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カテゴリー: 感染症学  |  臨床薬学

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もう迷わない!

抗菌薬Navi

改訂3版

愛知医科大学大学院医学研究科 臨床感染症学 教授 三鴨廣繁 監修
名古屋セントラル病院 薬剤科 坂野昌志 編著
安城更生病院 薬剤部 奥平正美 著
地域医療機能推進機構 中京病院 薬剤部 中根茂喜 著

定価

3,080(本体 2,800円 +税10%)


  • A5判  343頁
  • 2021年10月 発行
  • ISBN 978-4-525-77443-1

大好評の感染症治療薬の攻略本が,新しくなってさらに充実!

感染症治療薬を処方・管理する初学者に押さえてほしいポイントを解説した攻略本.PK/PDの考え方から,100種類を超える薬剤の臨床上重要な特徴をまとめました.
世代による違いや,薬剤同士の特徴を比較することで,「ほかの薬と比べて何が違うのか?」という疑問を解決し,初学者の感染症治療薬の理解へ繋げます.
今回の改訂では,内容のアップデートに加え,感染症治療に用いられる抗体医薬品やCOVID-19治療薬の項目を追加.

  • 序文
  • 目次
  • 書評1
  • 書評2
  • 書評3
  • 書評4
序文
 おかげさまで「もう迷わない!抗菌薬Navi」は好評をいただき,改訂3版を発行することになりました.改訂3版も坂野昌志先生のリーダーシップのもと,2版より執筆者としてお迎えしたAST(Antimicrobial Stewardship Team)でご活躍されている現役薬剤師,奥平正美先生,中根茂喜先生とともに編集を進めてきました.従来から,本書はASTで活躍する薬剤師の先生方だけではなく,研修医,看護師,医学部学生,薬学部学生にも利用いただいてきました.改訂3版は,新しく上市された薬剤に加えて,新しく創生されたエビデンスも含めて改訂されています.
 感染症は,入院,外来問わずに認められ,高齢者,腎機能低下者,肝機能低下者,免疫不全者,小児など,どのような人にも発症し得る疾患です.このような背景もあるため,感染症治療に関与できる能力を身につけることはすべての薬剤師にとって必要であると考えられます.感染症診療の基本は,適切な検体採取と検査に基づいた診断,適切な抗感染症薬の選択と投与,必要な場合は早期のドレナージ・外科的介入に尽きると思います.もちろん適切な診断,ドレナージ・外科的介入の必要性について言及していただくことも重要だと考えますが,感染症診療において,薬剤師が最も期待されていることは,病態や医薬品の特性を理解した上での選択,病態に応じた投与量の調節,調整方法や投与経路,服用方法の指導,投与後の薬効,有害事象評価などだと思います.感染症の多くは急性期疾患であるため,患者さんの予後は見やすくやりがいも大きいと思います.しかし,抗感染症薬に注目しても,薬剤選択,投与量調節,服薬指導,有害事象観察など,初学者にとっては,何に注意してよいのか不安となることも多いと思います.そのような場面でご利用いただきたいのが「抗菌薬Navi」です.
 初学者は,理解しておくべき情報がまとめられているSTEP 1を参考にしていただきたいと思います.薬剤の特徴が理解できていれば,STEP 2で当該薬剤がどのような感染症や微生物に対して使用されるのか学んでいただきたいと思います.さらに,STEP 3では適切な投与方法を行うために必要な知識を復習,確認いただき,「一歩進んだ臨床応用」では発展的な内容を理解し,ご自身の新たな研究課題を見つける契機にしていただければと考えています.
 本書を利用することで,感染症を専門とする薬剤師が一人でも多く誕生すること,感染症を専門としなくても感染症に理解がある薬剤師が誕生することを切に願っております.また,医師,臨床検査技師,看護師,医療系学生の皆さんの学習に役立てていただければ幸いです.

2021年9月
愛知医科大学大学院医学研究科 臨床感染症学 教授
三鴨廣繁
目次
第1章 今日から使えるPK/PDの基礎知識
・抗菌薬側からみた感染症治療の考え方
・PK/PDの基本事項
・MICと耐性菌

第2章 今日から使える抗菌薬の基礎知識
1 ペニシリン系抗菌薬
2 セフェム系抗菌薬
3 カルバペネム系・ペネム系抗菌薬
4 アミノグリコシド系抗菌薬
5 キノロン系抗菌薬
6 マクロライド系抗菌薬
7 テトラサイクリン系抗菌薬
8 抗MRSA薬
9 その他の抗菌薬
 ・モノバクタム系抗菌薬
 ・ホスホマイシン系抗菌薬
 ・ST合剤
 ・リンコマイシン系抗菌薬
 ・メトロニダゾール
 ・ストレプトグラミン系抗菌薬
 ・グリシルサイクリン系抗菌薬
10 抗体医薬品
 ・抗CDトキシンBヒトモノクローナル抗体
 ・抗RSVヒト化モノクローナル抗体
11 抗真菌薬
12 抗結核薬
13 抗ウイルス薬
 ・抗ヘルペスウイルス薬
 ・抗サイトメガロウイルス薬
 ・抗インフルエンザウイルス薬
 ・抗肝炎ウイルス薬

第3章 今日から使える微生物の基礎知識
・微生物の分類と特徴
・代表的な微生物
書評1
前田賴伸(福山大学薬学部薬剤情報解析学研究室 教授)

 感染症は臓器横断的な疾患で,どの診療科であっても必ず遭遇する疾患です.近年,抗菌薬適正使用支援チーム(antimicrobial stewardship team:AST)のなかで,薬剤師は中心的な役割を果たしております.また感染症領域では,日本感染症学会,日本化学療法学会などが各種ガイドラインを策定しているため,医療現場では医師,薬剤師などがガイドラインに準じて治療しているのが現状です.本書のまえがきに編集者の坂野氏(名古屋セントラル病院)は,「ガイドラインの見方さえわかっていれば電子カルテだけを見て抗菌薬の選択は可能で,カンファレンスの場などで「ガイドライン的には〇〇です」といった発言をする薬剤師が多くいる.抗菌薬について患者の視点に立った深い議論になった際に言葉に詰まる場面をみると,表面的にガイドラインを見ているだけで,なぜその薬剤が選択されるのか? という本質を理解できているのか疑問に思う」と述べられています.つまり”目の前の患者への妥当性を吟味する必要がある”ということです.
 この妥当性を吟味するためには,待望の第3弾「もう迷わない! 抗菌薬Navi」があります.本書は,病態や医薬品の特性を理解したうえでの選択,病態に応じた投与量の調節,調製方法や投与経路,服用方法の指導,投与後の薬効,有害事象評価などを実践していくうえで有用です.特に,PK/PDパラメータによる投与法を知ろう,一歩進んだ臨床応用,少し詳しい内容を知ろう,などの項目もあり,非の打ち所のない構成となっています.
本書を用いればガイドラインに準じた治療をさらに個別化することができ,目の前の患者を治癒させることができると信じております.
書評2
読んでよし,調べてよし,使ってよし.三方よしの書籍!

枦 秀樹(東京ベイ・浦安市川医療センター 薬剤室)

 感染症診療において,抗菌薬選択は最後に決定すべき事項である.
 臨床家が適正な抗菌薬を選択することで,患者のアウトカムに改善をもたらし,耐性菌の減少に寄与できる.当然のことながら,抗菌薬を選択する際は抗菌薬の基礎知識と適応を熟知しておく必要がある.本書は抗菌薬の基礎的な内容を体系的に学べる書籍になっており,これから抗菌薬を学ぼうとする初学者にとって有用である.本書を熟読することで,必要な知識を多く得ることができる「読んでよし」の書籍である.
 しかし,抗菌薬を選択するすべての医療者が,基礎的な事項を把握できていればよいが,そうはいかない.そのため抗菌薬適正使用支援(Antimicrobial Stewardship:AS)が必要となる.ASにより抗菌薬使用の適正化を行う際は,感染症診療と同様のプロセスが必須である.そのため施設によっては対象症例が多くなり,膨大な時間が必要になる.ほとんどの病院ではASを行う人員は限られているため,抗菌薬の情報を検索する際,医療者の業務負荷が大きい.そんなときは,本書を開いてほしい.抗菌薬の基礎知識と薬剤同士の違いから,投与後のフォローアップが必要な事項までが網羅され,必要な情報を即座に調べることができる.特に各項目に掲載の表は,抗菌薬ごとのパラメータ,腎機能障害時の投与量や投与方法がきれいにまとまっており,臨床現場で活用しやすい「調べてよし」の書籍である.
 また,これまでマップ(目的地)の役割を担う書籍は数多くあったものの,Naviを担う書籍はほとんどなかった.臨床では抗菌薬の選択からフォローアップまでの道のりは長く,情報に溺れてしまうことを頻繁に経験する.しかし,本書がNaviの役割を担ってくれることで,適切な抗菌薬を選択できるようになる.一般的にNaviというものは古い情報ではその役割を果たせない.むしろ新しい情報を反映していなければ,誤った方向に導いてしまう危険性がある.本書はナビゲータである臨床家により,最新の情報に更新されており,臨床現場で活用できる「使ってよし」の書籍である.
 本書は読んでよし,調べてよし,使ってよし,三方よしの書籍であり,読者の目的によって使い分けることができる良書である.
 ちなみに,タイトルは“抗菌薬”としているが,抗真菌薬や抗ウイルス薬まで網羅されている.感染症診療やASを行う際は,真菌感染症やウイルス感染症を考慮すべき時があるため,抗真菌薬や抗ウイルス薬まで詳細に情報が記載されていることは嬉しい.本書は学習・検索・臨床利用のいずれのニーズも満たす.これがあれば,もう迷わない.ぜひ,本書を用いて施設のAS活動を推進していただければ幸いである.
書評3
「不勉強」ではない薬剤師が感染症に新たな視座・視点・視野を与えるコスパ最強の良書

笠井正志(兵庫県立こども病院 感染症内科 部長)

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“医師は患者を診る,看護は患者を看る,では薬剤
師は?(中略)「視る」”

第3版序文 坂野昌志
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 「不勉強ですが,○○病院薬剤師の△と申しますが,教えてください」と,薬剤師さん向けの講演会や学会などで講演すると,必ず前置きに「不勉強な」がつくことが多い気がします.質問の内容は全然不勉強ではない鋭い内容が多いです.この前置きは謙虚さを示すばかりではなく,もっと勉強したいという欲望が含まれているのではないでしょうか.
 「抗菌薬Navi」(以下,「ナビ」)初版の上梓が2010年です.当時は薬剤師さんが執筆した薬剤師さんのための抗菌薬書籍は少なく,おそらくその頃同じように悩まれたのだろうかと想像します.医療系の書籍のなかでも,自分がどうしても知りたいから書かれたものはよい内容が多いです.知りたいという気持ちが強いからです.そう,「ナビ」は薬剤師が知りたい薬剤師さんのための書籍です.そういう視座からみると,総論が7 頁だけで,あとは基本各論です.各論が薬剤師の視座,各論からの患者を視るのが薬剤師さんの視野なのであろうと改めて感じました.本書は各論にこだわり抜いた書籍です.
 私見ではありますが,感染症診療・感染症対策における薬剤師さんはナビゲーターとしての役割があります.データサイエンティストと言い換えてもよいかもしれません.ICT 活動においてデータを軸に戦略を立て,迷子になりがちなICDとCNIC(感染管理認定看護師)を優しくナビゲートする役目です.またオーディットの役目もあります.すなわち医師の診たて,看護者の看たてを最後にしっかり視て評価し,そして修正するのが薬剤師さんの役目です.そう,臨床を最後に視ることが薬剤師さんの仕事なのです.言い換えると最後に臨床を修正できるには,薬剤師さんだけなのです.薬剤師さんにとって馴染み深い言葉に置き換えると,監査です.不勉強なままではいれません.最後は細部,各論が勝負です.抗菌薬に関する各論を「ナビ」でしっかり学びましょう.また「ナビ」は,決して不勉強ではない薬剤師さんがさらに各種抗微生物薬に関しては各論的に深く理解と整理ができます.
 不勉強ではない薬剤師さんが,本書を片手にすれば,オニに金棒です.抗菌薬を大事にしない医療現場にいる感染症にほんとうに不勉強な医師という子鬼達もやさしくナビしてあげてください.
書評4
生きた抗菌薬の知識が詰まった,薬剤師必携の一冊.

浦上宗治(佐賀大学医学部附属病院感染制御部 病院助教)

 薬剤耐性(AMR)対策アクションプランにおいて,2050年には世界で1,000万人超が薬剤耐性菌によって死亡するという衝撃的な報告がなされ,抗菌薬適正使用における薬剤師への期待は大きくなっている.今日,抗菌薬に関する医師からの問い合わせや臨床で遭遇した疑問に応え得る抗菌薬辞典のような頼れる一冊を備えておくことは薬剤師のマストである.
 本書は300ページを超える大作であるが「これだけは知っておこう!」というコーナーに臨床経験豊富な著者からのエッセンスが凝縮されており,効率的に即戦力となる知識を身に付けることができる.また,一見難しいPK-PD理論は投与法別にPK-PDパラメータの変化がイラストで描かれており,自分の理解だけでなく多職種に説明する際にも活用できる.本書には抗菌薬適正使用に必要な基本的な情報は網羅されている.抗菌薬の処方をチェックする傍ら,いつでも手の届く所に置いておきたい一冊である.
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