定価:3,666円(本体3,333円+税10%)
概要
本書は,2009年までの新薬を含めた処方せん鑑査・疑義照会のノウハウを,処方せんチェックのポイント(カテゴリー分類)ごとに問題形式でまとめあげました.まず、処方とエピソードで 処方(Rp.)内容を提示するとともに患者背景・基本情報などを述べ,難易度を5段階で提示してあります.【指導薬剤師から一言】では,ヒントを得ることができます.次に、 鑑査のポイント で処方のどこに焦点を当ててどこに問題があるかを詳細に解説しました.その後,【疑義照会】を医師に対して行うときの一例を記載しています.そして,最後に医師と薬剤師との協議から 処方変更 に至った場合はその内容を 処方(Rp.)として記載しました.さらに,処方変更に至った理由を必要に応じて簡単に解説してあります.
薬剤師の処方せん鑑査や疑義照会のスキルを研鑽するためには,このような体系的な理解が最も能率的と考えて企図したものです.医師のため,そして最終的には患者さんのために最良の処方せん鑑査・疑義照会を実践するためにお役にたてていただける一冊です.
薬剤業務は、図に示すように、処方受付から、発注・充填に至るまで複雑な流れとなっている。
この中でも「処方せん鑑査」は調剤の最初に位置するきわめて重要なチェック業務である。その後、処方内容の確認、薬歴・お薬手帳での確認、服薬指導・薬歴記載の場面から疑義照会にいたり、医師への確認を行い、再度同じプロセスで流れていく。ここでとくに問題がなければ、薬剤情報提供文書にいたり薬剤が交付されることになる。
この処方せん鑑査、疑義照会のプロセスで薬剤師は、明らかに間違っている処方を訂正することはもちろん、とくに問題はないけれど、最新のエビデンスから考えて、より良い、さらには最良の処方に変更してもらうよう努力する必要がある。十分な処方せん鑑査、疑義照会が行われずにミスをおかした事例がマスコミにも紹介されるようになっており、また不十分な鑑査に対して裁判で薬剤師の責任が問われた判例も出てきている。医薬分業が50%に達したこの時期、個々の薬剤師の処方せん鑑査、疑義照会に関する技能の研鑚は欠かすことができない重要な課題である。
本書は、処方せん鑑査、疑義照会のノウハウを、処方せんチェックのポイント(カテゴリー分類)ごとに問題形式でまとめあげたものである。「実践トレーニング編」として、まず、【処方とエピソード】(難易度を5段階で表示)で処方内容を提示するとともに患者背景・基本情報などを述べる。【指導薬剤師から一言】では、ヒントを得ることができる。次に、【鑑査のポイント】で処方のどこに焦点を当ててどこに問題があるかを詳細に解説する。その後、【疑義照会例】で医師に対して行うときの一例を口語調で記載した。そして、最後に医師と薬剤師との協議から【処方変更】にいたった場合はその内容を処方として記載した。さらに、処方変更にいたった理由を必要に応じて簡単に記載した。また、読者が本書を参考書としてカテゴリー分類ごとに研鑚を踏んだあと、再度理解度を自己チェックしたりあるいは復習するために「確認シート」を設けた。
本書は、薬剤師の処方せん鑑査や疑義照会の技能を研鑚するためには、このような体系的な理解が最も能率的と考えて企図したものである。医師のため、そして最終的には患者さんのために、より良い、さらには最良の処方せん鑑査、疑義照会を実践するために、本書が少しでもお役にたてば著者にとって望外の喜びである。
本書を執筆するにあたり、福岡市博多区薬剤師会理事の森 千江子先生には、執筆協力者として原稿から発刊にいたるまで細部にわたってチェックしていただいた。この場を借りて御礼申し上げる。
実践トレーニング編
■販売名・一般名
処方された薬の名前が不明確で特定できない
薬名(商標・剤形・規格単位)の記載が不十分で調剤薬を特定できない処方
2種類以上の適用法がある外用医薬品の使用方法が特定できない処方
■組成・性状・有効成分
処方された薬には問題はないが製剤に問題がある
医師の薬剤・製剤に対する認識不足が考えられる処方
製剤の不適切な加工・調製が指示されている処方
■効能・効果
処方された薬が疾患の治療目的には不適当である
当該薬剤と併用されたほかの薬剤から病名を推定して、当該薬剤の選択にミス(正しくは名前が類似したほかの薬剤を選択すべき)があるのではないか判断される処方
初回使用時に条件が規定されている薬剤の処方
薬剤選択に患者取り違えの可能性が疑われる処方
患者の疾患と薬剤との乖離から間違いが疑われる処方
患者の疾患と薬剤との乖離から適応外使用が疑われる処方
同一薬効群ではあるが、適応がない薬剤の処方
処方頻度のきわめて低い薬剤の処方
診療科や医師の専門領域にそぐわない薬剤の処方
他剤との併用が規定されている薬剤の単独処方
使用にあたり必要な検査が実施されていないことが明確となった処方
十分な治療効果が得られないとの患者の訴えから不適当と考えられる処方
効能・効果の条件に一致しない薬剤の処方
削除された効能・効果に基づく処方
一般的には女性(男性)に処方される医薬品の男性(女性)への処方
第1選択薬となっていない処方
一般的には閉経後の女性に処方される医薬品の若い女性への処方
同一医薬品ではあるが、適応がない薬剤の処方
■用法・用量
処方された薬の投与法・投与量が不適当である
薬剤の服用時期に疑問がある処方
散剤の分量が主薬量(成分量)か製剤量かの判断が困難な処方
頓服に関する指示に疑問がある処方
薬剤の制限量を超えた処方あるいは過少量投与の処方
病名によって薬剤の投与量が異なることが考慮されていない処方
投与期間を確認することが望ましい処方
小児の年齢、体重に対して適正な用法・用量になっていない処方
特殊(不規則)な用法・用量(期間限定の漸増・漸減)が守られていない処方
特殊(不規則)な用法・用量(期間限定の休薬期間)が守られていない処方
過量投与、あるいは過少投与からミスが疑われる別物処方
高齢者に適正な用法・用量になっていない処方
腎機能障害が疑われた患者に用法・用量の調節が考慮されていない処方
肝機能障害が疑われた患者に用法・用量の調節が考慮されていない処方
服薬時期が多く、コンプライアンスの低下が危惧される処方
のみ忘れた、あるいは飲み過ぎた場合の用法・用量調整
連用されていた薬剤が突然中止となっていた処方
ほかの薬剤への切り替え方法に問題がある処方
同じ主薬であるが製剤の変更に問題があると考えられる処方
病名によって薬剤の投与回数・投与期間が違うことが認識されていない処方
規定された低投与量から開始されていない処方
特殊(不規則)な用法・用量で誤解を生む処方
女性に適切な用法・用量になっていない処方
過量投与から適応外使用が考えられる処方
急激に増量となっていてミスが疑われる処方
過小量投与から適応外使用が考えられる処方
■禁忌・慎重投与(薬剤に不適切な疾患)
処方された薬が疾患(治療目的の疾患以外の疾患)に不適当である
呼吸器系疾患患者、喘息患者に禁忌・注意薬剤の処方
手術や抜歯前の休薬期間が不十分な処方
心血管系疾患のある患者に禁忌または慎重投与となっている薬剤の処方
てんかんあるいはけいれんのある患者に禁忌または慎重投与となっている薬剤の処方
肝障害患者に禁忌または慎重投与となっている薬剤の処方
腎障害患者に禁忌または慎重投与となっている薬剤の処方
前立腺肥大患者に禁忌または慎重投与となっている薬剤の処方
消化性潰瘍患者に禁忌または慎重投与となっている処方
胆石患者に禁忌または慎重投与となっている薬剤の処方
糖尿病患者に禁忌または慎重投与となっている薬剤の処方
耳鼻科疾患に禁忌または慎重投与となっている薬剤の処方
うつ病、自殺念慮または自殺企図などの精神状態にある患者に禁忌または慎重投与となっている薬剤の処方
片頭痛の患者に禁忌または慎重投与となっている薬剤の処方
甲状腺機能亢進症、甲状腺機能低下症の患者に禁忌または慎重投与となっている薬剤の処方
緑内障の患者に禁忌または慎重投与となっている薬剤の処方
インフルエンザの患者に禁忌または慎重投与となっている薬剤の処方
高血圧患者に禁忌または慎重投与となっている薬剤の処方
発熱のある小児患者に禁忌または慎重投与となっている薬剤の処方
皮膚疾患の患者に禁忌または慎重投与となっている薬剤の処方
■禁忌・慎重投与(薬剤に不適切な生理状態)
処方された薬が生理的状態に不適当である
高齢者に禁忌または慎重投与となっている薬剤の処方
小児の患者に禁忌または慎重投与となっている薬剤の処方
妊婦の患者、妊娠している可能性のある患者あるいは妊娠を希望している患者に対して禁忌または慎重投与となっている薬剤の処方
特別な仕事を行う患者に禁忌または慎重投与とされている薬剤の処方
卵、牛乳に対する過敏症などの体質をもつ患者に禁忌または慎重投与となっている薬剤の処方
アレルギー(ショック、薬疹など)歴のある薬剤の処方
授乳を希望している患者への処方
先天性QT延長症候群の家族歴のある患者に禁忌または慎重投与となっている薬剤の処方
薬剤の味に敏感な患者への処方
特定の宗教に不適な薬剤の処方
■禁忌・慎重投与(薬物相互作用)
処方された薬ののみ合わせが不適当である
薬剤と薬剤の組み合わせに問題(吸収過程)がある処方
薬剤と薬剤の組み合わせに問題(代謝阻害)がある処方
薬剤と薬剤の組み合わせに問題(代謝促進)がある処方
薬剤と薬剤の組み合わせに問題(腎排泄過程)がある処方
薬理効果が同じ症状、同じ現象あるいは同じ受容体・酵素に作用する薬剤が複数同時に出されて、薬理効果の増強あるいは減弱が予想される処方
副作用が同じ症状である、または同じ受容体・酵素を介する薬剤の複数処方
薬理効果が逆の症状(現象)となる薬剤が複数同時に出されて薬理効果減弱が予想される処方
薬理効果と副作用が逆の症状(現象)となる薬剤が複数同時に出されて薬理効果減弱が予想される処方
薬理効果と副作用が同じ症状(現象)となる薬剤が同時に出されて作用増強が予想される処方
食生活(食物)の関係に問題(作用増強)がある処方
食生活(食物)の関係に問題(作用減弱)がある処方
薬剤と食の成分が類似していて集積している処方
副作用
処方された薬の副作用が出た
心血管系への作用が考えられる処方
筋肉への作用が考えられる処方
腎臓への作用が考えられる処方
肝臓への作用が考えられる処方
中枢神経系への作用が考えられる処方
皮膚への作用が考えられる処方
呼吸器への作用が考えられる処方
血糖値への影響が考えられる処方
眼への障害が考えられる処方
消化器系への作用が考えられる処方
甲状腺への作用が考えられる処方
聴覚への作用が考えられる処方
浮腫が考えられる処方