書籍カテゴリー:基礎薬学|臨床薬学

図解 医薬品情報学
立ち読み

在庫状況:在庫あり

みてわかる薬学シリーズ
図解 医薬品情報学

第3版

  • NTT東日本関東病院薬剤部長 折井孝男 編

定価:4,536円(本体4,200円+税8%)

  • B5判 431頁
  • 2014年1月 発行
  • ISBN978-4-525-78163-7

概要

「医薬品情報学-基礎・評価・応用-」を改題.インターネット等により誰もが容易に情報を入手できる現在,薬剤師にとってもその中から必要な情報を見極め,入手し,自信をもって発信・提供することが望まれる.本書は医薬品情報に関わる基礎的な要素を身につけるため,様々な角度から医薬品情報を分かりやすく解説.薬学生や医薬関連従事者のテキストとして最適な書.

序文

 「医薬品情報学─基礎・評価・応用─」(初版,改訂2版)は,このたび,「みてわかる薬学 図解医薬品情報学」(改訂3版)へと生まれ変わりました.これも従来から本書を利活用していただいた方々がいたからこそのおかげです.ありがとうございます.
 さて,世の中の動きは大きな変化を続けています.一般市民のインターネットの利活用もその一つといえます.インターネットを上手に操りめぐらす人は,広範囲にわたり医療へのアクセス,もちろん医薬品情報の入手を含め,積極的に利活用しています.ただし,従来までの使い方とは異なり,単に情報を収集するというだけでなく,多くの人とのコミュニケーションをとりながら,自分に必要な情報を選択して捉えています.そのため,医療に関する知識は我々よりも持っていると思います.医薬品情報については,この医薬品にはこのような効き目がある.ということよりも,この医薬品を用いてこのような効果があった.という内容を入手していることが多くみられます.ブログ,ツイッターなども利活用し,患者団体などとの情報の共有を行ってもいます.そして,国内だけに止まらず,海外の人達との情報の共有,交換などを行ったりもしています.一方で,クラウドを利用して患者自身が自分のカルテを見ることができる医療など,誰でもができて当たり前と思うことがいまだ実現していません.なかなか難しいことと思います.
 このようなながれの中,薬剤師,薬剤師を志す人はもっともっと頑張って欲しいと思います.なにを頑張るのか,もちろん臨床についてです.薬物療法における認定薬剤師制度などは非常に大切であると理解しています.これは病院,保険薬局の薬剤師にかかわらず大切なことです.そして,国内においても視野を広く持ってほしいということ,海外についても同様のことがいえます.例えば,海外における薬剤師の学会の一つにFIP(国際薬剤師会議)があります.このFIPのなかにもDrug Information sectionがあり,年会の前日などを利用してサテライトシンポジウムなどを開催しています.このような場に積極的に参加することにより,従来からの日本の(医薬品情報に関する)文化を見直す格好の機会になると考えます.国際的な視野をもつことは国内でみている日本での文化と異なった文化が見えてきます.このグローバル化に対応できなければ,世界の速度についていくことができなくなります.グローバルな世界では多様性などが大きな価値をもつことはいうまでもありません.その結果,可能性のある,タテからヨコに繋がった社会・世界,柔軟性のある組織・世界などに展開していきます.本書の最後の項でも記述しましたが,国際学会などへの参加が望まれることとなります.ただし,近年のグローバル化の速さから考えると,国際学会に参加するというだけでは,国際社会から遅れをとってしまうのではないでしょうか? 参加するというのはすでに以前のことであり,国際学会で勝負することが必要ではないかと考えます.他国の人の意見を聞くだけでなく,根拠に基づいた自分の意見を述べ,討議することがとても大切なことと考えます.日本の薬学の将来を担う薬剤師,薬剤師を志す人は世界の薬剤師と相互理解を深め,多様な繋がりと信頼を築くことが,自国における薬学に役立つものと思います.
 医薬品情報学は薬学の中の一領域であり,他の領域同様にとても大切な学問です.もし,この医薬品情報学が「弱かったら」,どうなるでしょうか? 他の領域についても同じことがいえると思います.このように「弱かったら」個人的な問題であれば他の人にフォローしてもらえますが,全体的な問題となると薬学,医療に拙いことになります.例えば,医薬品情報学が「強ければ」薬物療法に関わるスタッフを結ぶハブになることができ,より質の高いチーム医療へと展開します.このようなことから医薬品情報学(だけとは限りませんが)は非常に大切な学問ということができます.ただし,前述したように医薬品情報学の「弱み」についても知っておくことが大切なことです.
 医療の世界は私たちが考えている以上に速い速度で変化しています.このグローバルな変化に対応するためには,薬剤師,薬剤師を志す人がスピード感を持ち,世界の中での日本で(ここでは医薬品情報学に)対応していくことが大切です.つまり,パラダイムシフトを意識することが大切です.パラダイムシフトとはその時代や分野において当然のことと考えられていた認識や思想,社会全体の価値観などが革命的にもしくは劇的に変化することをいいますが,国民の医療に対するニーズなどを知ることも非常に大切なこととなっています.また,医療政策や医療制度の動向なども視野に入れていることが必要です.このように医療の変化の速度に医薬品情報が遅れては医療が成り立ちません.的確な医薬品情報を捉えるためにも最新の医薬品に関わる情報を捉えることが必須といえます.医薬品情報について本書でしっかりと収集,評価,整理,提供など,学問としての知識を得て欲しいと思います.本書の特徴はタイトルにもみられるように「みてわかる薬学 図解医薬品情報学」とあることから,著者の先生方にはできる限りたくさんの図表を掲載していただきました.医薬品情報を視覚から読み取り,そして,病院,保険薬局などの医療現場と実際の体験から養われる実践的な知識とを併せて利活用して欲しいと思います.実践的な知識がなければいくら学問としての知識があっても医療現場では役に立たないことになります.このことは病院,保険薬局などに勤務している薬剤師および勤務を希望している薬学生には大切なことです.さらに,高齢化社会においては特に必要なことといえます.
 医療において医薬品情報が医療スタッフ,患者との「絆」となり,その「絆」を薬剤師が最新の内容,必要とされる内容とするようパラダイムシフトを視野に入れ,利活用されることを望みます.
 本書は,「みてわかる薬学 図解医薬品情報学」(改訂3版)へと生まれ変わりました.新たに刊行の機会をお与えいただき,また,原稿の遅れにもかかわらず辛抱強く対応していただいた南山堂編集部の方々に心から感謝するとともにお礼申しあげます.

2013年12月
世界のパラダイムシフトを意識して医薬品情報を利活用するためには…
折井 孝男

目次

1章 薬剤師と医薬品情報─収集,評価,再構築,提供─

■1 医薬品情報学の歴史
  A 医薬品情報学の流れ
  B 医薬品情報学と薬学教育
  C 医薬品情報の共有とICT化
  D 医薬品情報の基本理念
  E 医薬品情報のリスク管理における利活用

■2 医薬品の開発
  A 非臨床試験
  B 臨床試験(治験)
  C 臨床試験の実施体制
  D 承認審査
  E 製造販売後調査

■3 医薬品情報の収集
  A 医療用医薬品添付文書からの情報収集
  B インタビューフォームからの情報収集
  C 行政からの情報収集
  D 製薬企業からの情報収集
  E 医薬品卸からの情報収集
  F 市販後の医薬品情報
  G 患者からの情報収集
  H EBMに指向した医薬品情報の収集・検索

■4 医薬品と医薬品情報の評価
  A 医薬品情報の評価
  B 有効性の評価
  C 安全性(副作用と相互作用)の評価
  D 評価のための統計学の基礎知識
  E 医薬品適正使用のための情報評価
  F 患者の病態と医薬品情報
  G 患者の遺伝子情報と医薬品情報

■5 医薬品情報の再構築─提供する情報を創る─
  A 患者による医薬品の適正使用を支援する
  B 医療従事者が利用する医薬品の情報
  C 一般市民が求める医薬品に関する情報

■6 医薬品情報の提供方法
  A 情報の伝達・提供の媒体
  B 情報の伝達・提供の技術─コミュニケーション
  C 情報を提供する場・条件の環境管理
  D お薬相談室と保険薬局


2章 薬剤師の業務と医薬品情報

■1 処方と医薬品情報
  A 処方決定までのプロセスと医薬品情報を扱う薬剤師の役割
  B 患者情報の収集
  C 処方決定に必要な医薬品情報源

■2 調剤と医薬品情報(内用薬・外用薬)
  A 調剤に必要な医薬品情報の集め方と利用法
  B 調剤の流れと処方せん
  C 調剤における薬剤師と法律
  D 処方せん受付,監査時に必要な医薬品情報
  E 調剤時に必要な医薬品情報

■3 調剤と医薬品情報(注射剤)
  A 注射剤調剤の流れ
  B 注射剤処方せん記載事項
  C 注射剤処方監査
  D 注射剤の取り揃え(調製)

■4 服薬指導・情報提供と医薬品情報
  A 薬局業務運営ガイドライン
  B 処方薬
  C 一般用医薬品(OTC医薬品)等の販売

■5 病棟活動と医薬品情報
  A はじめに
  B 主な病棟業務の内容と医薬品情報の活用
  C 病棟の特色と必要な医薬品情報
  D 薬剤師の病棟活動に対する保険診療報酬と薬品情報の活用

■6 治験と医薬品情報
  A 医薬品の開発過程における治験の位置づけ
  B 治験の各相で得られる情報
  C 治験の実施体制:役割と責務
  D 治験のデータ管理と電子化
  E 治験の限界
  F ドラッグ・ラグと国際共同治験

■7 セルフメディケーションと医薬品情報
  A セルフメディケーションと薬剤師
  B 一般用医薬品(OTC医薬品)の役割
  C 医療用医薬品と一般用医薬品の添付文書の違い
  D 使用上の注意への記載事項


3章 社会と医薬品情報

■1 医薬品と法律
  A 医薬品の定義
  B 医薬品の分類
  C 特別な管理を要する医薬品
  D 医薬品開発と法律

■2 患者団体の活動と患者からの情報
  A 社会資源としての患者会
  B アラジーポットの活動
  C 発信の場=患者・患者会からの情報提供と情報共有

■3 保険薬局と保険制度
  A 医療保険制度の概要
  B 介護保険制度の概要
  C 薬局業務運営ガイドライン
  D 保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則

■4 在宅療養と地域医療
  A 在宅療養と地域医療における多職種との関わり 
  B 在宅療養と地域医療におけるICTネットワークの利用 
  C 在宅療養と地域医療における医薬品情報の利活用
  D 在宅療養と地域医療における緩和ケア
  E 災害医療と薬剤師
  F 在宅療養と地域医療における薬剤師の活動の実際

■5 薬剤師と教育活動
  A 薬 育
  B 学校薬剤師と学習指導要領
  C Academic Detailing─医薬品の適正使用に向けた薬剤師の役割
  D アンチ・ドーピングのための医薬品情報

■6 チーム医療と患者情報の共有化
  A 患者を中心としたチーム医療
  B 医療機関・保険薬局における医療情報の一元化
  C 患者自身による医療情報の一元管理と共有化

■7 行政の保健医療に関わる活動
  A 憲法と保健医療行政
  B 保健医療関連法規
  C 保健医療行政
  D 国の保健医療行政に関する活動の概要
  E 医薬品に関する規制
  F 薬事行政と独立行政法人 医薬品医療機器総合機構
  G 副作用・感染症報告制
  H 医療提供制度
  I 医療安全対策
  J 医薬品の適正使用と医薬品情報
  K 健康危機管理体制
  L 保健医療分野の情報化
  M 保健医療情報の提供

■8 製薬企業における医薬品情報活動
  A 市販後安全対策の概要
  B 製薬企業による医薬品情報提供の方法
  C 医療関係者への情報提供
  D 一般国民・患者への情報提供
  E 医薬品医療機器情報提供ホームページとPMDAメディナビ
  F 情報活動のさらなる充実に向けて

■9 製薬企業団体における医薬品情報活動
  A 概 要
  B 現在の製薬企業団体とその活動
  C 今後期待される情報活動について

■10 医薬品とリスクコミュニケーション
  A ベネフィットとリスクのバランス(科学的不確実性)
  B 医療の「共有決定」と「コンコーダンス」
  C リスクコミュニケーション
  D 医薬品のリスクコミュニケーションの動き(米国)
  E わが国のリスクコミュニケーション課題
  F 患者・医療専門職・行政の3者間における医薬品のリスクコミュニケーション
  G 新しいリスクコミュニケーションの統合モデル(ワクチン)

■11 診療ガイドライン
  A EBMと診療ガイドライン
  B 診療ガイドラインの拘束力・適用範囲
  C 作成法の概要
  D 診療ガイドラインと有害事象のエビデンス
  E 診療ガイドライン作成におけるCOI
  F 診療ガイドラインの評価
  G 臨床家は診療ガイドラインの推奨を実施しているか?
  H エビデンス診療ギャップをめぐって
  I 法的課題から患者とのコミュニケーションへ
  J 臨床医の医薬品情報「ニーズ」

■12 学会参加による最新情報の収集と利用
  A 「混ざる」
  B 薬剤師として「混ざる」
  C 「学会」