書籍カテゴリー:臨床看護学

看護と法律

在庫状況:絶版

看護と法律

1版

  • 東京都医師会顧問弁護士 小海 正勝 著

定価:2,052円(本体1,900円+税8%)

  • A5判 195頁
  • 2004年5月 発行
  • ISBN978-4-525-50601-8
  • ISBN4-525-50601-6

概要

近年の看護師の地位の向上に伴い,法的責任を看護師が負うケースも増えている.本書では看護職を中心に各種医療職の業務と法律について,実際の裁判にかかわっている弁護士である著者が豊富な経験から具体的にポイントを押さえて解説する.インフォームド・コンセント,安楽死・尊厳死など時代を映す事柄と法律との関係もよく分かる.

序文

看護の内容は年々多様化してきており,それに伴い,その範囲はますます広がりつつある.他方,看護の質そのものも年々向上してきている.
その結果,看護業務と他職種との間の業務の範囲の問題が非常に重要になってきているが,それにとどまらず,インフォームド・コンセントの問題,医療事故と法的責任の問題,リスクマネジメントの問題および安楽死・尊厳死の問題等も,現在,看護師・准看護師の皆様ご自身の問題として非常に身近な存在となってきている.
ところが,例えば,一口にインフォームド・コンセントといっても,看護界で広く一般的に使われている内容と医師がイメージする内容とは必ずしも同じではなく,また,法律の世界で使われている内容はそれとはまた別な一種独特な意味を持って使われているのが現状である.それで,ここでは,インフォームド・コンセントが法的に看護とどうかかわっているのかという視点から解説した.
医療事故と法的責任の問題は,古くて新しい問題である.法律家にとっては何気なく使う民事上の責任,刑事上の責任という言葉も,法律の世界でない人々にとっては,そもそも民事とは何か刑事とは何かということから明確には分からない.したがって,法律家の書いたものは,医療・看護の世界の人々にとっては,分かったようで分からない.本書では,その点に特に留意して分かりやすく解説した.
リスクマネジメントの問題は,今後ますます重要になっていく.事故をなくすにはどうしたらよいか,これを一緒に考えていきたいと思う.
安楽死・尊厳死の問題については,看護の世界にいるかぎり,いつかは必ず直面する問題である.したがって,それに対する法律の世界での解釈を知っておくことが必要である.
私は,平成元年度から社団法人日本看護協会の看護研修学校で看護と法律についての講義を担当し,あわせて社団法人日本看護協会看護教育・研修センターで看護師の皆様方の卒後教育として上記の問題について講義をしてきた.また,東京大学大学院医学系研究科で看護と法律の講義を,そして最近は,東京女子医科大学看護学部で上記の問題の講義を担当してきた.
したがって,本書は,看護専門学校・看護系短大・看護大学の各学生さんのみならず,看護系の大学院の学生さん,教員,また,卒後の看護師・准看護師の皆様方に何らかの形で必ずお役に立てるものと信ずる次第である.

平成16年3月 小海正勝

目次

第1章 インフォームド・コンセント
I インフォームド・コンセントの意味
 1.言葉の意味
 2.必要な理由
 3.説明すべき内容・程度
  1)日本医師会生命倫理懇談会による報告
  2)判 例
  3)軽減要素
  4)加重要素
  5)判断基準
 4.説明が不要な場合についての考察
 5.インフォームド・コンセントが必要な医療行為の範囲
 6.看護師とインフォームド・コンセントとの関係
 7.インフォームド・コンセントの今後
II インフォームド・コンセントの現場での問題点
 1.医療側と患者側との認識度の違い
 2.患者側自身の理解度の差
 3.信頼関係の維持の必要性
 4.患者側の誰に話すか
 5.インフォームド・コンセントと診療契約との関係
 6.手術承諾書の工夫
III 乳がんの手術のケース
IV 宗教上の信念に基づく輸血拒否について
 1.一般的判断基準
 2.実際の場面での判断基準
  1)成人でしかも正常な判断能力がある場合
  2)成人ではあるが意識障害がある場合
  3)判断能力のある未成年の場合
  4)判断能力のない未成年の場合

第2章 看護業務上の事故と法的責任
I 最近の医療過誤訴訟の動向について
 1.医療過誤訴訟の件数の傾向
 2.診療科別の傾向
 3.過失の態様
 4.損害額の高額化の傾向
 5.法律家の対応
  1)不法行為に基づく訴訟
  2)不法行為から債務不履行へ
  3)診療契約を準委任契約とした最初の判例
  4)そしてまた不法行為へ
 6.裁判所の対応の変化
 7.刑事責任に対する裁判所・検察庁の変化
II 看護業務上の事故
III どのような場合に法律上の責任があるか
  1)悪い結果の発生
  2)因果関係の存在
   (1)民事責任について
   (2)刑事責任について
  3)過失の存在
   (1)過失とは
   (2)看護師の過失の有無を判断する基準は何か
   (3)看護水準について
   (4)医師の指示をめぐって
IV どのような法律上の責任があるか
 1.民事責任
  1)民事責任とは
  2)誰が賠償金を支払うことになるか
  3)支払うべき金額
  4)民事裁判の構造
 2.刑事責任
  1)刑事責任とは
  2)誰が刑罰を受けることになるか
  3)実際の刑罰の内容
  4)刑事裁判の構造
 3.その他の責任
  1)保健師助産師看護師法の行政処分
  2)国家公務員法・地方公務員法上の行政処分
  3)就業規則等による懲戒処分

第3章 リスクマネジメント
I 医療過誤から学ぶこと
 1.筆者が実際に担当した事件からの教訓
 2.平成元年以降の看護過誤で刑事責任を問われたケースの紹介
  1)注射液を間違えたケース
  2)経口投与剤を注射してしまったケース
  3)他の患者用の薬液を注射してしまったケース
  4)胃管挿入方法によらなければならない薬液を静脈注射してしまったケース
  5)患者を間違えて手術してしまったケース
  6)新生児の沐浴に関するケース
  7)注射液を間違えたケース
  8)薬剤の表示の確認を怠ったケース
  9)内服用の薬剤を静注したケース
  10)経口投与すべき牛乳を中心静脈栄養管理カテーテルに接続注入してしまったケース
  11)麻酔に関し医師と看護師の両方の責任が問われたケース
  12)異型輸血をした結果,患者を死亡させたケース(その1)
  13)異型輸血をした結果,患者を死亡させたケース(その2)
  14)異型輸血をした結果,患者を死亡させたケース(その3)
  15)医療器械・器具の操作を誤って患者を死亡させたケース
 3.まとめ
II 賠償責任保険
 1.病院・診療所・勤務医を対象とする医師賠償責任保険
 2.日本医師会の医師賠償責任保険
  1)従前からの日本医師会の医師賠償責任保険
  2)新設された日医医賠責特約保険
 3.看護職賠償責任保険

第4章 安楽死・尊厳死について
I 安楽死
 1.安楽死とは
 2.安楽死に関する判決
  1)東京地方裁判所昭和25年4月14日判決
  2)名古屋高等裁判所昭和37年12月22日判決・名古屋高等裁判所の判決による安楽死の法律上の要件
  3)鹿児島地方裁判所昭和50年10月1日判決
  4)神戸地方裁判所昭和50年10月29日判決
  5)大阪地方裁判所昭和52年11月30日判決
  6)高知地方裁判所平成2年9月17日判決
  7)横浜地方裁判所平成7年3月28日判決・横浜地方裁判所の判決による安楽死の法律上の要件
II 尊厳死
 1.尊厳死とは
 2.植物状態とは
 3.現 状
 4.横浜地方裁判所平成7年3月28日判決

第5章 看護師・准看護師の業務
I 医師法と保健師助産師看護師法との関係について
 1.医業について
  1)医師法第17条
  2)医行為とは
   (1)被検査物の検査と採血
   (2)血圧,握力,肺活量の測定
   (3)検眼行為
   (4)美容を目的とした二重瞼,隆鼻,瘢痕剥離および植皮,植毛等の整形手術をなす行為等
   (5)手術刃および縫合針などを使用して行う二重瞼,口唇縫縮,隆鼻,植皮および植毛
   (6)永久脱毛行為
  3)業とするとは
  4)医師法違反の事例
   (1)インターン生が医療行為を行った例
   (2)医師の資格のない医療法人の理事長が医療行為を行った例
 2.看護業務
  1)保健師助産師看護師法第31条
  2)保健師助産師看護師法第32条
  3)保健師助産師看護師法第31条違反の事例
 3.療養上の世話業務
  1)療養上の世話の意味
  2)医師の指示との関係
  3)療養上の世話業務と診療の補助業務との区別
 4.診療の補助業務
  1)診療の補助の意味
  2)医師の指示
  3)どこまで補助ができるか−絶対的医行為と相対的医行為との区別
II 看護記録の法的側面
 1.看護記録の法的根拠
 2.診療録・看護記録等の患者側の閲覧請求権・謄写請求権の法的有無
  1)学 説
  2)判 例
  3)条例による開示請求
  4)都立病院の例
  5)自主的に開示している医療機関
  6)個人情報の保護に関する法律
  7)厚生労働省医政局長の通知
 3.証拠保全
 4.診療録・看護記録等の保管期間
 5.看護記録をどのように書くべきか
 6.看護記録に関する厚生労働省の通知
III 看護師の守秘義務について
 1.保健師助産師看護師法による守秘義務
 2.看護業務に関連するその他の法律による守秘義務
  1)感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律
  2)母体保護法
  3)結核予防法
  4)精神保健及び精神障害者福祉に関する法律
 3.国家公務員法,地方公務員法による守秘義務
  1)国家公務員法
  2)地方公務員法
 4.民法上の守秘義務
IV 業務独占と名称独占
 1.業務独占と名称独占の双方がとられているもの
 2.業務独占のみがとられているもの
 3.名称独占のみがとられているもの

第6章 他の医療関連職種の業務
I 診療放射線技師の業務
II 臨床検査技師・衛生検査技師の業務
III 理学療法士の業務
IV 作業療法士の業務
V 視能訓練士の業務
VI 言語聴覚士の業務
VII 臨床工学技士の業務
VIII 義肢装具士の業務
IX 救急救命士の業務

第7章 医療に関連する法律とその解説
 1.保健師助産師看護師法
 2.医師法
 3.医療法
 4.日本国憲法
 5.民 法
 6.国家賠償法
 7.民事訴訟法
 8.刑 法
 9.刑事訴訟法
 10.社会福祉士および介護福祉士法
 〈用語解説〉
付 録:通 知
 1.診療情報の提供等に関する指針の策定について
 2.診療録等の電子媒体による保存について