢方生理学
4.漢方病態病理学
5.漢方病因学
6.漢方診断学
7.漢方治療学総論
Ⅲ 漢方小児科学
1.小児の一般特徴
2.漢方医学古典における小児期の認識
3.小児漢方発育発達学
4.小児漢方生理学
5.漢方発生学
6.小児漢方病態学
7.小児漢方病因学
8.小児漢方診断学
9.小児漢方治療学総論
Ⅳ 漢方医学の歴史
1.中国伝統医学史
2.漢方医学史
3.小児科分野における中国伝統医学史・漢方医学史
第三部 漢方方剤における重要知識の整理
Ⅰ 漢方方剤概説(148種エキス剤)
付録① 基本生薬による漢方方剤分類
付録② 表裏・寒熱に基づく漢方方剤分類