書籍カテゴリー:臨床薬学

患者とくすりがみえる薬局薬物動態学
立ち読み

在庫状況:在庫あり

コミュニティー ファーマシー・シリーズ
まちの薬局しごと集
患者とくすりがみえる薬局薬物動態学

1版

  • 株式会社薬局淡路町ファーマシー 松澤 忍 著
  • 合資会社どんぐり工房代表 菅野 彊 著

定価:2,700円(本体2,500円+税8%)

  • B5判 158頁
  • 2008年8月 発行
  • ISBN978-4-525-78651-9

概要

本書は,薬物動態を身につけるための「10の法則」をマスターすることからスタートする.習得後,ケーススタディ形式で,薬物動態学的視点から患者とくすりを観察するトレーニングができる.薬歴への記載例も示しており,即実践で活用できる一冊である.

序文

大学時代,大嫌いな講義は薬物動態学でした.難しい用語と計算ばかりで,実際に何の役に立つのかもさっぱりわからず,国家試験に合格するために必死に暗記していた記憶しかありません.
卒業後,医薬品卸売業者を経て保険薬局に勤務した私は,実際に患者さんとお話するようになり愕然としました.「この痛み止めは何時間くらい効いているのですか?」,「くすりを飲んで肝臓が悪くなったことがあるけど,このくすりは大丈夫なの?」,「授乳中だけどくすりを飲んでどれくらいの時間たてば授乳できるの?」など,いろいろな質問を受けるのですが,まったく答えることができない自分がいたのです.それからわたしと薬物動態学との悪戦苦闘の日々が始まりました.
しかし,大学時代は大嫌いだった薬物動態学が,不思議なことに知れば知るほどおもしろくなってきたのです.「t1/2だけでくすりの効きめや副作用症状がなくなる時間がわかるの!」,「肝排泄型か腎排泄型かを見分けることは難しくない!」,「薬物動態値だけで血中濃度まで予測できるの!」など,日常業務に役立つ身近な知識であることがわかったからです.こうして,わたしの中で薬物動態学は“難しい学問”から“患者さんと処方せんがみえる学問”となり,薬剤師人生においてなくてはならない最高のパートナーになりました.薬物動態値から推理・判断できることは多く,患者さんと一緒にくすりのことを考え,悩みや疑問を解決できたときの患者さんの笑顔をみると「薬剤師をしていて本当によかったな」と思います.
“薬物動態学を好きになってほしい”という思いを込めて本書はできました.“難しい学問”という概念は頭の片隅において,読み進めていただきたいと思います.本書では,薬物動態値をとてもシンプルにとらえ,応用する計算式も加減乗除だけです.あまりに簡単すぎて「これでいいの?」と疑問に思う方もいるかもしれませんが,本書のコンセプトである難しく複雑な薬物動態学を単純明快に解説すること,そして,臨床現場で役立てていただくことを思い出しながらご覧ください.
「患者さんの体の中で何が起こっているのか?」をいつも科学的に考えることでこの本を書くことができました.ぜひ楽しみながら読んでください.
未来はあなたと患者さんのものです.

2008年夏  松澤 忍


目次

第1章  薬局薬物動態学10の法則
  これだけわかれば薬物動態学はあなたのもの

Lecture1 血中濃度に関する4つの薬物動態値を理解しよう
  Cmax, Tmax, t1/2, AUC?
Lecture2 くすりが分布する場所「コンパートメント」
  1-コンパートメントモデルと2-コンパートメントモデル?
Lecture3 定常状態があるくすりとないくすり
  血中濃度半減期(t1/2)4倍の法則?
Lecture4 尿中未変化体排泄率(fu)はくすりを2つの排泄型に分ける
  肝排泄型薬物と腎排泄型薬物?
Lecture5 くすりは2つの速度過程で体内から消失する
  1次速度過程とゼロ次速度過程?
Lecture6 体内から早くでるくすり,ゆっくりでるくすり
  消失速度定数(Kel)は血中濃度半減期(t1/2)から求めることができる?
Lecture7 くすりが分布する場所の大きさをあらわす分布容積(Vd)
  分布容積(Vd)の大きさでわかるくすりの組織移行性?
Lecture8 薬物クリアランス(CL)は体内からのくすりの排泄能力をあらわす
  薬物クリアランス(CL)は消失速度定数(Kel)と分布容積(Vd)から求めることができる?
Lecture9 実際に全身循環に到達したくすりの量を推測してみよう
  ポイントは,生物学的利用率(F)と塩係数(S)?
Lecture10 薬物動態学(PK)と薬力学(PD)からくすりの効果を推測してみよう
   薬物動態学の新たな到達点 PK/PD分析?

第2章  処方からみる薬物動態学の応用
  患者さんの病態と薬物動態の関連を考えてみよう

1 高血圧 その1
Ca拮抗薬の血中濃度半減期(t1/2)の違いによる使いわけ
コンプライアンス不良のTさんの降圧薬は,なぜノルバスク錠なのか?
2 高血圧 その2
降圧薬の肝排泄型・腎排泄型による使いわけ
町の検診で腎機能の低下を指摘されたKさん,降圧薬はこのままでいいのか?
3 糖尿病
速効性食後高血糖降下薬の飲み方
食直前の服用をどうしても忘れてしまうAさん,さてどうしよう?
4 不整脈
抗不整脈薬は不整脈を起こす.患者さんの肝機能・腎機能に注意しよう
肝機能が低下しているNさんの抗不整脈薬は?
5 狭心症
硝酸薬の薬物動態の違いによる飲み方,使い方
ニトロペン錠を“もったいない!”と飲まなかったNさん.さて,どうしよう?
6 消化性潰瘍
プロトンポンプ阻害薬(PPI)の薬物相互作用の違い
アレビアチン錠服用中のOさん.胃潰瘍の治療になぜパリエット錠が選択されたのか?
7 気分障害?うつ病?
選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)の効果と副作用をみてみよう
どうしてAさんはくすりを急にやめたら副作用が起きたのか?
8 睡眠障害
睡眠薬の効果と血中濃度半減期(t1/2)
早朝に目が覚めてしまい眠れないNさん.睡眠薬はどのように選択すればよいか?
9 爪白癬
食事の影響があるくすり,ないくすり
ラミシール錠を“朝食後服用”と指示されたDさん.実は朝食を食べない.
さて,どうしよう?
10 膀胱炎
尿路感染症に用いられる抗菌薬の飲み方,使い方
忙しいSさん,1日3回くすりを飲めないという.さて,どうしよう?

第3章  薬局で使える血中濃度の推測と投与量の決定
  患者さんの血中濃度を大胆に推測して,投与量を提案してみよう

1 気管支喘息
目標とする血中濃度を達成する投与量を決定する
気管支喘息のMさん.テオドール錠の投与量は適切か?
2 慢性頭痛
単回投与時の最高血中濃度(Cmax)を推測する
Aさんのカロナール細粒の最高血中濃度は適切か?
3 気分障害?躁うつ病?
蓄積率から定常状態の血中濃度(Css)を推測する
デパケンR錠がなかなか効かないTさん.有効血中濃度の達しているか?
4 発作性心房細動
定常状態平均血中濃度(Cssave)を推測する
発作の頻度が増えたSさん.サンリズムカプセル1日3回服用の効果は?
5 うっ血性心不全 その1
目標とする定常状態平均血中濃度(Cssave)を達成する投与量を決定する
Uさんのラニラピッド錠の投与量を求めてみよう
6 腎機能低下
腎機能低下時の腎排泄型薬物の投与量を決定する
中性脂肪が高いZさん.ベザトールSR錠の投与量は適切か?
7 うっ血性心不全 その2
定常状態平均血中濃度(Cssave)から定常状態の最高・最低血中濃度
(Cssmax・Cssmin)を推測する
うっ血性心不全のAさん.ジゴシン錠の投与量は適切か?
8 てんかん その1
ミカエリス・メンテン式から非線形薬物の投与量を決定する
アレビアチンを併用することになったWさん.投与量は?
9 てんかん その2
Km,Vmaxから非線形薬物の血中濃度を推測し,投与量を決定する
また,発作の前兆があらわれたWさん.アレビアチンの投与量は?
10 急性扁桃炎
薬物血中濃度から組織内濃度を推測する
急性扁桃炎のAさん.クラビット錠1日3回服用の効果は?