カテゴリー: 臨床看護学 | 総合診療医学/プライマリ・ケア医学
日本プライマリ・ケア連合学会
プライマリ・ケア看護学 基礎編
1版
日本プライマリ・ケア連合学会 編集
定価
5,500円(本体 5,000円 +税10%)
- B5判 494頁
- 2016年7月 発行
- ISBN 978-4-525-50031-3
日本初の専門テキスト!
プライマリ・ケアにおいて,診療所,中小病院,訪問看護ステーション,施設などで働く看護師の専門性が欠かせない時代になっています.本書では,そんな「地域包括ケアシステム」の担い手として期待される看護職のために,プライマリ・ケアの現場で必要な基本的知識や技術を厳選して網羅.プライマリ・ケアを担う看護師必携のテキストです!
- 序文
- 目次
序文
プライマリ・ケアを提供する家庭医の視点から
国によって,プライマリ・ケアの提供体制は異なっている.わが国ではフリーアクセスと国民皆保険制度によって,国民が医療機関を受診するアクセスのよさは世界一であるが,誰がプライマリ・ケアを担うのかという議論や制度化という意味では遅れをとっている.
健康的な食習慣・生活習慣のおかげで,日本人の平均寿命は世界で首位を誇っている.しかし,食習慣の欧米化,運動量低下,ストレスの増加といった問題のため,現役世代が今後も健康であり続ける保証はないと考えている.
2025年問題といわれる団塊の世代が後期高齢者になる時期に,日本の医療・介護システムはひずみをきたすといわれ,ここにきて「地域包括ケアシステム」をキーワードに,いよいよ日本でもプライマリ・ケアの主たる担当者を育成すべきという議論が進んでいる.2017年度から開始される予定の「総合診療専門医」育成制度は,国をあげて日本のプライマリ・ケアを担当する医師の養成に取り組むという大きな転換点になると思われる.
今後の日本のプライマリ・ケアシステムは,どういったチームで地域の健康を維持し,高齢者だけでなく,0歳から100歳までの幅広い年齢層に「地域包括ケアシステム」を提供するかを考える時期に至っている.医師だけでなく,看護師,薬剤師,リハビリテーション専門職,介護職,ケアマネジャー,管理栄養士,心理職,行政担当者などが一丸となって,地域ごとのプライマリ・ケアチームを形成するうえで,看護師に期待される役割は大きい.
このような流れを受けて,日本プライマリ・ケア連合学会内部でプライマリ・ケア看護師養成プロジェクトが立ち上がり,海外でのプライマリ・ケア看護の現状視察や日本国内の研究結果をもとに,数年間の議論を経て,本書の構成が練り上げられた.執筆陣は,看護系大学の教員と臨床現場で働く看護師,日本でプライマリ・ケア看護の教育を受けた看護師などから構成されている.本書は,これからの日本のプライマリ・ケアを支えるすべての看護師(診療所,中小病院,大病院総合診療部門,訪問看護,施設看護など)にとって必読書になると自負している.
なお,この場を借りて,本書を執筆・編集するに当たって,内容の確認など,多大な貢献をしていただいた北西史直氏(トータルファミリーケア北西医院),野嶋佐由美氏(高知県立大学看護学部),梅前ちひろ氏(北海道勤医協中央病院)に感謝の意を表したい.
本書を日本中のプライマリ・ケアにかかわる看護師に読んでいただくことで,日本のプライマリ・ケアの夜明けを迎えられることを期待している.
2016年5月
松下 明
プライマリ・ケア看護師の視点から
日本は世界でもまれな,フリーアクセス,自由開業制という医療制度を有している.したがって,国民は希望するときに,希望する医療機関にかかることができる.この利便性はすばらしいものである一方,患者と医療者双方に過剰なニーズと競争を生み出し,患者は時に過剰な医療を受け,医療者は疲弊している.とくに外来では,短時間にたくさんの患者を診療しなくてはならず,十分なアセスメントや療養指導ができずに,患者は結果として知識不足のまま,不適切・不十分な療養行動をとり,悪化を繰り返すことになる.予防においても同様で,医療者側は患者の受診を待つしかなく,科学的エビデンスに基づいて,予防的・戦略的に住民にかかわることができない.その結果として,疾病発症後の診療に対して,人的エネルギーも医療費も使用することとなる.
世界はプライマリ・ケアを医療制度の基盤に置いている.あのアメリカでさえも,である.日本でもそろそろ,専門医や専門特化した看護師がもてはやされるのではなく,地味かもしれないが,総合的に地域・家族・患者をケアするジェネラリストである専門家が脚光を浴び,育っていかなくてはいけないのではないだろうか.そうしないと,高齢化が進み,人口が減少する社会の変化を乗り越えることはできないと考える.
総合的・包括的に地域,家族,患者をアセスメント・ケアする.これは,看護教育のなかで重点的に行われ,看護師にとっては得意分野だ.たくさんのアセスメントツールや方法論も開発されている.だから,受けてきた看護教育を思い出し,自分たちの役割をしっかりと捉え直し,プライマリ・ケアに視点を移すとよい.培ってきた看護の英知と技術を最も活かせる場は地域にある.
本書は,日本で初めて編纂されたプライマリ・ケア看護師のためのテキストであり,プライマリ・ケア看護師がカバーする範囲や担うべき役割・機能を提示し,必要な知識と技術を網羅している.ぜひとも,多くの看護師に自分たちの使命と役割を思い出し,地域の人々を支える役割を担ってほしいと考えている.
2016年5月
森山美知子
国によって,プライマリ・ケアの提供体制は異なっている.わが国ではフリーアクセスと国民皆保険制度によって,国民が医療機関を受診するアクセスのよさは世界一であるが,誰がプライマリ・ケアを担うのかという議論や制度化という意味では遅れをとっている.
健康的な食習慣・生活習慣のおかげで,日本人の平均寿命は世界で首位を誇っている.しかし,食習慣の欧米化,運動量低下,ストレスの増加といった問題のため,現役世代が今後も健康であり続ける保証はないと考えている.
2025年問題といわれる団塊の世代が後期高齢者になる時期に,日本の医療・介護システムはひずみをきたすといわれ,ここにきて「地域包括ケアシステム」をキーワードに,いよいよ日本でもプライマリ・ケアの主たる担当者を育成すべきという議論が進んでいる.2017年度から開始される予定の「総合診療専門医」育成制度は,国をあげて日本のプライマリ・ケアを担当する医師の養成に取り組むという大きな転換点になると思われる.
今後の日本のプライマリ・ケアシステムは,どういったチームで地域の健康を維持し,高齢者だけでなく,0歳から100歳までの幅広い年齢層に「地域包括ケアシステム」を提供するかを考える時期に至っている.医師だけでなく,看護師,薬剤師,リハビリテーション専門職,介護職,ケアマネジャー,管理栄養士,心理職,行政担当者などが一丸となって,地域ごとのプライマリ・ケアチームを形成するうえで,看護師に期待される役割は大きい.
このような流れを受けて,日本プライマリ・ケア連合学会内部でプライマリ・ケア看護師養成プロジェクトが立ち上がり,海外でのプライマリ・ケア看護の現状視察や日本国内の研究結果をもとに,数年間の議論を経て,本書の構成が練り上げられた.執筆陣は,看護系大学の教員と臨床現場で働く看護師,日本でプライマリ・ケア看護の教育を受けた看護師などから構成されている.本書は,これからの日本のプライマリ・ケアを支えるすべての看護師(診療所,中小病院,大病院総合診療部門,訪問看護,施設看護など)にとって必読書になると自負している.
なお,この場を借りて,本書を執筆・編集するに当たって,内容の確認など,多大な貢献をしていただいた北西史直氏(トータルファミリーケア北西医院),野嶋佐由美氏(高知県立大学看護学部),梅前ちひろ氏(北海道勤医協中央病院)に感謝の意を表したい.
本書を日本中のプライマリ・ケアにかかわる看護師に読んでいただくことで,日本のプライマリ・ケアの夜明けを迎えられることを期待している.
2016年5月
松下 明
プライマリ・ケア看護師の視点から
日本は世界でもまれな,フリーアクセス,自由開業制という医療制度を有している.したがって,国民は希望するときに,希望する医療機関にかかることができる.この利便性はすばらしいものである一方,患者と医療者双方に過剰なニーズと競争を生み出し,患者は時に過剰な医療を受け,医療者は疲弊している.とくに外来では,短時間にたくさんの患者を診療しなくてはならず,十分なアセスメントや療養指導ができずに,患者は結果として知識不足のまま,不適切・不十分な療養行動をとり,悪化を繰り返すことになる.予防においても同様で,医療者側は患者の受診を待つしかなく,科学的エビデンスに基づいて,予防的・戦略的に住民にかかわることができない.その結果として,疾病発症後の診療に対して,人的エネルギーも医療費も使用することとなる.
世界はプライマリ・ケアを医療制度の基盤に置いている.あのアメリカでさえも,である.日本でもそろそろ,専門医や専門特化した看護師がもてはやされるのではなく,地味かもしれないが,総合的に地域・家族・患者をケアするジェネラリストである専門家が脚光を浴び,育っていかなくてはいけないのではないだろうか.そうしないと,高齢化が進み,人口が減少する社会の変化を乗り越えることはできないと考える.
総合的・包括的に地域,家族,患者をアセスメント・ケアする.これは,看護教育のなかで重点的に行われ,看護師にとっては得意分野だ.たくさんのアセスメントツールや方法論も開発されている.だから,受けてきた看護教育を思い出し,自分たちの役割をしっかりと捉え直し,プライマリ・ケアに視点を移すとよい.培ってきた看護の英知と技術を最も活かせる場は地域にある.
本書は,日本で初めて編纂されたプライマリ・ケア看護師のためのテキストであり,プライマリ・ケア看護師がカバーする範囲や担うべき役割・機能を提示し,必要な知識と技術を網羅している.ぜひとも,多くの看護師に自分たちの使命と役割を思い出し,地域の人々を支える役割を担ってほしいと考えている.
2016年5月
森山美知子
目次
Ⅰ プライマリ・ケアの基本
1 プライマリ・ケアとは何か
2 わが国の医療システムとプライマリ・ケア
3 プライマリ・ケアにおける多職種連携・協働
4 生涯・長期にわたる患者支援
5 患者中心の医療
6 看護倫理
7 家族志向のアプローチ
Ⅱ 患者と家族のライフステージに応じたヘルスプロモーション
1 ヘルスプロモーションの概念
2 感染症と予防接種
3 ライフステージと保健指導
①ライフステージと予防
②妊婦健診と保健指導
③乳幼児期・学童期・思春期におけるヘルスプロモーションと保健指導
④成人の健診と保健指導
⑤がん検診と保健指導
⑥ライフステージに応じた事故予防・保健指導
4 虐待:発見と対応
①医療専門職としての責任
②子ども虐待と対応
③高齢者虐待と対応
④DVと対応
Ⅲ 疾病予防と疾病管理
1 EBCPの展開
2 臨床推論 ─患者のアセスメント力を向上するために─
3 トリアージ
4 患者教育と行動変容
5 生活習慣病・疾病予防
①高血圧,脂質異常症,メタボリック症候群
②不整脈
③喫 煙
④栄 養
⑤アルコール
6 生活習慣病・慢性疾患の管理
①糖尿病
②CKD
③COPD
④慢性心不全
⑤筋骨格系
7 コモン・ディジーズ,コモン・シンプトムへの対応
①呼吸器感染症
②皮膚障害
③脱 水
8 認知症ケア
9 メンタルヘルス
Ⅳ 在宅療養支援
1 在宅医療を知る
2 在宅療養支援における看護師の役割
3 在宅での緩和ケアと看取り
Ⅴ 地域連携とチーム医療
1 地域包括ケアシステムのなかでの地域連携とチーム医療
2 多職種チーム連携
3 医療機関との連携と退院調整
Ⅵ 地域の健康問題の解決に向けた取り組み
1 地域診断・アセスメントと問題解決
2 災害対応
Ⅶ 幼稚園・保育園・学校の健康管理
1 学校保健の理解
2 養護教諭との役割分担と連携
3 子どもの成長・発達とその支援
4 小児の疾病対応と慢性疾患管理
5 事故対応
6 子どもと性
7 子どものメンタルヘルス
Ⅷ 組織マネジメント
1 感染管理とスタンダードプリコーション
2 リスクマネジメント・苦情対応
3 救急対応 ─急変対応とアセスメント能力─
4 インシデント・アクシデントマネジメント
5 魅力ある職場づくり
①組織分析
②組織内コミュニケーション
6 時間管理
7 質の向上
Ⅸ 専門職としてのキャリア開発
1 ポートフォリオを活用した自己開発
2 自身の実践をまとめ・振り返る・発表する
3 人を育てる力の育成 ─看護師の教育に関する理論を学ぶ─
1 プライマリ・ケアとは何か
2 わが国の医療システムとプライマリ・ケア
3 プライマリ・ケアにおける多職種連携・協働
4 生涯・長期にわたる患者支援
5 患者中心の医療
6 看護倫理
7 家族志向のアプローチ
Ⅱ 患者と家族のライフステージに応じたヘルスプロモーション
1 ヘルスプロモーションの概念
2 感染症と予防接種
3 ライフステージと保健指導
①ライフステージと予防
②妊婦健診と保健指導
③乳幼児期・学童期・思春期におけるヘルスプロモーションと保健指導
④成人の健診と保健指導
⑤がん検診と保健指導
⑥ライフステージに応じた事故予防・保健指導
4 虐待:発見と対応
①医療専門職としての責任
②子ども虐待と対応
③高齢者虐待と対応
④DVと対応
Ⅲ 疾病予防と疾病管理
1 EBCPの展開
2 臨床推論 ─患者のアセスメント力を向上するために─
3 トリアージ
4 患者教育と行動変容
5 生活習慣病・疾病予防
①高血圧,脂質異常症,メタボリック症候群
②不整脈
③喫 煙
④栄 養
⑤アルコール
6 生活習慣病・慢性疾患の管理
①糖尿病
②CKD
③COPD
④慢性心不全
⑤筋骨格系
7 コモン・ディジーズ,コモン・シンプトムへの対応
①呼吸器感染症
②皮膚障害
③脱 水
8 認知症ケア
9 メンタルヘルス
Ⅳ 在宅療養支援
1 在宅医療を知る
2 在宅療養支援における看護師の役割
3 在宅での緩和ケアと看取り
Ⅴ 地域連携とチーム医療
1 地域包括ケアシステムのなかでの地域連携とチーム医療
2 多職種チーム連携
3 医療機関との連携と退院調整
Ⅵ 地域の健康問題の解決に向けた取り組み
1 地域診断・アセスメントと問題解決
2 災害対応
Ⅶ 幼稚園・保育園・学校の健康管理
1 学校保健の理解
2 養護教諭との役割分担と連携
3 子どもの成長・発達とその支援
4 小児の疾病対応と慢性疾患管理
5 事故対応
6 子どもと性
7 子どものメンタルヘルス
Ⅷ 組織マネジメント
1 感染管理とスタンダードプリコーション
2 リスクマネジメント・苦情対応
3 救急対応 ─急変対応とアセスメント能力─
4 インシデント・アクシデントマネジメント
5 魅力ある職場づくり
①組織分析
②組織内コミュニケーション
6 時間管理
7 質の向上
Ⅸ 専門職としてのキャリア開発
1 ポートフォリオを活用した自己開発
2 自身の実践をまとめ・振り返る・発表する
3 人を育てる力の育成 ─看護師の教育に関する理論を学ぶ─