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カテゴリー: 東洋医学  |  臨床薬学

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ひと目でわかる方剤学

1版

森クリニック 院長 森 由雄 著

定価

3,520(本体 3,200円 +税10%)


  • A5判  265頁
  • 2014年7月 発行
  • ISBN 978-4-525-47491-1

プラクティカルに活用できるように漢方方剤を分類!
証がひと目で理解できるイラストと漢方方剤のそれぞれの関係を理解し使い分けができる関連図を収載!
今までになかった漢方方剤の解説書!

  • 序文
  • 目次
  • 書評 1
  • 書評 2
  • 書評 3
序文
 漢方の魅力に取りつかれて,循環器内科医から漢方医に「転身」した.独学で漢方を勉強した時期から師匠に付いて修行した時代に,さまざまな漢方の書籍を学んだ.「どのように診断し,どのように方剤を選択し,どのように治療するか」ということが,臨床医としては常に頭を悩ませてきた事柄である.内科医として患者を診療する時,ハリソン内科書を読み,常に病態生理を考え治療に臨んできた.漢方診療を行う時も,このようなスタイルを維持し,漢方的な病態生理を考慮して診断を下し治療するよう心がけてきた.ここでの漢方的病態生理とは,傷寒論の六病位の理論であり,金匱要略や気血水の理論などである.漢方の講演や講義において,漢方治療や方剤の理解のために,可能な限りこのような漢方的病態生理に基づいた説明をしてきた.本書は,講演原稿や自身の勉強用にまとめたノートを基にして執筆した.多くの方剤学の名著がある中で,「屋上屋を架す」ことになるかもしれないが,「方剤の意味」や「方剤のウエイト」を理解していただくように,漢方的病態生理を意識して著したものである.「方剤のウエイト」とは,方剤の中には,たいへん重要な基本方剤と基本方剤から派生した重要性の低い方剤があり,方剤の重要性が異なるわけである.本書では,この処方の「重み」を意識して記載した.また,図は,一見して漢方的病態生理や「方剤の意味」が理解できるように心がけた.すでにある多くの方剤学の名著に並ぶことは到底できないが,今までと少し異なる切り口で方剤を解説しようと試みたものである.本書が漢方初学者の方のお役に立てば望外の幸せである.
 なお,今日まで漢方の道を導いて下さいました,山田光胤先生,寺師睦宗先生,丁 宗鐵先生に深く感謝申し上げます.

2014年5月
森 由雄
目次
総 論
1. 方剤の分類
2. 治療法について
3. 『傷寒論』六病位
4. 気,血,水
5. 君臣佐使
6. 剤形

各 論
1. 表 剤
・麻黄湯
・葛根湯
・小青竜湯
・桂枝湯
・麻黄附子細辛湯
・麻杏甘石湯
・大青竜湯
・桂麻各半湯
・香蘇散
・葛根湯加川芎辛夷
・桂枝加葛根湯
・参蘇飲
・升麻葛根湯
・川芎茶調散
・五虎湯

2. 和 剤
・小柴胡湯
・柴胡桂枝湯
・柴胡桂枝乾姜湯
・大柴胡湯
・半夏瀉心湯
・黄連湯
・芍薬甘草湯
・小柴胡湯加桔梗石膏
・柴朴湯
・柴陥湯
・柴苓湯
・竹筎温胆湯
・神秘湯

3. 下 剤
・大黄甘草湯
・調胃承気湯
・大承気湯
・麻子仁丸
・桂枝加芍薬大黄湯
・潤腸湯
・防風通聖散

4. 涼 剤
・黄連解毒湯
・辛夷清肺湯
・桔梗湯
・黄芩湯
・白虎加人参湯
・猪苓湯
・茵蔯蒿湯
・十味敗毒湯
・清上防風湯
・消風散
・三黄瀉心湯
・温清飲
・清肺湯
・荊芥連翹湯
・清心蓮子飲
・五淋散
・猪苓湯合四物湯
・三物黄芩湯
・竜胆瀉肝湯
・柴胡清肝湯
・治頭瘡一方

5. 温 剤
・桂枝加芍薬湯
・小建中湯
・大建中湯
・人参湯
・当帰四逆加呉茱萸生姜湯
・呉茱萸湯
・八味地黄丸
・真武湯
・当帰建中湯
・黄耆建中湯
・当帰湯
・安中散
・温経湯
・五積散
・桂枝人参湯
・牛車腎気丸

6. 気 剤
補気剤
・四君子湯
・六君子湯
・補中益気湯
・清暑益気湯
・啓脾湯
理気剤
・半夏厚朴湯
・四逆散
・抑肝散
・加味逍遙散
・抑肝散加陳皮半夏
・女神散
・釣藤散
安神剤
・酸棗仁湯
・甘麦大棗湯
・桂枝加竜骨牡蛎湯
・柴胡加竜骨牡蛎湯
気血双補剤
・炙甘草湯
・十全大補湯
・人参養栄湯
・帰脾湯
・加味帰脾湯

7. 血 剤
補血剤
・芎帰膠艾湯
・四物湯
・当帰飲子
・七物降下湯
駆瘀血剤
・当帰芍薬散
・桃核承気湯
・桂枝茯苓丸
・治打撲一方
・通導散
・疎経活血湯

8. 水 剤
治痰飲剤
・五苓散
・木防已湯
・越婢加朮湯
・桂枝加朮附湯
・苓姜朮甘湯
・苓桂朮甘湯
・小半夏加茯苓湯
・二陳湯
・半夏白朮天麻湯
・茵蔯五苓散
・平胃散
・茯苓飲
・胃苓湯
・苓甘姜味辛夏仁湯
治関節剤
・桂枝芍薬知母湯
・薏苡仁湯
・防已黄耆湯
・二朮湯
・麻杏薏甘湯
・大防風湯
滋陰剤
・六味丸
・麦門冬湯
・滋陰降火湯
・滋陰至宝湯

9. 皮膚外科剤
・大黄牡丹皮湯
・排膿散及湯
・乙字湯
・立効散
・桂枝加黄耆湯

用語解説
参考文献
書評 1
丁 宗鐵 先生 (日本薬科大学 学長)

 この度,私が尊敬する漢方医学者の一人である森先生が,新しい方剤学の本を書き上げました.この本には医療用漢方製剤のほとんどが網羅されておりますが,注目すべき点は収載された方剤の数ではありません.

 漢方を学び始めた人の多くは,初め手すぐに「ある壁」にぶつかります.それは長年漢方の研鑽を積んできた先輩方からの「まずは古典をしっかり学べ」という教えです.
漢方を深く理解するために,古典を学ぶことの重要性は言うまでもありません.
 しかし,特に漢方が専門ではないが臨床家にとって「古典を学ぶ」ことが大きな負荷になり,それをきっかけに漢方の道をあきらめてしまう人も少なくありません.
 右も左も分からない初学者に無理な勉強をさせることが,先達の役割なのでしょうか.古典の重要なエッセンスを一冊にまとめ,そこから学び始めれば古典を全て読まなくても迷わずに漢方のあらましが理解できる.
 そのような「漢方のガイドブック」を作ることこそ,長年古典を学び,その真髄を深く理解している先達にしかできない本当の仕事であり,また義務でもあると私は思うのです.

 この度,森 先生が書かれた本は,まさに「漢方方剤のガイドブック」と呼ぶにふさわしい,初めて漢方を学ぶ人が方剤の特徴や医療用漢方の位置づけをしっかり理解できる一冊です.特に素晴らしいのは総論でしょう.
 漢方の基本概念や特徴など,最も大事なエッセンスが非常に簡潔に分かりやすく説明され,全く無駄のないその内容に私は敬意を表さずにはいられません.

 現在,日本の医師の約80%以上が医療用漢方製剤を処方する時代になりましたが,医療用漢方製剤が選ばれたのかという経緯は忘れ去られつつあります.
 実はこれらの処方のほとんどは,大塚敬節先生をはじめとした昭和の漢方の大家たちの常用処方の中から,特に使われた頻度の高い処方を選んだだけのものなのです.
 まず昭和の漢方医や漢方薬局の薬剤師の頻処方が210処方集められ,その中からさらに147処方の医療用漢方製剤が選ばれましたが,頻用処方をランダムに集めたために方剤の系統性などは全く考慮されていません.

 そのため,方剤学の観点からみると,医療用漢方製剤には軸となる幹のような処方と,そこから派生した枝葉のような処方が並列的に扱われているという,おかしなことになっているのです.
 この本では,「幹の処方」と「枝葉の処方」が,系統的にきちんと分類されています.
 また,方剤の説明には分かりやすいイラストも多数使われていますが,一見ランダムにちりばめられているかのようなイラストも「幹の処方」にだけ入れられており,枝葉の処方にはイラストがありません.
 つまり,イラストの描かれた処方が,よりしっかり勉強できるように工夫されているのです.

 この本で学んだ人が臨床で漢方を扱える領域に入り,一人でも多くの患者さんに漢方薬を処方して治療効果を上げていただきたいという,どこまでも初学者の立場に立った森先生の熱意が伝わってくる一冊です.
書評 2
伊藤 隆 先生 (東京女子医科大学 東洋医学研究所 教授)

 漢方初学者の方々からこんな悩みをよく聞く.「漢方薬のエビデンスが増えてきたけれど,やはり作用機序がよく分からないので,どう使ってよいか分からない.」「エキス剤メーカーのハンドブックだけでなく,漢方医学の入門書も読んでみたが,どうも初学のレベルから先へ進むことができない.」そんな医師・薬剤師に,本書を推薦したい.

 漢方の方剤学はイメージをつかみにくい.それは学問体系が西洋医学を基本にしていないので,どうしても曖昧に見えるからである.この難題に古典に対して常に真摯な森 由雄 氏が立ち向かった.

 本を開いてびっくり!漫画の絵が多い!その親しみやすさに,素人を対象にした書物と勘違いしそうである.専門医の立場からよく見ると,この漫画が各々の方剤の証のイメージを的確に表現していることにまた驚かされる.著者とイラストレーターとの間では,かなり密なコミュニケーションが行われたのであろう.似通った証同士のニュアンスの違いまで,かつてなく絶妙に表現されているのである.

 内容をのぞいてみよう.「表剤」「和剤」「下剤」「涼剤」「温剤」「気剤」「血剤」「水剤」「皮膚外科剤」と,全体の構成は,誠に教科書的である.各章ごとに総論的な解説があり,方剤の鑑別はチャート図で明快に示されている.各々の方剤ごとには,方意,構成,分析(薬能),薬方の由来,症状,古典,口訣,解説,そしてメーカーごとの適応病名まで,簡潔に,手際よく整理されている.診療ハンドブックとして常備できるよう,詳しすぎず,しかも要点は漏らささぬよう配慮されている.

 この一冊を熟読玩味すれば,漢方初学者だけでなく,一般の素人の方でも漢方専門医レベルに達しうる仕掛けがあちらこちらに張り巡らされている.誠に脱帽の出来である.私も診察室に常備させていただくことにした.
書評 3
林 明宗 先生 (神奈川県立がんセンター 漢方サポートセンター 東洋医学科 部長)

 森 由雄 先生は,元来は小児科・内科医師であったが,現代医学の抱える問題に苦慮されていた頃,偶然大塚敬節 先生の『漢方診療三十年』に出合い,漢方に魅了されたとのことである.独学では満足せず,寺師睦宗 先生,山田光胤 先生,丁 宗鐵 先生らの薫陶を受けて今日に至っている.

 漢方学習書は近年多数出版されているが,勉強の過程で方剤学の学習は避けては通れない.しかし,膨大な数の方剤を習得すべきプロセスで頓挫することが少なくない.そのため,古来より多くの方剤学のマニュアル本が出版されている.本書もその一つである.

 評者は「ひと目でわかる云々」という安易な学習を示唆するような表題は本来好むところではない.それは,いにしえのユークリッドの名言「幾何学に王道なし」を是とするからである.
 しかし,簡単に方剤学を習得できるような王道(近道)こそないものの,あえて遠回りをせずにすむ書物を選択する道は残される.
本書には類書にない特徴がある:①初学者向けの簡単な漢方総論と用語説明(巻末),②著者の臨床経験に依拠した方剤分類,③簡潔なレイアウトと図示,④原典の条文・詳細な口訣とそれらの口語訳の併記(これが最も特徴的である).これらだけでも,関連資料を収集する時間と労力から解放され一読する価値が生まれる.

 最後に,いかなる入門書でも簡単であるということはない.本書も森 先生の豊富な臨床経験の裏打ちがあってこそ活用できるのであって,行間を埋めた著者の暗黙知(言葉や文章では表現しにくいノウハウなど)を理解するために臨床現場で大いに活用していただきたい.
 そして,さらにもう一段上の学習レベルにつながれば著者の望外の幸せとなろう.
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