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カテゴリー: 臨床薬学

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薬剤師のための地域医療連携スタートBOOK絶対使える!臨床検査値

1版

どんぐり工房 菅野 彊 著
後藤病院 薬局長 井上映子 著

定価

3,080(本体 2,800円 +税10%)


  • B5判  181頁
  • 2014年11月 発行
  • ISBN 978-4-525-78261-0

臨床検査学の知識は豊富にあっても検査データをどのように捉え,薬学的な活用につなげるか悩んでいませんか.本書は薬局や病院での1シーンを切り口として,薬局で欠かすことができない臨床検査データの活用方法を解説.薬局で検査データを受け取っても,あわてず薬学管理に活かせる薬剤師になるためのスタートブック.

  • 序文
  • 目次
序文
 京都にいる.八朔を見に来た.芸妓さんの黒地の着物が粋で優雅である.思えば私の講演行脚は京都から始まった.今から30年近くも前のこと! 京都にIDI研究会という集まりを仲間と一緒につくったのである.IDIとはIndependent Drug Informationの略である.バイアスを避け客観的な医薬品情報を提供しようという意欲に溢れていた.私は京都に通い,仲間も増えていった.
 当時は「製薬会社がつくる医薬品情報にはバイアスがある」ということが前提にあった.しかし,「“客観的な情報を創ろうという思い”もまたバイアスを生む」ということには気がついていない.若いだけに思い上がっていたところもあったのだろう.しかし,皆様からは歓迎を受けた.今でもIDI研究会を続けている.今年のIDI研究会はこの本の出版記念会になるはずである.
 医薬品情報を巡る環境は当時と大きく変わった.一番大きな違いはインターネットの隆盛である.当時,必死に作っていた医薬品副作用情報データベースARIS,医薬品情報データベースBelugaはすでに社会的な役割を終えている.医薬分業は新しい保険薬局という業態を生み出した.保険薬局は処方箋を受け取り,問題があれば処方箋発行医に疑義照会をして,適切な調剤を行い,患者さんの服薬指導をする.
 保険薬局で最も問題なのは,患者さんの検査値がわからないので,手探りで服薬指導をせざるを得ないことである.しかし,なんとか保険薬局は社会的な役割を果たしてきた.そうこうしているうちにクリニックは患者さんの血液,尿,生化学の検査値を記載した表を患者さんに渡すことになった.これは大いなる進歩である.最近では大学病院でも患者さんの検査値を処方箋に記載して保険薬局に伝えるようになった.これもまた大変助かる.
 ただ,その情報をどう保険薬局が使うのか? ということに関して明確な定義はなく技術の蓄積も少ない.これは大きな問題である.患者さんの臨床検査値に対する捉え方が個々の薬剤師によっても違うし,個々の保険薬局によっても違うのである.そんな状況から『薬剤師のための「臨床検査値の読み方」ABC』という入門書を書いた.2002年1月1日のことである.やがて,保険薬局の臨床検査値の見かたに対する意識は変わり,副作用チェックや処方薬変更の提案に応用されるようになった.
 そして,薬薬連携という考え方が提唱されるようになった.これも意義が大きい.外来患者さんでも病院で注射をして内服薬を保険薬局で受け取ることはままある.入院患者さんが退院するときに保険薬局として,病院薬剤部から保険薬局に向けて薬物療法に関する情報が発信されたとしたら,大変助かることは言うまでもない.こうして,病院薬剤師と保険薬局薬剤師の薬薬連携が始まった.
 薬薬連携の理想は病院薬剤師と保険薬局薬剤師が,臨床検査値も含めて薬物療法に関する情報を共有することである.そのためには,お互いの顔や仕事が見えなくてはならない.南山堂さんからの「臨床検査値に関する本を作りませんか?」という有難い提案に飛びついたのは言うまでもない.瞬間的に“病院薬剤師との共著”という構想が浮かんだ.後藤病院の薬剤師 井上映子さんには,前著の校正で大変お世話になっていることと,医薬品卸勤務や保険薬局勤務も経験していることから,パートナーとして真っ先に脳裏に浮かびお願いをした.幸い快諾をいただくことができ,嬉しい限りである.
 本書は症例を中心に据えることにした.臨床検査は検体検査と生体検査に分けた.今までは検体検査が保険薬局の検査値情報の中心であったが,薬剤師がバイタルサインをみてフィジカルアセスメントを行うようになってきた現在,生体検査に触れないわけにはいかなくなったからである.しかし,診断のためにX線写真や心電図をみるわけではない.あくまでもくすりとの関連情報としてみに行くのである.薬局薬剤師と病院薬剤師では臨床検査値に関するアプローチが違うし情報量も圧倒的に保険薬局が少ない.したがって,症例ごとに著者を提示することにした.
 さて,まえがきはこのくらいにして『絶対使える! 臨床検査値』の扉をあけてください.この本ができ上がるころ,京都はきっと紅葉が真っ赤に燃えていることでしょう.IDI研究会で本書を紹介した後には,みんなで“美味しい湯豆腐で一杯”といきたいものです.

2014年初秋
菅野 彊
目次
1章 検体検査

CASE 1 肝機能検査値の見方と肝消失型薬物の薬物動態
CASE 2 PT-INRとワルファリンからプラザキサRへの変更の検討
CASE 3 総コレステロール値,尿酸値に及ぼすHMG-CoA還元酵素阻害薬とチアジド系利尿薬の影響
CASE 4 Ccrの推測方法と腎排泄型薬物レニベースR錠投与量の決定
CASE 5 Ccrと尿中未変化体排泄率を応用したジゴキシン消失半減期延長の推測
CASE 6 CcrとGiusti-Hayton法によるジゴキシン投与量の決定
CASE 7 ARB投与中の血清カリウム値の変動と投与設計
CASE 8 肝機能検査値およびA/G比と肝消失型薬物の副作用チェック
CASE 9 薬物総クリアランスを応用したメキシチールR投与量の決定
CASE 10 尿中未変化体排泄率の決め方と血糖降下薬2剤の投与量の決定
CASE 11 DPP-4阻害薬エクアR錠は授乳をしながらの服用は可能か?

井上映子 編
CASE 12 腎機能低下者における高カリウム血症の見方と処方提案
CASE 13 血液ガス分析からメトホルミンの乳酸アシドーシスをみる
CASE 14 腎機能低下時の降圧薬の提案
CASE 15 典型的な症状がみられない低カルシウム血症への対応
CASE 16 肝硬変の検査値と処方設計
CASE 17 フォルテオR自己注射時に起こった胃部不快感と服薬指導
CASE 18 テオフィリンの相互作用の実際―CYP1A2の代謝酵素誘導を考える
CASE 19 関節リウマチ患者が使用する生物学的製剤の薬物治療モニタリング
CASE 20 腎機能障害に注意! 疼痛管理に使用する薬剤の調整
CASE 21 低カリウム血症で判明した服薬ノンアドヒアランス
CASE 22 検査値に異常がみられない抗うつ薬服用患者の臨床症状の原因を薬学的視点で解明
CASE 23 糖尿病性腎症患者の血糖降下薬の服薬状況と処方提案―HbA1cの数値に注意
CASE 24 患者の腎機能を確認し,抗菌薬の投与設計を確認する
CASE 25 ワルファリンと抗菌薬の相互作用

2章 生体検査

菅野 彊 編
CASE 26 薬剤師も生体検査データをみる時代がやってきた─心電図と胸部X線写真を例にして

井上映子 編
CASE 27 異常高値のBUNと血清カリウムの見方
CASE 28 降圧薬服用時に現れた心電図異常―薬剤師のバイタルチェック



ミニレクチャー
・肝抽出率E
・PT-INRとTT
・降圧治療時の血清カリウム値の管理
・クレアチニンクリアランスCcrの短時間測定法
・心胸郭比(cardiothoracic ratio;CTR)
・ジゴキシン有効血中濃度
・クレアチニンクリアランスCcrを検査する意義
・A/G比
・塩係数S
・油水分配係数P
・母乳に移行しにくいくすり
・メトホルミンを分子機構でみる
・カルシウム吸収をよくするための食事指導
・関節リウマチの薬物治療モニタリング
・医薬品の個人輸入
・近年注目されている,抗うつ薬による海馬神経新生の促進作用
・HbA1cの異常値
・これからの保険薬局とカルテ情報
・薬局の店頭でTDM!?
・PT-INR測定機器
・QT時間
・心電図異常から不整脈をみてみよう
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