書籍カテゴリー:歯学|組織学/発生学

口腔の発生と組織
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口腔の発生と組織

第3版

  • 東京医科歯科大学 医歯学総合研究科 硬組織構造生物学分野 准教授 田畑純 編著

定価:4,320円(本体4,000円+税8%)

  • B5判 118頁
  • 2015年3月 発行
  • ISBN978-4-525-81023-8

概要

口腔の発生から完成した組織まで,スケッチ感のあるイラストや模式図で表現しており,写真よりもポイントや特徴が理解しやすい.解説文はエッセンスを要領よくまとめていて読みやすい.内容と用語はCBTや国家試験に合わせてあり,欄外には英語や少し詳しい注釈もある.3版ではオールカラーとなり,イラストがより充実している.

序文

 歯や口腔をかたちづくる細胞たちは,個性豊かです.歯はかなり精巧な硬組織ですし,顎関節や舌や歯肉なども特徴的な組織や構造を持っています.このため,歯や口腔の構造を理解するには,組織,発生,解剖,生理など関連する知識を上手に整理して,学ぶ必要があります.そこで,本書では知識の絞り込みのレベルを歯科医師国家試験と共用試験CBTに合わせ,用語等もできるだけ合わせました.
 そうはいっても,知識の羅列や国試対策の本になっては面白くないでしょう.本文はできるだけ平易で簡潔になるよう心がけましたが,高度な内容も適宜,盛り込みました.また,組織学や解剖学の基礎はできているという前提で書いています.本文をわかりやすくするために,込み入った事項は注釈に,より深く理解するための話題や複数の章にまたがる話題は章末のコラムに記述しました.臨床基礎として重要と思える項目は,旧版よりもスペースを割くように心がけました.
 図はすべてスキーム(模式図)としました.コンセプトは「板書の絵」です.教員が組織や解剖の模式図を黒板にチョークでさらさらと書き,それを学生が必死でノートに書き写すというのが,かつての組織学の授業風景でした.板書の絵は簡潔であるが故に,エッセンスが凝縮しており,どのような構図にするのか,何色で表現するのか(組織の種類ごとに色が決まっていました),どういう手順で書くのかなどにも重要な意味がありました.そこで本書でも彩色を統一し,上皮(エナメル質)を青で,間葉(象牙質)を赤で,間葉ではあるけれどセメント質と骨のふたつは灰色で表すようにしました.上皮と間葉(結合組織)を意識することが,組織学の基本であり,青と赤はヘマトキシリン・エオシンの染色像に準ずるものです.かつての授業のよい面を幾ばくかでも,本書が伝えられたらと考えています.
 今回の改訂は私ひとりであたりました.第2版までの内容を活かしつつも,章立てを替え,文章を直し,図を書き換えていくうちに,結果として大きな改訂となりました.こうしたかたちになりましたことを快く承諾してくださった執筆者の先生方に感謝いたします.それから,本書の完成までには多くの方のご協力をいただきました.とりわけ,東京医科歯科大学教授・髙野吉郎先生,徳島大学教授・北村清一郎先生,徳島大学・角田佳折先生,岡山大学・松村達志先生には,専門的なご教示をいただきました.この場をお借りして御礼申し上げます.また,南山堂編集部・齋藤代助様,高柳ユミ様ならびに関係の方々のご尽力にも御礼申し上げます.
 私に組織学の面白さと重要性を最初に教えてくださったのは大学院時代の恩師,広島大学名誉教授・天野實(みのる)先生です.天野先生は戦後間もなく留学され,カナダ・マギル大学のC.P.ルブロン先生の下で研究をされていました.mRNAが核から細胞質へ移動することを示すのにエナメル芽細胞を使ったという話をうかがったことがあります.基質形成期のエナメル芽細胞は細長い円柱形の細胞でかつ核が一端に寄っていますから,RI標識ヌクレオチドを用いたトレース実験に好適だったそうです.エナメル芽細胞が分子生物学の黎明期に役立ったというのも興味深いことですが,天野先生の下ではカエルの初期発生を研究していた私が,巡りめぐって,今,歯の発生研究をしているのも不思議なつながりを感じます.
 学問は知識のリレーです.いろいろな方から受け継いできたものに私なりの知見を加えて本書をかたちにしました.ですから,この本を読んだ方が,歯の構造や発生のしくみを面白いと感じ,興味を持つようになってくださったらうれしいかぎりです.その気持ちが,リレーのバトンなのですから.

2015年2月
田畑 純

目次

第1章 歯とは
   1 歯のかたち
    ① 歯
    ② 歯周組織
   2 歯の定義
   3 4 つの硬組織
   Column ① 上皮と間葉

第 2 章 ヒトの発生
   1 受精から着床まで
   2 胚盤期から神経管形成期まで
   3 器官形成期
   Column ② 軟骨性骨と膜性骨

第 3 章 口腔の発生
   1 咽頭弓の発生
   2 神経堤細胞
   3 口腔の開通と鰓弓器官
   4 舌の発生
   5 顎顔面の発生
   6 上顎の発生
   7 下顎の発生
   8 歯の発生
   Column ③ 口腔の発生障害

第 4 章 歯冠形成期
   1 開始期(肥厚期)と蕾状期
   2 帽 状 期
   3 鐘状期初期
    ① 外エナメル上皮
    ② 星状網
    ③ 中間層
    ④ 内エナメル上皮
   4 鐘状期後期
   5 歯堤の分岐と消失
   Column ④ 魔法のサンドイッチ

第 5 章 歯根形成期
   1 歯根形成開始期
   2 歯根伸長期
   3 萌 出 期
    ① 将来萌出する位置への移動
    ② 歯の方向転換
    ③ 顎骨内での歯胚の移動
    ④ 萌出後の歯の運動
   4 咬合開始期と機能期
   5 歯根の分岐
   6 歯の交換(乳歯脱落 )
   Column ⑤ 歯の萌出のしくみ

第 6 章 エナメル質形成
   1 エナメル芽細胞
   2 基質形成期
   3 成 熟 期
   4 エナメル小柱
   5 エナメル質の組織構造
    ① エナメル象牙境
    ② 無小柱エナメル質
    ③ レッチウス条
    ④ 周波条
    ⑤ 新産線
    ⑥ 歯小皮
    ⑦ エナメル叢
    ⑧ エナメル葉
    ⑨ エナメル紡錘
    ⑩ ハンター・シュレーゲル条
   Column ⑥ 3 つのトームス

第 7 章 象牙質形成と歯髄
   1 象牙芽細胞
   2 基質小胞
   3 球状石灰化と板状石灰化
   4 象牙質の成長線
   5 象牙質の分類
    ① 歯冠象牙質と歯根象牙質
    ② 原生象牙質,二次象牙質,三次象牙質
    ③ 外套象牙質と髄周象牙質
    ④ 管間象牙質と管周象牙質
   6 象牙質の組織構造
    ① 象牙細管
    ② 球間区と球間網
    ③ トームスの顆粒層
    ④ 二次象牙質
    ⑤ 死帯
    ⑥ 三次象牙質
    ⑦ 透明象牙質
   7 歯 髄
    ① 象牙芽細胞層
    ② 細胞稀薄層(ワイルの層 )
    ③ ラシュコフの神経叢
    ④ 細胞稠密層
    ⑤ 象牙粒(髄石 )
   8 象牙質の知覚
   Column ⑦ 歯の加齢変化

第 8 章 セメント質形成と歯周組織
   1 セメント芽細胞とセメント細胞
   2 セメント質の構造
    ① セメント前質
    ② シャーピー線維
    ③ セメント質の固有線維
    ④ セメント層板
    ⑤ セメント象牙境
    ⑥ 中間セメント質
    ⑦ 根尖孔の狭窄
    ⑧ セメント質の加齢変化
    ⑨ エナメルセメント境(セメントエナメル境 )
   3 歯 根 膜
   4 歯根膜の線維
    ① 歯槽頂(歯槽縁)線維群
    ② 水平線維群
    ③ 斜(走)線維群
    ④ 根尖線維群
    ⑤ 根間線維群
   5 歯 槽 骨
   6 歯肉と歯槽粘膜
    ① 遊離歯肉
    ② 付着歯肉
    ③ 外縁上皮
    ④ 内縁上皮
   7 歯肉溝上皮と付着上皮
   8 歯肉の線維
    ① 歯頸‒歯肉線維群
    ② 歯頸 ‒ 骨膜線維群
    ③ 歯槽骨 ‒ 歯肉線維群
    ④ 中隔横断線維(歯間水平線維)群
    ⑤ 輪状線維群
   Column ⑧ シャーピー線維の作り方

第 9 章 口腔諸器官
   1 口腔粘膜
    ① 咀嚼粘膜
    ② 特殊粘膜
    ③ 被覆粘膜(裏装粘膜 )
   2 口 蓋
   3 口 唇
    ① 皮膚部
    ② 赤唇縁
    ③ 口唇粘膜部
   4 舌
    ① 糸状乳頭
    ② 茸状乳頭
    ③ 葉状乳頭
    ④ 有郭乳頭
   5 唾液腺の構造
    ① 漿液腺
    ② 粘液腺
    ③ 混合腺
   6 大唾液腺
    ① 耳下腺
    ② 顎下腺
    ③ 舌下腺
   7 小唾液腺
   8 顎 関 節
    ① 下顎頭
    ② 下顎窩
    ③ 関節腔
    ④ 関節円板
    ⑤ 関節前部
    ⑥ 外側翼突筋上頭
    ⑦ 関節後部
   Column ⑨ 2 つのエブネル