書籍カテゴリー:衛生・公衆衛生学|教養課程の医学教科書

学生のための現代公衆衛生
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学生のための現代公衆衛生

第7版

  • 和光大学教授 野中浩一 編著
  • 杏林大学教授 苅田香苗 著
  • 日本女子体育大学准教授 内山有子 著
  • 日本女子体育大学准教授 助友裕子 著

定価:2,484円(本体2,300円+税8%)

  • B5判 233頁
  • 2016年2月 発行
  • ISBN978-4-525-62037-0

概要

「公衆衛生とは何か」をやさしく学べる一冊

本書は学生が自分自身の生活と公衆衛生の関わりを理解し,問題解決への視点を身に付けられる教科書である.健康の科学,人口の問題,ライフステージごとの健康,心の健康,環境問題,食糧事情,職業生活などのテーマを取り上げている.改訂7版では項目やmemoを一部改め,現代の日本が抱える問題などをふまえた最新の情報を盛り込んだ.

序文

 本書には歴史があります.改訂第7版という版数が如実に示しているとおりですが,そのほとんどは,今回の編者にとって恩師である故三浦悌二先生,導師である中村泉先生が連綿と改訂をつづけて来られたものです.「初版の序」にもありますように,起源をたどると,さらに以前からの歴史すらあります.そこから数えれば1世代にも相当する月日の流れを経て,今回から,編者・執筆者の一部を新たにしました.
公衆衛生の領域は,さまざまな仕事(資格)で基本的な理解が求められるものです.その意味で,基礎的な知識については,できるだけ漏れがないように心がけました.ただ,この20年の間だけでも,BSE感染と変異型ヤコブ病,地球温暖化と関連が疑われている甚大な自然災害,グローバル化する世界のなかでの感染症をめぐる状況の変化,臓器移植法と関連した脳死と死の問題などが新たに加わっただけでなく,日本では2011年3月の大震災にともなう原発事故があり,身体面ばかりか,精神的,社会的にも多くの人々の健康を脅かしています.こうした公衆衛生にかかわるテーマを網羅するのは容易ではありませんし,やや古くなった事項については,あえて削ったものもあります.それでも,資格取得の必須科目として学習する人は,「覚えなくてはならない」知識が多いことに少々辟易することがあるかもしれません.しかし,本書で学んだことは,あくまで出発点となる核にしかすぎませんし,とりわけ将来に公衆衛生や保健を教える立場に就く人は,最新の科学的知見だけでなく,時代とともに変化しうる人々の考え方にもアンテナを張りつづけていただきたいと思います.
公衆衛生のさまざまな課題の根源をたどると,その一つは,人類がかつて経験したことのない70億を超える規模の人口にあります.限られた地球の上で,これだけ多くの人間の健康を保つためには,従来の常識や考え方だけでは不十分なことも出てくるはずです.過去にも,都市生活の衛生のために上下水道を整備したり,感染症の流行にはワクチンを開発したり,生殖に関する女性の権利を確認したり,そのときどきの公衆衛生の課題に人間は智慧を出し,解決策をさぐってきました.地球環境問題と総称されるような人と自然との共生も,そして古くて新しい人と人との共生もまた,新たな考えや実践が求められているはずです.変化のなかで生きている私たち,とりわけ若い人たちは,私たちみんなの健康が高まるよう行動に結実させることが務めともいえます.
恩師の故三浦悌二先生が常々おっしゃっていた「衛生学は未来学だ」という教えを胸にきざみつつ,21世紀にふさわしい教科書を目指して出発した本書は,統計数値などの更新を丁寧にするといったことはもちろんですが,みなさんに「いのち」を考えていただける礎石として役立てられるよう,Memo欄を追加したり,項目の整理をしたりして,ここに新しい版としてお送りすることになりました.未来の日本を担うみなさんのお役に立てることを願っています.
また,今回の版では,どうしてもかたくなりがちな教科書に少しでも親しみがもてれば,ということで,高橋優日さんにイラストを描いていただきました.ありがとうございました.暖かい絵でホッとして,読者のみなさんの学習にさらにはずみがつけばいいなと思います.

2016年1月 
著者ら

目次

1章 健康の科学としての公衆衛生学
A.健康観の変遷
 1.古代の健康観
 2.近代の健康観
 3.現代の健康観
B.公衆衛生学の成立とその目標
C.公衆衛生学と疫学研究
 1.健康にかかわる要因の影響を知る研究
 2.疫学研究のデザイン
D.予防医学としての公衆衛生学
 1.予防の分類
 2.スクリーニング

2章 人口の動向
A.人口動態と人口静態
B.世界の人口
 1.世界の人口増加
 2.人口の急増と環境問題
 3.人口政策
 4.人口の移動
 5.世界の出生・死亡・健康問題
C.日本の人口
 1.日本の人口動向
 2.結婚と離婚
 3.出生
 4.死亡
 5.人口の高齢化
 6.少子化対策

3章 妊娠・出産と胎児の保健
A.妊娠
 1.妊娠の経過
B.家族計画
 1.家族計画の方法
 2.避妊の方法
 3.人工妊娠中絶
 4.不妊と生殖技術
C.妊娠・出産と健康
 1.流産
 2.死産
 3.妊娠と出産による母体の異常
 4.出産後の母体の健康
D.先天異常
 1.染色体異常
 2.遺伝的異常
 3.環境に原因のある先天異常
E.先天異常の発生の予防と早期治療
 1.遺伝病の予防
 2.出生前診断と遺伝子治療
 3.先天異常の予防
 4.先天性代謝異常症の早期発見と2次予防
 5.避けられない病気との共生

4章 新生児・乳幼児期の保健
A.新生児・乳幼児期の健康
 1.死亡
 2.分娩による障害
 3.低出生体重児
 4.乳幼児期の事故
 5.乳幼児期の栄養
 6.乳幼児期の生活習慣
 7.虐待
 8.感染症と予防接種
B.母子保健
 1.妊娠届と母子健康手帳
 2.保健指導
 3.妊産婦と乳幼児の健康診査
 4.医療対策
 5.母子保健施設
 6.健やか親子21

5章 青少年の保健
A.学校保健
 1.健康診断
 2.感染症の予防
 3.結核対策
 4.学校の環境衛生
 5.学校給食
B.現代生活と児童・生徒の健康
 1.身体の発育と運動能力
 2.児童・生徒に多い病気
 3.慢性疾患と学校生活
 4.最近の特徴
C.思春期から青年期の健康
 1.性行為によってうつる病気(STD)
 2.事故と自殺
 3.食生活の問題
 4.喫煙
 5.アルコール
 6.薬物乱用

6章 成人期の保健
A.生活習慣病による死亡の動き
B.悪性新生物
 1.日本の特徴
 2.悪性新生物の要因
 3.がんの予防
C.心疾患と脳血管疾患
 1.日本の特徴
 2.動脈硬化と高血圧
 3.心臓血管疾患
 4.脳血管疾患
 5.血管の病気の予防
D.その他の生活習慣病
 1.糖尿病
 2.肝疾患
 3.腎不全
E.ライフスタイル(生活習慣)と健康
 1.健康の面からみたライフスタイルの構成要素
 2.年齢と生活習慣病
 3.健康づくりへの政策
 
7章 老年期の保健と死の問題
A.老年期の健康
 1.老年期の生理
 2.老年期の生活
 3.老年期の健康とQOL
 4.老年期の病気
B.高齢者医療・保健・介護対策
 1.高齢者医療確保法
 2.介護保険制度
C.死といのちの問題
 1.終末期の医療
 2.尊厳死と安楽死
 3.脳死と臓器移植
 4.日本人の死生観と死の教育

8章 心の健康と心身障害
A.心の健康
 1.心の病気
 2.自殺
 3.心の健康対策
B.精神保健
 1.精神保健の歴史
 2.精神障害への対応
C.身体障害
 1.身体障害の実態
 2.身体障害への対応
D.心身障害
 1.心身障害の実態
 2.心身障害児の療育とリハビリテーション
 
9章 環境の衛生
A.空気
 1.空気の成分と健康
 2.体温調節と空気
B.放射線・音
 1.太陽光
 2.電離放射線
 3.音
C.住居環境
 1.採光と照明
 2.換気
 3.空気調整
 4.室内の化学物質
D.水
 1.上水
 2.下水
E.廃棄物処理
 1.廃棄物の種類
 2.ごみ処理問題への対策

10章 環境汚染と公害
A.有害環境と健康障害
 1.大気汚染と健康障害
 2.水質・土壌の汚染と健康障害
 3.その他の有害環境による障害
B.公害・環境汚染の変遷
 1.公害のはじまりと変化
 2.典型7公害と環境基本法
 3.公害の特徴とおもな公害事件
C.地球規模の環境問題
 1.開発と資源問題
 2.地球温暖化
 3.酸性雨
 4.オゾン層破壊
 5.その他の地球環境問題
D.環境保全と対策
 1.日本における環境基準と対策
 2.地球環境の保全

11章 感染症:微生物による病気
A.感染症の流行の条件と予防
 1.感染症が成立する条件
 2.感染症の予防
 3.感染症予防に関する法律
B.おもな感染症
 1.経口伝染病(経口感染)
 2.空気による伝染(経気道感染)
 3.接触による伝染(接触感染)
 4.媒介者のいる病気
 5.動物由来感染症(人獣共通感染症)
C.世界における感染症
 1.新興感染症
 2.再興感染症
D.感染症にかかわる環境
 1.食品と感染症
 2.医療と感染症
 3.薬害
 4.薬害事例
E.感染症予防と人権

12章 食物と健康
A.公衆栄養
 1.食事摂取基準
 2.国民健康・栄養調査
 3.開発途上国の栄養・食糧問題
 4.生活習慣病と食生活の問題
B.食中毒
 1.食中毒の概要
 2.細菌・ウイルスによる食中毒
 3.自然毒による食中毒
 4.化学物質による食中毒
C.食物と健康被害
 1.経口感染
 2.食品の変質
 3.残留農薬・残留医薬品
 4.欠乏症と過剰症
D.食品の安全性
 1.食品衛生法
 2.食品安全基本法
 3.食品添加物と食品表示
 4.遺伝子組み換え食品
 5.保健機能食品
 6.衛生管理体系

13章 職業生活と健康
A.職業による病気
 1.職業病の歴史
 2.職業病と作業関連疾患
B.労働災害
 1.発生状況
 2.労働者災害補償制度
C.職業病の予防と健康管理
 1.作業環境管理
 2.作業管理
 3.健康管理
D.近年の産業保健の問題と対策
 1.労働時間
 2.メンタルヘルス対策
 3.非正規雇用の問題

14章 保健・医療の行政
A.衛生行政
 1.衛生行政のしくみ
B.医療制度
 1.医療施設
 2.地域医療
 3.救急医療
 4.災害医療
C.医療保障
 1.国民医療費
 2.医療保険
 3.公費負担医療
D.国際保健
 1.国際協力のしくみ
 2.ODA(政府開発援助)
 3.民間の国際協力(NGO)
 4.保健に関する国連の機関

別 表
 1.死因順位の年次変動
 2.死因順位・死亡率,性・年齢階級別
 3.人口動態(率,年次別)
 4.大気汚染に係る環境基準
 5.ダイオキシン類による大気の汚染,水質の汚濁及び土壌の汚染に係る環境基準
 6.水質汚濁に係る環境基準
 7.土壌の汚染に係る環境基準
 8.騒音に係る環境基準
 9.食事摂取基準
 10.血圧値の分類
 11.BMIによる肥満の判定