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カテゴリー: 癌・腫瘍学  |  東洋医学

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エビデンスを活かす

漢方でできるがんサポーティブケア

1版

金沢医科大学腫瘍内科学 主任教授 元雄良治 著

定価

3,080(本体 2,800円 +税10%)


  • A5判  189頁
  • 2019年6月 発行
  • ISBN 978-4-525-50151-8

がん治療中のつらい症状を改善させるヒント,漢方にあります

近年,がんサポーティブケアにおいて漢方がその存在感を増しつつある.そこで,がん治療に携わる多職種が,漢方をサポーティブケアの選択肢のひとつに加えられるよう,漢方の基礎知識や主要な漢方製剤の特徴,さまざまな症状にどのように漢方を用いて対応すればよいか,エビデンスと豊富な症例を交えながら解説.

  • 序文
  • 目次
序文
 がん医療の風景がこの5 年間で大きく変化していることは,多くの人が感じていることでしょう.それは,医療関係者と患者・家族とのコミュニケーション,遺伝子診断による治療法の選択,薬物療法とその副作用の早期発見・対策,がんサバイバーシップ,地域連携など,多くの側面での進歩によるものです.なかでも,がん薬物療法では,2018年にノーベル医学・生理学賞を受賞された本庶佑先生が開発を牽引した免疫チェックポイント阻害薬の普及が特筆されます.免疫チェックポイント阻害薬は,完全にがんが治癒してしまうくらいの画期的な有効性が認められますが,一方で,重篤な免疫関連有害事象も経験されたことから,使用に際しては診療科・多職種間での連携が必須となりました.また,従来の細胞障害性抗がん剤や21 世紀に多く開発された分子標的薬をさまざまに組み合わせたレジメンも考案され,臨床試験によってそのエビデンスが検証されてきました.このようにして実臨床に登場してきた治療法がその効果を最大限に発揮し,安全に使われるには,サポーティブケアが必須です.
 本書は漢方を用いたがんサポーティブケアを行うための考え方や方法をまとめた書籍です.以前は漢方を「エビデンスのない領域」といって相手にしなかった医療関係者が多かったのですが,2001 年から導入された漢方医学教育の普及によって,学生時代から漢方に接する若い医師が増え,現在では,漢方を知らない指導医層との逆転現象が起きています.また,この10 年間で医療用漢方製剤に関するエビデンスも増えてきています.将来,漢方をまったく知らずに医療に従事することは困難になるかもしれません.そして,がん治療,特に混合病態である薬物療法の副作用には,多成分系である漢方による全人的な診断と予防・治療が提案できます.さらに本書では薬物療法に加え,術後の体力低下やリンパ浮腫などといった外科的治療に伴う症状や,がん性疼痛,がん悪液質などの緩和ケアにも言及しました.まさに,「標準治療を完遂するための漢方」が本書のテーマです.
 また本書は,がん医療に携わる多くの医師・看護師・薬剤師をはじめ,多職種の方々に読んでいただける内容になっています.これからがんサポーティブケアに漢方を使ってみようと考えている医師にとっては,英語論文中心のエビデンスの紹介や豊富な症例を日常診療に活かしていただけると思います.また,看護師・薬剤師には,医師への処方提案や医師の処方の理解などに役立てていただけることでしょう.本書は3章構成になっていますので,これから漢方をがんサポーティブケアに応用してみようと思われている方は,ぜひ第1章「がんサポーティブケアと漢方」から読んでください.第2章「がんサポーティブケアで用いられる漢方製剤」は参照用です.サポーティブケアで用いられる方剤を厳選しましたので,知りたい漢方処方のページを開いてみてください.そして,第3章「症例からみる 症状別がんサポーティブケア」が本書の最も重要な章であり,読者の皆さんの関心があるところかと思います.症状別に代表的な漢方処方やエビデンス,症例呈示,ケアのポイントなどを記載しましたが,症状によってはまだ未開拓の領域が多いので,読者の皆さんからのご意見をいただけますと幸いです.
 「書物を読まずに医学を学ぶ者は海図のない海を航海しているようであり,書物ばかり読んで患者を診ない者は全く海に出ないに等しい」というウイリアム・オスラー博士の名言がありますが,読者の皆さんも本書を機に「漢方の海」へと漕ぎ出してみてはいかがでしょうか.
 最後に,本書の企画・編集にご尽力いただいた株式会社南山堂編集部の松村みどり氏に深く感謝いたします.

2019 年(令和元年)5 月
元雄良治
目次
第1章 がんサポーティブケアと漢方
 1.がんサポーティブケアの基礎知識
  1.がんサポーティブケアとは
  2.がんサポーティブケアがなぜ必要か
  3.がんサポーティブケアで重要なこと
  4.がんサポーティブケアにおける多職種連携
  5.日本がんサポーティブケア学会
 2.漢方の基礎知識
  1.漢方医学とは
  2.漢方医学における人体の考え方
  3.漢方医学における診察・診断
  4.薬剤としての漢方製剤
  5.漢方と現代医学の融合
  6.漢方のエビデンス
 3.がんサポーティブケアにおける漢方
  1.がん治療になぜ漢方を用いるか
  2.がんサポーティブケアに漢方を用いるメリット
  3.チーム医療と漢方
  4.漢方がんサポーティブケアと産学官の連携

第2 章 がんサポーティブケアで用いられる漢方製剤
 加味帰脾湯
 桂枝加朮附湯
 牛車腎気丸
 五苓散
 芍薬甘草湯
 十全大補湯
 潤腸湯
 大建中湯
 人参養栄湯
 麦門冬湯
 半夏厚朴湯
 半夏瀉心湯
 補中益気湯
 麻子仁丸
 抑肝散
 六君子湯

第3章 症例からみる 症状別がんサポーティブケア
 1.全身倦怠感,疲労感,術後の体力低下
  1.全身倦怠感
  2.疲労感
  3.術後の体力低下
 2.血球減少
  1.赤血球減少(貧血)
  2.白血球減少(好中球減少)
  3.血小板減少(出血傾向)
 3.悪心・嘔吐,食欲不振
  1.悪心・嘔吐
  2.食欲不振
 4.便通異常,イレウス(腸閉塞)
  1.下 痢
  2.便 秘
  3.イレウス(腸閉塞)
 5.粘膜炎(口内炎)
 6.末梢神経障害,帯状疱疹後神経痛,こむら返り
  1.末梢神経障害
  2.帯状疱疹後神経痛
  3.こむら返り
 7.皮膚・爪障害
 8.浮 腫
 9.咳 嗽
 10.がん性疼痛
 11.不眠,うつ症状
 12.がん悪液質

付録 症状と漢方方剤の対応一覧

索 引

コラム
 複数方剤の併用
 味覚障害に対する漢方
 間質性肺炎と抗悪性腫瘍薬・漢方製剤
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