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公衆栄養学
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公衆栄養学

1版

  • 大阪府立大学教授 今木 雅英 編著

定価:3,024円(本体2,800円+税8%)

  • A4判 225頁
  • 2011年4月 発行
  • ISBN978-4-525-63381-3

概要

既刊「公衆栄養学実習 学内編」「同 学外編」の姉妹本.社会集団の健康・栄養問題に対応するための学問「公衆栄養学」の講義において活用できる教科書.日本栄養改善学会策定のコアカリキュラムや管理栄養士国家試験出題基準に準拠した.さらに各章末に練習問題を配し,理解度をチェックできる.国家試験対策にも適した一冊である.

序文

わが国は,歴史上,例のない速さで高齢化が進展している.それと相まって,不適切な食生活,運動不足,喫煙習慣,睡眠不足などの生活習慣による心疾患,脳血管疾患などの生活習慣病の増大,高齢者における低栄養問題など、さまざまな健康・栄養問題が増大してきた.その結果として,国民医療費は膨張し続け,国家財政を圧迫するようになっている.このような状況の中で,管理栄養士は食・栄養の面から国民の健康を守るために重要な専門職である.
政府は,「健康日本21」,食育基本法,特定健診・保健指導など次々と新しい施策をすすめ,2000年4月に栄養士法を改正し,2002年には管理栄養士の資格制度を厚生労働大臣への登録制から免許制に切り替え,新しい施策に対応できる専門職としての基盤整備を行った.
管理栄養士は,栄養に関する広範囲な知識を十分に持ち,栄養を中心とした疾病予防を人々に実践させる力量が求められている.そのため,管理栄養士養成課程の教育目標には,栄養と健康に関する課題に取組む実践能力の育成が求められており,その目標を達成するために,実践栄養学の基幹科目として「公衆栄養学」が臨床栄養学と並んで配置されている.
著名な栄養学者である佐伯矩博士は,「栄養のことは人が何か知っているようで何も知っていない.何も知っていないようで何か知っている」と述べている.博士が述べるように、「栄養」は非常に不思議なものである.なかでも,公衆栄養学は本質を理解することが非常に難しい科目であるが,幾多の公衆栄養関連教員のご尽力により,公衆栄養学が学問体系として確立されつつあり,本質の理解の一助となっている.
公衆栄養学は,臨床栄養学,栄養教育論などと並んで,「利用するための学問」領域の中に含まれ,人間集団をおもな対象として,疾病の一次予防を主目的とした学問である.また,公衆栄養学は科学であると同時に実践活動を伴い,実践活動には行動科学や食環境などの学際的接近が求められる.さらに,地域や職域などの健康・栄養問題とそれを取り巻く自然,社会,経済,文化的要因に関する情報を収集・分析し,それらを総合的に評価・判定する能力を養うことも期待されている.
1973年,公衆栄養学は栄養士養成カリキュラムの教科課程となり,その後のカリキュラム改正により,その内容は進展している.現在,公衆栄養学は講義から始まり学内実習,保健所・保健センターなどにおける学外実習まで,知識の習得から臨地での実践へと一連の構成を持って教育されている.
従来から,管理栄養士養成教育においては臨床栄養学,栄養教育論などの各科目間の棲み分けや分担はよく論議されているが,同じ科目について「学内の講義」,「学内の実習」,「学外の実習」の連携については十分に検討されてこなかった.これは,同一の担当者の個人の裁量に委ねていることが多いからである.この点を整理し強化することにより,さらに教育効果は上がると思われる.
そのような考えから,今般「学内の講義」,「学内の実習」,「学外の実習」の連携した教科書の作成を企画した.2009年に「公衆栄養学実習学内編」,2010年に「同学外編」,そして2011年に「講義編」として本書を刊行し,いわゆる教科目の「横」の強化から,「縦」の強化が完結した.これらの公衆栄養学関連の科目を系統的に学習することにより,本質を理解し実践力が培われることを期待したい.
最後に,本書の刊行に当たり,南山堂 本山麻美子姉にひとかたならぬご尽力を頂戴したことをここに深く感謝申し上げる.
発刊後も,読者の方からの貴重なご意見を賜り,本書のさらなる充実を図ることができれば幸いである.

2011年3月
編著者 今木雅英

目次

第1章 公衆栄養学の概念
 1節 公衆栄養学の概念
  1.公衆栄養とは
  2.公衆栄養学の対象
  3.公衆栄養学と保健・医療・福祉・介護システム
 2節 公衆栄養活動
  1.生態系保全のための公衆栄養活動
  2.地域づくりのための公衆栄養活動
  3.ヘルスプロモーションのための公衆栄養活動
  4.自己管理能力(エンパワメント)のための公衆栄養活動
  5.疾病予防のための公衆栄養活動
  6.高齢社会における健康増進
 練習問題

第2章 公衆栄養マネジメント
  1.公衆栄養マネジメントとは
  2.公衆栄養マネジメントのプロセス
  3.マネジメントの対象者・実施者
  4.公衆栄養マネジメントのレベル

第3章 公衆栄養アセスメント
 1節 社会ニーズの把握
  1.ニーズとは
  2.ニーズアセスメント
 2節 公衆栄養アセスメントの方法
  1.アセスメントの理論的モデル
  2.アセスメントの一般的手法(社会調査法)
 3節 既存資料の活用
 練習問題

第4章 公衆栄養プログラム計画
 1節 計画策定
  1.計画策定の体制づくり
  2.コミュニティ・オーガニゼーション
  3.住民参加
  4.健康・栄養問題(課題)の必要性・優先性の検討
  5.課題の実施可能性
 2節 運営面のアセスメント
  1.時間,人的・物的資源,予算の検討
  2.実施の障害となる要因の検討
 3節 政策面のアセスメント
  1.政策,法規,行政機関
  2.現行関連計画との調整
  3.各種制度による保健事業との調整
  4.既存公衆栄養プログラムとの調整
 4節 計画書の作成
  1.計画に必要な項目
  2.計画書の基本的な内容
 練習問題

第5章 公衆栄養プログラムの目標設定
  1.公衆栄養プログラムの目標設定
  2.目標設定
  3.短期・中期・長期目標設定
  4.基準値(現状値)・予測値(理想値)の決定と目標値の設定

第6章 公衆栄養プログラムの実施
 1節 地域社会資源の管理
  1.人的資源の発掘・予算の確保
  2.連携・協働
 2節 コミュニケーションの管理
 3節 プログラム実施と関係者・機関の役割
  1.行政機関
  2.保健医療従事者
  3.ボランティア
  4.住 民
  5.民間企業
  6.関係組織・団体
  7.非営利団体(NPO)
 4節 公衆栄養プログラム
  1.母子の公衆栄養プログラム
  2.学童・思春期の公衆栄養プログラム
  3.成人の公衆栄養プログラム(生活習慣病ハイリスク集団も含む)
  4.高齢者の公衆栄養プログラム
  5.障がい者の公衆栄養プログラム
  6.特別用途食品・保健機能食品プログラム
  7.栄養成分表示プログラム
  8.給食施設指導プログラム
  9.食環境づくりプログラム
  10.健康づくりプログラム
  11.人材育成と活用プログラム
 練習問題

第7章 公衆栄養プログラムの評価
 1節 評価の種類
  1.評価の視点と種類
 2節 評価(研究)のデザイン
  1.評価デザインと仮説
 3節 過程(経過)評価
 4節 影響評価
 5節 結果評価
 6節 評価のフィードバック
 練習問題

第8章 栄養疫学
 1節 栄養疫学の概要
  1.疫学における栄養疫学の位置づけ
  2.栄養疫学の歴史的業績
  3.現在の栄養疫学が取り扱う分野
 2節 曝露情報としての食事摂取量
  1.食品と栄養素
  2.食事の個人内変動と個人間変動
  3.日常的・平均的な食事摂取量
 3節 食事摂取量の測定方法
  1.食事調査と栄養疫学
  2.食事調査法について
  3.秤量法
  4.24時間食事思い出し法
  5.食事記録法
  6.食物摂取頻度調査法
  7.食事摂取量を反映する生化学指標
  8.食事摂取量を反映する身体計測値
 4節 総エネルギー摂取量の栄養素摂取量に及ぼす影響
  1.栄養素密度法
  2.残差法
  3.多変量解析
 5節 疫学指標
  1.疾病頻度
  2.曝露効果の測定
 6節 疫学の方法
  1.観察的疫学研究
  2.介入研究
  3.疫学研究のデザインと妥当性
  4.因果関係の判定
 練習問題

第9章 わが国の健康・栄養問題の現状と課題
 1節 高齢社会と健康・栄養問題
  1.健康寿命
  2.要介護者の数と要介護の状態
  3.老年期認知症
  4.高齢者の保健対策
 2節 健康状態の変化
  1.感染症の時代から生活習慣病の時代へ
  2.平均寿命
 3節 食事の変化
  1.エネルギー・栄養素摂取量の変化
 4節 食生活の変化と身体状況
 5節 食環境の変化
  1.食料需給表
  2.食料自給率
  3.食品ロスと食品リサイクル法
 練習問題

第10章 わが国の栄養政策
 1節 わが国の公衆栄養活動の歴史
  1.戦前の公衆栄養活動
  2.戦後の公衆栄養活動
 2節 管理栄養士・栄養士養成制度
  1.栄養士法
  2.管理栄養士・栄養士養成制度の沿革
 3節 国民健康・栄養調査
  1.調査の法的根拠とその目的
  2.調査の沿革
  3.調査の内容
  4.調査方法
 4節 食生活指針,運動指針,休養指針
  1.食生活に関する指針
  2.運動指針
  3.休養指針
 5節 「健康日本21」と地方計画の策定
 6節 栄養所要量から食事摂取基準へ
 練習問題

第11章 日本人の食事摂取基準
 1節 食事摂取基準策定の概念
  1.食事摂取基準の目的
  2.対象者および対象集団
  3.活用の基本分類
  4.摂取源
  5.摂取期間
  6.栄養素の特性からみた分類と優先順位
  7.生活習慣病の一次予防における留意点
 2節 食事摂取基準の指標
  1.エネルギー
  2.栄養素の食事摂取基準の指標
  3.推定平均必要量
  4.推奨量
  5.目安量
  6.耐容上限量
  7.目標量
 3節 エネルギーの食事摂取基準
  1.基本的事項
  2.推定エネルギー必要量
  3.ライフステージ別のエネルギー摂取基準
 4節 たんぱく質の食事摂取基準
  1.基本的事項
  2.推定平均必要量・推奨量・目安量の算出の基本
  3.年代ごとの推定平均必要量・推奨量・目安量
 5節 脂質の食事摂取基準
  1.基本的事項
  2.脂質(脂肪エネルギー比率)
  3.飽和脂肪酸
  4.n-6系脂肪酸
  5.n-3系脂肪酸
  6.コレステロール
 6節 炭水化物の食事摂取基準
  1.基本的事項
  2.小児・成人(目標量)
  3.食物繊維
 7節 脂溶性ビタミンの食事摂取基準
  1.ビタミンA
  2.ビタミンD
  3.ビタミンE
  4.ビタミンK
 8節 水溶性ビタミンの食事摂取基準
  1.水溶性ビタミンの食事摂取基準算定に関する基本方針
  2.ビタミンB1
  3.ビタミンB2
  4.ナイアシン
  5.ビタミンB6
  6.ビタミンB12
  7.葉酸
  8.パントテン酸
  9.ビオチン
  10.ビタミンC
 9節 多量ミネラルの栄養摂取基準
  1.ナトリウム(Na)
  2.カリウム(K)
  3.カルシウム(Ca)
  4.マグネシウム(Mg)
  5.リン(P)
 10節 微量ミネラルの栄養摂取基準
  1.鉄(Fe)
  2.亜鉛(Zn)
  3.銅(Cu)
  4.マンガン(Mn)
  5.ヨウ素(I)
  6.セレン(Se)
  7.クロム(Cr)
  8.モリブデン(Mo)
 11節 食事摂取基準の活用
  1.食事改善(個人に用いる場合)
  2.食事改善(集団に用いる場合)
  3.給食管理
  4.有病者およびハイリスク群への活用上の留意点
 練習問題

第12章 諸外国の健康・栄養問題の現状と課題および健康・栄養政策
 1節 諸外国の健康・栄養問題の現状と課題
  1.人口問題と食料問題
  2.食料分配における不平等
  3.世界では今なお栄養不足人口が存在
  4.栄養欠乏症の実態
  5.肥満と生活習慣病
  6.食生活の変化
  7.疾病による生命・健康の損失(DALYs)への寄与率
 2節 諸外国の健康・栄養政策
  1.国際機関による取組み
  2.アメリカの健康・栄養政策
   「Healthy people(ヘルシーピープル)」
 3節 諸外国の栄養士養成制度
  1.国際栄養士連盟の調査報告
  2.アメリカにおける栄養士養成制度
 4節 諸外国の食事摂取基準
  1.栄養所要量から食事摂取基準へ
  2.アメリカ・カナダの食事摂取基準
  3.WHO/FAOの推奨栄養摂取量
 5節 諸外国の食生活指針,食事ガイド
  1.食生活指針・食事ガイドとは
  2.FAO/WHOによる食物ベース食生活指針
  3.「アメリカ人のための食生活指針」と食事ガイド
  4.アメリカにおける「MyPyramid(マイピラミッド)」
 練習問題

索引