書籍カテゴリー:産婦人科学|臨床薬学

妊娠と授乳
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薬物治療コンサルテーション
妊娠と授乳

第3版

  • トロント小児病院/トロント大学 伊藤真也 編
  • 国立成育医療研究センター/妊娠と薬情報センター 村島温子 編

定価:8,800円(本体8,000円+税10%)

  • B5判 777頁
  • 2020年7月 発行
  • ISBN978-4-525-70233-5

概要

妊娠・授乳中の薬剤の安全性情報が伝えられるようになる!

本書は,妊婦・授乳婦の薬物治療にかかわるすべての医療従事者から,臨床で即戦力となる書籍として高い支持を得てきた.改訂3版ではこれまでの項目をまとめ直し,医薬品情報をアップデートするとともに総合評価を見直した.1,200種類以上の薬剤が収載されており,本領域にはかかせない一冊である.

序文

本書も2010年の初版から10年が経ち,また2014年の改訂2版からはすでに6年が経過した.妊娠・授乳時の母親の薬物治療は,医療従事者の立場からすると,見知らぬ夜の海に星明かりだけを頼りに漕ぎ出すようなところがあり,知識だけでなく経験の有無が他の分野以上に大切である.これは,効果的なリスクコミュニケーションと合理的な治療法選択の両方にいえることだが,個人の経験の蓄積には時間がかかる.特に訓練を終えたばかりで,これから医療のプロフェッショナルとしての航海に出ようとする若い人たちは,妊娠・授乳中の患者さんを前にすると,どうしたらよいかわからないというのが現状ではないだろうか.本書は,この分野の第一線で活躍されている多くの先生方の力をお借りして,一種の航海術マニュアルのようなものを目指して編纂されてきた.診療現場での指針として各論を参照するでもよし,総論や症例も含めてデータ解釈の要点やリスク伝達の実際などに目を通すのもよいだろう.本で読むのと実際は違うが,十分に参考になるはずである.改訂3版は最近の知見を加え,またここ数年使われるようになってきた新しい薬も含めて解説してある.執筆者の先生方には,この場をお借りして感謝の気持ちをお伝えしたい.

妊娠・授乳中の薬物治療は,薬のもつ催奇形性や胎児毒性などの即時的な安全性の問題に焦点が当たるのは当然だが,大きく捉えたEarly−Life Exposureの一側面としての性格もある.このEarly−Life Exposureという考え方は,環境因子や母親の疾病自体の影響,そして妊婦・授乳婦が摂取する薬物など,胎児期も含めた発達成長中の小児が曝される因子の児自身への短期・長期的影響,さらに世代を超えて広がる隔世的影響などの広い概念である.その影響は疾病として現れることもあれば,進化の要因として認識されることもあるかもしれない.30年以上にわたって,薬物の胎児毒性の診療・研究をリードしてきたトロント小児病院のマザーリスクは2019年にその役目を終えたが,各方面からの強い要望もあり,現在,胎児・新生児・小児の薬物曝露をEarly−Life Exposureの一つと捉えて,その診療・研究・教育へ取り組む新しいプログラムとして生まれ変わる準備がトロントで進んでいる.

“サリドマイドの悲劇”の幕が切って落とされてから60年あまりが経過した.有機水銀による胎児性水俣病の発生が報告されたのも,サリドマイド禍と同じ頃である.社会や患者本人,そしてその家族に,今でもさまざまな形で影響を与えているこれらの出来事を原点として安全性情報を蓄積してきたこの分野が,これからさらに大きく社会に貢献していけるかどうかは,われわれ一人ひとりの気構えにかかっているように思う.乗組員の世代交代はあるとしても,まだまだ夜の航海は続くだろう.その旅が実り多く安全なものになる手助けの一つとして,本書が少しでもお役に立てれば幸いである.

最後に,本書の企画から出版までお世話になった南山堂編集部の皆様と,臨床の現場で,妊娠・授乳中の薬の安全性について率直な疑問をぶつけてくれた,たくさんのお母さんたちに,心から感謝して締めくくりたい.

2020年7月
編者を代表して  伊藤真也

目次

第1章●総 論

1 産科医療の基礎知識
妊娠期における薬物治療の基本
妊娠の時期と薬剤曝露の影響
父親の薬剤使用における胎児への影響
胎児毒性
先天異常の疫学・分類・診断
染色体異常,出生前診断
不妊治療と使用薬の影響

2 授乳と薬の基礎知識
授乳婦への薬物治療
薬剤の母乳移行と乳児の薬剤曝露

3 妊婦・乳児の薬物動態
妊婦の薬物動態
新生児・乳児の薬物動態

4 妊婦・授乳婦に対する医薬品の情報源
生殖発生毒性試験
EBM・臨床疫学研究デザインおよびその結果の解釈
日本における医薬品添付文書の記載要領と問題点
諸外国の妊娠・授乳と薬に関する情報源

5 妊娠・授乳と薬カウンセリングの実際
厚生労働省「妊娠と薬情報センター」事業
世界の「妊娠・授乳と薬」相談事業
妊娠期の情報提供(カウンセリング)の留意点
授乳期の薬物治療における親子へのケア


第2章●妊娠・授乳期における医薬品情報

1 抗菌薬
2 抗ウイルス薬
3 抗インフルエンザウイルス薬
4 抗真菌薬
5 抗寄生虫薬
6 抗悪性腫瘍薬
7 免疫抑制薬
8 副腎皮質ホルモン薬
9 解熱・鎮痛・抗炎症薬
10 オピオイド鎮痛薬
11 抗ヒスタミン薬・抗アレルギー薬
12 抗リウマチ薬
13 糖尿病治療薬
14 脂質異常症(高脂血症)治療薬
15 痛風・高尿酸血症治療薬
16 女性ホルモン剤
17 甲状腺疾患治療薬
18 骨・カルシウム代謝薬
19 造血薬
20 止血薬
21 抗血栓薬
22 降圧薬
23 抗不整脈薬
24 心不全治療薬
25 血管拡張薬
26 利尿薬
27 気管支拡張薬・気管支喘息治療薬
28 鎮咳薬・去痰薬
29 健胃消化薬・胃腸機能調整薬
30 消化性潰瘍治療薬
31 鎮痙薬・制吐薬
32 腸疾患治療薬
33 整腸薬・止瀉薬・下剤
34 肝炎治療薬
35 抗うつ薬
36 抗躁薬
37 抗不安薬
38 睡眠薬
39 抗精神病薬
40 抗てんかん薬
41 片頭痛治療薬
42 めまい治療薬
43 自己免疫性神経疾患治療薬
44 眼科・耳鼻科・歯科・口腔用剤(外用)
45 皮膚科用剤
46 泌尿器用剤
47 ワクチン
48 OTC薬・漢方薬・サプリメント
49 嗜好品・禁煙補助薬
50 放射線(診断用)


第3章●症例から学ぶ妊娠・授乳期の薬物治療

1 うつ病
2 双極性障害(躁うつ病)
3 てんかん(カルバマゼピン服用の場合)
4 てんかん(バルプロ酸服用の場合)
5 甲状腺機能亢進症(バセドウ病)
6 関節リウマチ
7 皮膚筋炎・甲状腺機能低下症・気管支喘息
8 気管支喘息
9 アレルギー性鼻炎
10 気管支炎
11 インフルエンザ
12 尿路感染症
13 クラミジア感染症・嗜好品
14 重症の水痘
15 消化性潰瘍
16 潰瘍性大腸炎
17 高血圧
18 糖尿病・脂質異常症
19 難治性痤瘡
20 悪性腫瘍
21 骨折・捻挫による疼痛
22 ワクチン接種


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