書籍カテゴリー:臨床薬学|基礎薬学

CRAの教科書
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CRAの教科書

1版

  • 医療健康資源開発研究所 代表理事 小嶋 純 編

定価:2,700円(本体2,500円+税8%)

  • A4判 141頁
  • 2015年7月 発行
  • ISBN978-4-525-70311-0

概要

CRAが円滑なモニタリング業務を行うために,CROや製薬企業では自社教育で新人CRAの教育を行い,レベルの向上を図っている.しかし現状では,教育にあたり標準的な教科書などが存在せず,独自の資料を用いている企業が大半である.そこで本書は,CRAに必要な項目を網羅し,標準的な教育用テキストとして活用できる書籍とした.

序文

 製薬会社や医療機器会社は,医療用の医薬品や機器の製造販売の許可を得るために種々の試験を行います.その中でヒトを対象とした試験を,臨床試験あるいは治験と呼び,その試験における種々の業務を専門に行う人たちをCRA(Clinical Research Associate)あるいはモニターと呼びます.
 治験は,新しい薬や医療機器をヒトに有効かつ安全に使用するための試験ですが,モニターが直接ヒトに試験を行うことはできません.実際に試験を行うのは医師となります.製薬会社等はヒトに試すまでに長い歳月と膨大な費用を費やし,最終的な判断を下す治験において,ヒトでの有効性ならびに安全性を評価します.それまでの動物を用いた試験で素晴らしい有効性が示されていても,ヒトを対象とした治験で有効性を示すことができなければ,薬や医療機器としての製造販売の許可を得ることはできません.それ故に,治験は薬や医療機器を開発する上でとても重要となり,モニターの責務も大きくなります(もちろん,やりがいも大きい!).例えば,治験の計画書が完璧で,それを実施する医師も完璧であれば,モニターは何もせずして良い治験結果を得られるかもしれません.しかし,計画書を作成するのも人ですし,医師も人ですから,そうやすやすと完璧は望めません.
 モニターが行う仕事については,国は「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令(Good Clinical Practice: GCP)」を定め,そのGCP省令の中に記載されています.モニターは,あらかじめ立てられた治験計画書に則り,その通りに適切に実施できるように,種々の手続きを行うとともに,医師や治験事務局,薬剤部との情報交換を行い,治験が適切に行われているのか確認し,問題があった場合にはすぐに是正することに努めなくてはなりません.なお,このモニター業務の全部または一部を,医薬品開発業務受託機関(Contract Research Organization:CRO)に委託することも可能です.
 このモニター業務を行うためには,製薬会社や医療機器会社の開発部門やCROで,入社後に一定の教育を受ける必要があります.しかし,「一定の教育」の内容の規定がないのが現状です.実際,各会社やCROにより教育内容や講義時間はさまざまなため,一口にモニターといっても治験の監視・確認の方法や,臨床の結果に対する判断も異なり,モニタリングのレベルに差が出てきます.そしてその差が,治験の精度や結果に影響を与えることになりかねません.
 臨床開発部等に配属された新入社員にとって最初のモニター業務は,今後のモニターとしての実力に大きく影響するともいえる,モニター教育を受講することです.どこの会社(製薬会社,CROなど)でも,たいてい,モニターとして一人前に業務が行えるまで教育が行われます.「医薬品が開発されるまでの流れ」や「GCP」などを,入社前にはまったく知らなくても,配属されてから十分な教育時間をかけてもらえます.会社により異なりますが,期間は半年から1年間,日本CRO協会の定めるところでは最低でも240時間以上もの時間が新人のモニター教育に費やされます.
 その教育の内容は,大筋ではどこも同じであるとは思いますが,会社により教育内容はさまざまです.そのことが,モニターの質に影響している可能性は否定できません.当然ながら,講義時間が同じでも教育内容が異なれば,受講者の質は異なってくるでしょう.
 では,なぜ教育内容が異なるのでしょうか.その要因の1つに,モニター教育に適した教科書がこれまで存在しなかったことがあげられます.各社が独自のノウハウを含めた講義を行っていたことから,教科書は存在し難かったとも考えられます.
 そこで,質の高いモニターを育てるために『CRAの教科書』を作ることを考え,本書の発刊に至りました.もちろん,各社でも「良いモニター」となるように教育が行われているわけですが,GCPの知識を詰めこむだけでは,「良いモニター」には成り得ません.本書でも中心となるのはGCP の理解ですが,それにとどまらず,現場に出てより良いモニター業務を行うための実践的なエッセンスをたくさん盛り込みました.また,本書の最後の章にあるような,他職種から求められている「良いモニター像」を理解し,いかに「良いモニター」になるか考えるきっかけとしてください.
 本書がモニター教育のなかで広く活用して頂けることを願ってやみません.
 最後に,ご多忙中にもかかわらず,ご執筆いただいた執筆者の方々に深く感謝するとともに,本企画に惜しみない協力をいただいた関係各位に感謝いたします.

2015年初夏
小嶋 純 

目次

第1章 モニター業務の全体像
・モニターという仕事

第2章 実際にモニターをやってみよう
 1 大まかな業務の流れ
 2 組織体制
 3 標準業務手順書(SOP)の作成
 4 モニタリング報告書の作成
 5 医療機関,治験責任医師,医学専門家の選定
 6 治験実施計画書の合意
 7 同意説明文書の作成
 8 治験の手続き
 9 治験の費用
 10 治験薬管理
 11 スタートアップミーティング
 12 症例エントリーの推進
 13 原資料の直接閲覧,SDV
 14 カルテの見方
 15 臨床検査値の見方
 16 逸脱(不遵守)の処置
 17 安全性情報
 18 健康被害補償
 19 症例報告書(CRF)の回収・点検・修正
 20 データマネジメント
 21 統計解析
 22 治験総括報告書の作成
 23 適合性書面調査とGCP 実地調査
 24 必須文書(治験に係る文書または記録)

第3章 他職種から求められるモニター像
 1 CRC から見たモニターの現状
 2 医師から見たモニターの現状

Monitoring Room(コラム)
・国際共同治験で活躍するモニター
・対面助言
・医師主導治験への対応
・治験実施計画書の作成
・モニタリング報告書:良い報告書・悪い報告書
・モニターのマナー
・中央検査
・倫理
・治験の費用と契約
・温度管理
・小児領域の治験
・採血時期と採血者
・承認申請に必要な書類
・併用禁忌の薬剤
・わが国における審査体制
・薬価