Breastfeeding for a medical profession
母乳育児支援講座
改訂2版
昭和大学江東豊洲病院小児内科 教授/国際認定ラクテーション・コンサルタント 水野克己 著
昭和大学小児科 研究生 助産師 水野紀子 著
定価
4,950円(本体 4,500円 +税10%)
- AB判 391頁
- 2017年11月 発行
- ISBN 978-4-525-50332-1
母乳育児支援のすべてがわかる!
母乳育児支援に重要な妊娠から出産・退院までの関わりに求められるコアとなる知識を簡潔にまとめ,20日間で理解できるように編集したテキスト.項目ごとにまとめられた確認テスト,巻末の卒業テストを行うことで,理解度を測ることもできる.図表やコラムも満載し,母乳育児支援のポイントが“よくわかる”1冊!
- 序文
- 目次
序文
『母乳育児支援講座』第1版が出版されて6年が経過した.この間,母乳成分や母乳育児に関して多くの研究結果が発表されている.それでも母乳育児に関わるクリニカルクエスチョンはたくさん残っている.例えば,これまで健康に生活してきた標準的な体重の20歳代の女性が,妊娠中に標準相当の乳房発達が認められ,明らかな内分泌疾患がないにもかかわらず,母乳分泌がみられないこともある.このような女性に,われわれ支援者はどのように関わっていけばよいのだろうか.
分子レベルでの研究や動物実験の結果から,これまでは診断の糸口もつかめなかった病態でも原因がわかってきたものもある.しかし,これらの研究結果を臨床に生かして,母乳育児におけるトラブルの問題解決に至るのは,いまだに難しいことも少なくない.母乳育児支援者が知識をアップデートしておくことで具体的な解決策がない場合であっても,母親にある程度納得のできる説明ができるかもしれない.理由がわかればたとえ満足のいく母乳育児ではなくても,その状況に合わせて子育てを行う心の切り替えにもつながるだろう.もちろん,「母親は自分が出産した児を母乳で育てるのがベストである」ので,いくらかでも母乳で長く育てられるように医療者がしっかりと母乳育児をサポートできることが望まれる.
第1版では個別の母親に対応できることを目標として,母乳育児を支援するに当たって必要と思われる基礎知識を解剖学,生理学,生化学,病態学から考えた.第2版は上述したような新たな知見を含めて医学分野としての母乳育児を学習できるように記載した.
これまで母乳で育てる母親をサポートするための系統的な医学教育はなく,同僚や先輩の助産師の経験に基づく知識と自分の経験から得た知識を用いてサポートしているのが,現状の母乳育児支援であろう.この経験から得た知識 experience based knowledgeだけでは,いろいろな母乳育児の問題を抱える女性と児に「どんな問題でも大丈夫,解決できる」と自信をもって臨むことはできないこともあるだろう.医学は生理学,生化学,解剖学,そして病態生理から薬理学といった診療の基礎となる「基礎医学」のもとに成り立っている.これらの基礎医学を習得後,さらにエビデンスに基づいた医学 evidence based medicine(EBM)が加わって初めて「どんな問題でも大丈夫,解決できる」と自信がもてるようになる.
今回,南山堂さんのご尽力のもと,母乳育児,母親と児の生理,母乳で育つ児の基礎医学を自己学習でき,自分がこれまで積み上げてきた経験に基づく知識を整理できる書『母乳育児支援講座』の第2版を出版できることとなった.基礎から知識を見直すことで,自信をもって母乳で育てている女性をサポートしていただけることを願う.
2017年9月吉日
水野克己・紀子
分子レベルでの研究や動物実験の結果から,これまでは診断の糸口もつかめなかった病態でも原因がわかってきたものもある.しかし,これらの研究結果を臨床に生かして,母乳育児におけるトラブルの問題解決に至るのは,いまだに難しいことも少なくない.母乳育児支援者が知識をアップデートしておくことで具体的な解決策がない場合であっても,母親にある程度納得のできる説明ができるかもしれない.理由がわかればたとえ満足のいく母乳育児ではなくても,その状況に合わせて子育てを行う心の切り替えにもつながるだろう.もちろん,「母親は自分が出産した児を母乳で育てるのがベストである」ので,いくらかでも母乳で長く育てられるように医療者がしっかりと母乳育児をサポートできることが望まれる.
第1版では個別の母親に対応できることを目標として,母乳育児を支援するに当たって必要と思われる基礎知識を解剖学,生理学,生化学,病態学から考えた.第2版は上述したような新たな知見を含めて医学分野としての母乳育児を学習できるように記載した.
これまで母乳で育てる母親をサポートするための系統的な医学教育はなく,同僚や先輩の助産師の経験に基づく知識と自分の経験から得た知識を用いてサポートしているのが,現状の母乳育児支援であろう.この経験から得た知識 experience based knowledgeだけでは,いろいろな母乳育児の問題を抱える女性と児に「どんな問題でも大丈夫,解決できる」と自信をもって臨むことはできないこともあるだろう.医学は生理学,生化学,解剖学,そして病態生理から薬理学といった診療の基礎となる「基礎医学」のもとに成り立っている.これらの基礎医学を習得後,さらにエビデンスに基づいた医学 evidence based medicine(EBM)が加わって初めて「どんな問題でも大丈夫,解決できる」と自信がもてるようになる.
今回,南山堂さんのご尽力のもと,母乳育児,母親と児の生理,母乳で育つ児の基礎医学を自己学習でき,自分がこれまで積み上げてきた経験に基づく知識を整理できる書『母乳育児支援講座』の第2版を出版できることとなった.基礎から知識を見直すことで,自信をもって母乳で育てている女性をサポートしていただけることを願う.
2017年9月吉日
水野克己・紀子
目次
母乳育児支援講座
第1日目 乳房の解剖
第2日目 母乳分泌の生理
第3日目 母乳の生化学1:母乳の構成成分
第4日目 母乳の生化学2:免疫物質・アレルギー物質
第5日目 母乳の生化学3:構成成分の変化
第6日目 早期接触と母乳育児─出生直後のskin to skin contact
第7日目 新生児の黄疸
第8日目 新生児の低血糖─母乳で育っている児を中心に
第9日目 生後早期の体重減少と高張性脱水
第10日目 哺乳の仕組み
第11日目 (前半)補足の医学的適応と種類・量・方法
(後半)補足の減らし方とフォローアップの方法
第12日目 うまく吸着できないときの対応(陥没乳頭・扁平乳頭)
第13日目 授乳姿勢と乳房の含ませ方─ポジショニングとラッチオン
第14日目 乳房の緊満,乳腺炎,乳汁分泌過多
第15日目 乳頭痛と乳頭損傷
第16日目 母乳不足感と母乳摂取不足,母乳分泌不全
第17日目 帝王切開と無痛分娩の母乳育児
第18日目 後期早産児の授乳と多胎児の授乳
第19日目 早産児の母乳育児支援
第20日目 (前半)退院前に伝えておきたいこと
(後半)2週間健診の勧め
母乳育児支援 Q&A
● 妊娠中からの母乳育児の準備
Q:おっぱいの大きさと母乳の量って関係するの?/Q:母乳って,どうやってつくられるの?/Q:乳汁生成の第2段階になって母乳がたくさん出るようになれば,もう出なくなる心配はないの?/Q:1回の授乳中の母乳の成分が異なる?/Q:母乳と人工乳は同じ?/Q:母乳は生きている?/Q:1歳を過ぎたら母乳の栄養や免疫はなくなるの?/Q:カンガルーケアを安全に行う方法って?/Q:母乳育児のために出生後にすぐできること
● 新生児の生理学
Q:赤ちゃんが黄色いのは私の母乳がよくない?/Q:黄疸の治療にはどんなものがある?/Q:黄疸の光線療法って何?治療中には母乳はあげられないの?/Q:黄疸を繰り返すのは普通なの?/Q:黄疸のために人工乳は必要?/Q:低血糖って何が悪いの?/Q:低血糖ハイリスクの場合の対応は?/Q:体重が減っていたら母乳で育てるのは難しい?/Q:哺乳ビンだとゴクゴクよく飲む!?
● 補 足
Q:補足は糖水よりも人工乳のほうがいいの!?~習慣的な補足の見直し/Q:補足が必要なのはどんなとき?/Q:高年初産の場合の補足は?/Q:補足はどのように減らしたらよいの?
● 乳頭・乳房について
Q:乳頭の形によって授乳が困難になる?/Q:おっぱいにうまく吸いついてくれない……/Q:授乳中の母親の発熱で注意することは?/Q:緊満への対応は?/Q:授乳中に赤ちゃんが苦しそう……/Q:乳腺炎を予防するには?/Q:おっぱいが痛くて思うように授乳できない
● 母乳の量
Q:赤ちゃんが泣く=おっぱいが足りない?(母乳不足と不足感)
●特別なケアが必要な場合
Q:帝王切開で出産しても母乳はあげられるの?/Q:ちょっと早く生まれた赤ちゃんの母乳育児って?/Q:双子でも母乳育児はできる?/Q:予定日よりも早く出産すると母乳は出ない?
●退院から1ヵ月までのフォローアップ
Q:産後1ヵ月の母乳育児率の低下を防ぐには?/Q:退院後の母親の不安を軽減するには?
●おまけのQ&A:退院~生後1ヵ月までの心配事
Q1:吐乳/Q2:便の色/Q3:湯冷ましは必要?/Q4:鼻づまり/Q5:歯科治療/Q6:きょうだいと感染/Q7:おしゃぶりは必要?/Q8:おっぱいを頻繁に欲しがる
卒業テスト
解答のページ
(Exerciseの解答/卒業テストの解答と難解問題の解説)
索 引
第1日目 乳房の解剖
第2日目 母乳分泌の生理
第3日目 母乳の生化学1:母乳の構成成分
第4日目 母乳の生化学2:免疫物質・アレルギー物質
第5日目 母乳の生化学3:構成成分の変化
第6日目 早期接触と母乳育児─出生直後のskin to skin contact
第7日目 新生児の黄疸
第8日目 新生児の低血糖─母乳で育っている児を中心に
第9日目 生後早期の体重減少と高張性脱水
第10日目 哺乳の仕組み
第11日目 (前半)補足の医学的適応と種類・量・方法
(後半)補足の減らし方とフォローアップの方法
第12日目 うまく吸着できないときの対応(陥没乳頭・扁平乳頭)
第13日目 授乳姿勢と乳房の含ませ方─ポジショニングとラッチオン
第14日目 乳房の緊満,乳腺炎,乳汁分泌過多
第15日目 乳頭痛と乳頭損傷
第16日目 母乳不足感と母乳摂取不足,母乳分泌不全
第17日目 帝王切開と無痛分娩の母乳育児
第18日目 後期早産児の授乳と多胎児の授乳
第19日目 早産児の母乳育児支援
第20日目 (前半)退院前に伝えておきたいこと
(後半)2週間健診の勧め
母乳育児支援 Q&A
● 妊娠中からの母乳育児の準備
Q:おっぱいの大きさと母乳の量って関係するの?/Q:母乳って,どうやってつくられるの?/Q:乳汁生成の第2段階になって母乳がたくさん出るようになれば,もう出なくなる心配はないの?/Q:1回の授乳中の母乳の成分が異なる?/Q:母乳と人工乳は同じ?/Q:母乳は生きている?/Q:1歳を過ぎたら母乳の栄養や免疫はなくなるの?/Q:カンガルーケアを安全に行う方法って?/Q:母乳育児のために出生後にすぐできること
● 新生児の生理学
Q:赤ちゃんが黄色いのは私の母乳がよくない?/Q:黄疸の治療にはどんなものがある?/Q:黄疸の光線療法って何?治療中には母乳はあげられないの?/Q:黄疸を繰り返すのは普通なの?/Q:黄疸のために人工乳は必要?/Q:低血糖って何が悪いの?/Q:低血糖ハイリスクの場合の対応は?/Q:体重が減っていたら母乳で育てるのは難しい?/Q:哺乳ビンだとゴクゴクよく飲む!?
● 補 足
Q:補足は糖水よりも人工乳のほうがいいの!?~習慣的な補足の見直し/Q:補足が必要なのはどんなとき?/Q:高年初産の場合の補足は?/Q:補足はどのように減らしたらよいの?
● 乳頭・乳房について
Q:乳頭の形によって授乳が困難になる?/Q:おっぱいにうまく吸いついてくれない……/Q:授乳中の母親の発熱で注意することは?/Q:緊満への対応は?/Q:授乳中に赤ちゃんが苦しそう……/Q:乳腺炎を予防するには?/Q:おっぱいが痛くて思うように授乳できない
● 母乳の量
Q:赤ちゃんが泣く=おっぱいが足りない?(母乳不足と不足感)
●特別なケアが必要な場合
Q:帝王切開で出産しても母乳はあげられるの?/Q:ちょっと早く生まれた赤ちゃんの母乳育児って?/Q:双子でも母乳育児はできる?/Q:予定日よりも早く出産すると母乳は出ない?
●退院から1ヵ月までのフォローアップ
Q:産後1ヵ月の母乳育児率の低下を防ぐには?/Q:退院後の母親の不安を軽減するには?
●おまけのQ&A:退院~生後1ヵ月までの心配事
Q1:吐乳/Q2:便の色/Q3:湯冷ましは必要?/Q4:鼻づまり/Q5:歯科治療/Q6:きょうだいと感染/Q7:おしゃぶりは必要?/Q8:おっぱいを頻繁に欲しがる
卒業テスト
解答のページ
(Exerciseの解答/卒業テストの解答と難解問題の解説)
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