書籍カテゴリー:臨床薬学|総合診療医学/プライマリ・ケア医学

アルゴリズムで考える薬剤師の臨床判断
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アルゴリズムで考える薬剤師の臨床判断
症候の鑑別からトリアージまで

1版

  • 昭和大学薬学部薬学教育学教授 木内祐二 編

定価:3,024円(本体2,800円+税8%)

  • B5判 181頁
  • 2015年9月 発行
  • ISBN978-4-525-70291-5

概要

薬剤師による「臨床判断」とは,心身の異常や症候を訴える来局者の健康相談に適切に対応し,疾患や病状を推測した上で緊急対応,受診勧奨,OTC薬の推奨、生活指導などから妥当な対応方法を選択(トリアージ)する,この一連の臨床推論・判断の流れである.
本書は,薬局で活用できる臨床判断アルゴリズムをもとに12症候の臨床判断を解説した.

書評

越前 宏俊 先生(明治薬科大学 薬物治療学 教授)
この度,木内祐二先生を編者として,ほか21名の医療薬学分野の教育と研究に貢献されている錚々たる医師と薬剤師の方々が執筆された... [ 続きを読む ]

序文

推薦の序


 超高齢社会を迎え,地域住民がライフステージを通して,健康なときから医療・介護が必要となったときまで,薬局・薬剤師は,その生活をサポートする地域の身近なパートナーとして,「かかりつけ薬局」「かかりつけ薬剤師」という立場から役割を果たしていく責務があります.しかしながら,薬局の現状は,処方箋調剤に偏重するあまり,薬局本来の役割・機能を十分に発揮していないことが多く,国民からは「薬を調剤してもらうところ」というイメージで捉えられています.
 昭和50年代初頭までの薬局は,一般用医薬品・健康食品供給等を主として地域住民のファーストアクセスの場として活用され,健康づくり支援の役割を果たしていました.日本の経済は高度成長期であり,医療機関・専門医が少ない時代で,自分で健康の維持や自己治療を行っていた時代でした.昭和50年4月30日に,薬事法の薬局距離制限が違法という判決が下り,それまで100m以内に薬局を開局できなかったのですが,規制緩和の大きな流れもあり,郊外型大型店舗,繁華街へのドラッグストアなど,出店が相次ぐようになりました.その結果,地域薬局への一般薬購入来店客数が減少し,薬局・薬剤師による健康づくり・健康相談の業務・職能は低下していきました.
 このような状況のなかで,平成25年に示された国の日本再興戦略で,「薬局を地域に密着した健康情報の拠点として,一般用医薬品等の適正な使用に関する助言や健康に関する相談,情報提供を行う等,セルフメディケーションの推進のために薬局・薬剤師の活用を促進する」と記載されました.
 このことは,薬局の健康支援機能に対する社会からの期待とも言えます.
 薬局としての責務を果たし,地域の医療・保健に貢献するためには,薬剤師の職能を最大限に発揮する薬局として薬局の姿を変えていく必要があります.
 日本薬剤師会では,薬剤師が地域のチーム医療の一員として薬学的ケアの観点から,セルフメディケーション支援やプライマリ・ケアの体系的な学習として,都道府県薬剤師会の指導者を対象に「薬剤師の薬学臨床判断と一般用医薬品適正研修事業」を行っています.具体的には,来局者への健康相談や調剤時の患者対応,在宅患者訪問等の際,患者の状態を適切に観察・把握し,的確な対応並びにトリアージ業務を行うことです.薬剤師によるトリアージ業務とは,相談者から情報収集等を実施し,その評価の結果,一般用医薬品の使用,医療機関への受診勧奨,養生法等の生活指導などに振り分けて生活者に提案する業務のことです.
 本書は,医療面談の基本が症状ごとに具体的に示されており,セルフメディケーション支援のための業務が網羅されています.
 本書が,薬局・薬剤師にとって必携の書として活用されることを切に望んでおります.

2015年夏
公益社団法人 日本薬剤師会
副会長 生出泉太郎






 これからの医療では,医師の不足や偏在,超高齢化の進展などの要因から,薬局が地域の主要な医療施設としてより積極的に機能し,地域住民に対するプライマリ・ケアの窓口として,また,セルフメディケーションの支援者として,薬局の薬剤師が地域住民に対し健康の回復,維持,向上に責任ある判断と行動をすることが期待されています.この期待に応えるためには,処方箋調剤と服薬指導に加え,心身の異常・症候(症状)を訴える来局者の健康相談に適切に対応して疾患や病状を推測し,OTC薬の推奨や受診勧奨などから妥当な対応方法の選択(トリアージ)を行う能力が求められます.この一連の薬剤師の臨床推論・判断の流れと責任ある行動を本書では臨床判断と呼びます.また,近年,増加している在宅患者への訪問時にも,薬剤師自らが患者の病状を把握し,病状の変化時に適切に対応する必要がありますが,その際にも的確な臨床判断の能力が求められます.
 しかし,従来の大学の薬学教育や卒後教育の多くは疾患単位で行われていたため,病名がわかっていれば症候は思い浮かびますが,逆に症候を訴える患者から病気を推測したり絞り込む(鑑別する)という「逆引き」の系統的な学習が行われていませんでした.さらに,最善の治療や対応方法を,患者の状態や背景と臨床的エビデンスに基づいて薬剤師が自ら判断するというトレーニングも行われていません.そのため,多くの薬剤師は,薬局窓口や在宅で症候を訴える患者に対して,的確な判断に基づいて適切なトリアージをすることに困難を感じていたのではないでしょうか.
 本書では,薬局などでしばしば遭遇する代表的な症候を訴える来局者に適切に対応するため,症候別に,「基本的な症候を示す疾患」を発生頻度の高い疾患,見逃してはならない緊急性の高い疾患,その他の疾患に分けて概説し,「来局者からの情報収集と疾患推測」として,各疾患の症状の特徴を患者から得られる情報(LQQTSFA)別に整理するとともに,臨床判断に活用しやすいようにアルゴリズムを提示しました.また,薬局でトリアージを行う際のポイントを「来局者に対する判断と対応」にまとめ,緊急対応,受診勧奨,OTC薬などの選択の指標を示しました.本書を,薬剤師の日常の業務のみならず,薬学生の実習や卒後の研修などでも幅広く利用していただき,これからの薬剤師に求められる基本的な能力である臨床判断の実践に役立てていただければ,何よりの幸いです.

2015年夏
編者 木内祐二

目次

第1章 総論
 1 薬剤師による臨床判断のプロセス
 2 薬剤師のとっての臨床判断

第2章 アルゴリズムで考える臨床判断
  1 発 熱
  2 頭 痛
  3 発 疹
  4 浮 腫
  5 嚥下困難・障害
  6 腹 痛
  7 下痢・便秘
  8 動悸・心悸亢進
  9 咳・痰・呼吸困難
 10 記憶障害
 11 めまい
 12 腰 痛

あとがき