書籍カテゴリー:精神医学/心身医学|臨床薬学

精神科医×薬剤師クロストークから読み解く精神科薬物療法
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精神科医×薬剤師クロストークから読み解く精神科薬物療法
多職種連携から生まれる新しいコミュニケーションの提案

1版

  • 順天堂大学越谷病院メンタルクリニック教授 鈴木利人 編
  • 杏林大学医学部精神神経科学教室教授 渡邊衡一郎 編
  • 浅井病院薬剤部長 松田公子 編
  • 虎の門病院薬剤部長 林 昌洋 編

定価:3,996円(本体3,700円+税8%)

  • B5判 324頁
  • 2014年4月 発行
  • ISBN978-4-525-77091-4

概要

「抗不安薬,睡眠薬、抗うつ薬や抗精神病薬などの向精神薬の多剤大量処方はどう整理する?」「妊婦への向精神薬投与は?」「ベンゾジアゼピン系薬の減らし方は?」「向精神薬の副作用や過量服薬時への対応は?」「クロザピンやECTの導入は?」…精神科薬物療法上の疑問を症例を基に具体的に解説!精神科医と薬剤師がエビデンスに基づいて対話し,治療や処方薬を決定するプロセスがよくわかる!薬剤師からの処方提案も学べる一冊!

序文

 平成24年度の診療報酬改定(病棟薬剤業務実施加算)により,薬剤師業務に関して病棟に薬剤師を配置する診療体制が導入されるようになりました.これにより薬剤師が入院患者を身近な立場から患者の診療に臨むことができるようになっただけではなく,医師や看護師とより一層緊密に情報交換する機会がもてるようになりました.本書の目的は,こうした背景を踏まえ,精神科医と薬剤師が患者の薬物療法に関して双方向的に情報を交換し検討する状況を読者に具体的に理解して頂くことにあります.
 最近の精神科薬物療法の話題の一つとしてクロザピンという新薬の使用が挙げられます.効能はもちろんのことですが,注目すべきはその安全かつ適正な実施にあたり院内に精神科医,薬剤師,看護師などからなる多職種連携チームを作り,定期的な話し合いを持つことが義務付けられていることです.クロザピンというある意味特殊な薬剤に対する特別な対応ではありますが,これまでの向精神薬の使用に対してこのような体制作りは,わが国の精神医療では皆無に等しかったという点で画期的といえます.また患者の社会復帰などに関して,しばしば精神科医や看護師,精神保健福祉士などの多種職間で検討会が実施されている一方で,これまで薬剤師との連携が乏しかった現実も改めて浮き彫りになったようにも思います.本書は近い将来,このような状況を少しでも変えていくことに寄与できればとの編者の想いが込められています.
 さて,読者の皆さんは本書のスタイルが従来の参考書とは明らかに異なっていることにお気づきのことと思います.本書では個々の症例に医療上の“ある問題”を想定させるなど臨床場面をより具体化させた上で,それに対する対処法を精神科医と薬剤師で議論する方式を採っています.また患者を現病歴という疾患の経時的変化を丁寧に提示させ,疾患の臨床像を読者にわかりやすく伝えられるようにしています.精神科医と薬剤師のクロストークは可能な限りバランスのとれた会話内容にしており,その内容は明日変わるかもわからない最先端的内容ではなく,薬物療法の基本的事項を重視し作られています.
 実際に病院間で精神科医と薬剤師とのクロストークの充実度には格差があるだろうことは想像に難くありません.読者の中には,「このようなクロストークは自分の病院では現実的ではない」と考える方もいるでしょう.また「薬物療法は医師の専権事項だ」と考える医師もいるでしょう.しかし,将来的に医療の質をさらに充実させるための方策の一つとして,薬剤師が今まで以上に多種職連携を通して治療に参加できる体制を院内に作る取り組みが必要なことは,クロザピンの例をみても明らかであると思います.当然,これにより薬剤師は十分なクロストークに必要な技量を求められることでしょう.とりわけ精神疾患自体に対して今まで以上の理解が求められる可能性があります.
 本書では総論も設け,簡単ですが精神疾患の特徴を紹介しています.また何よりもクロストークの中で,精神科医による疾患の説明にも注目して本書を熟読して頂きたいと思います.
 クロストークは薬剤師だけではなく精神科医にとっても有益で,薬物治療上の知識の補完により医療事故を未然に防止できることにも繋がります.また精神科医は自身の薬物療法の内容を他の医療者に公表することにより,一層適切で合理的な薬物療法を心がけるようになり,その結果,安易な多剤大量療法の予防にもつながると考えています.このように精神科医と薬剤師がこれまで以上に緊密な連携を取り,薬物療法で問題を抱える患者を中心にクロストークすることで,医療内容の充実と医療安全の向上に繋がることと確信しています.
 本書の編集にあたり精神科医の側から杏林大学医学部精神神経科学教室の渡邊衡一郎先生に,薬剤師の側から日本病院薬剤師会副会長の松田公子先生,虎の門病院薬剤部長の林昌洋先生に大変貴重なご意見を伺い,多大なご尽力に改めて深謝申し上げる次第です.またクロストークに参加頂いた諸先生方におかれましても,新しいスタイルの執筆にご苦労されたことと思いますが,先生方の熱い思いが症例を通して読者の皆さんに伝わることと信じて おります.本書が精神科医と薬剤師の先生方の,双方向的な精神科薬物療法に関する意識改革の契機となりますことを編者一同心より切望しております.
 最後に,本書の出版にあたりご尽力頂いた株式会社南山堂の関係者の皆様に深謝いたします.

2014年3月
編者代表 鈴木利人

目次

第1章精神疾患と治療薬の基礎知識
1.疾患
01.統合失調症
02.気分障害
03.不安障害
04.認知症
2.治療薬
01.抗精神病薬
02.抗うつ薬
03.抗不安薬
04.睡眠薬
05.気分安定薬
06.認知症治療薬


第2章症例から読み解く精神科薬物療法
1.統合失調症
症例01.再燃と入退院を繰り返した統合失調症の患者
症例02.抗精神病薬投与による高プロラクチン血症と乳汁漏出に悩んだ患者
症例03.第一世代抗精神病薬投与中に症状が再燃し,入院後MARTAが奏功したが体重増加,脂質異常症を呈した患者
症例04.初発で急性期に幻覚妄想と著しい興奮状態を呈した患者
症例05.入退院を繰り返すなかで第一/第二世代抗精神病薬を含む多剤大量処方となった入院患者
症例06.長期隔離の解消と社会復帰のためにデポ剤を導入した患者
症例07.薬物療法や修正型電気けいれん療法に治療抵抗性を示し,クロザピン導入を検討した患者

2.うつ病
症例08.初発うつ病で入院となった患者
症例09.初発のうつ病で,外来での抗うつ薬治療が奏功せず,入院となった患者
症例10.入院患者で抗うつ薬が奏功せず,不安・焦燥・希死念慮を認めたため,m-ECTを検討した患者
症例11.抗うつの副作用のため,減薬・処方変更を検討した患者
症例12.精神病性うつ病で入院となった患者
症例13.うつが遷延し多剤を投与されていて,入院後に処方を検討した患者

3.双極性障害
症例14.躁状態で入院となった患者
症例15.うつで入院となったが,病識のない双極Ⅱ型障害が疑われる患者
症例16.入院となったが,気分安定薬・非定型抗精神病薬の副作用やモニタリングについて理解が不十分な患者
症例17.1年の間に躁うつを5回も繰り返す急速交代型の患者

4.不安障害
症例18.パニック障害でパニック発作が改善せず,入院となった患者
症例19.不安により抗不安薬の頓服に頼り過ぎるため,過量服用となり入院となった患者
症例20.全般性不安障害で入院となったが,多剤併用によりBZD受容体作動薬が漫然と長期投与されていた患者

5.睡眠障害
症例21.中年患者でベンゾジアゼピン系睡眠薬への依存傾向が強く,多剤併用している患者
症例22.高齢かつ治療に前向きであるが,多剤併用による副作用の発現がみられる患者
症例23.閉塞性睡眠時無呼吸症候群やレストレスレッグス症候群など身体疾患が隠れている不眠症患者

6.リエゾン・自殺関連
症例24.処方薬を使って過量服薬に至った双極性障害患者
症例25.入院中に自殺を企図しそうな患者

7.認知症
症例26.物忘れを主訴として,その後アルツハイマー型認知症と診断され,薬物療法を開始された患者
症例27.幻覚妄想を呈し,レビー小体型認知症が疑われた患者
症例28.当初うつ病(血管性うつ病)を発症し,その後血管性認知症が顕在化した患者

8.妊娠関連
症例29.統合失調症治療中に妊娠した患者
症例30.うつ病治療中に妊娠し,その後出産し産褥期を迎えた患者

索引