演習で学ぶ 災害看護

推薦文

日本集団災害医学会セミナー委員長
フジ虎ノ門整形外科病院 外傷・救急センター
山口 孝治

災害が発生した際に,迅速で確実な対応を実施するため,平時(静穏期)から多くの準備が行われています.なかでも,災害医療に関する項目は,最も大切な準備項目です.災害医療の基本的な考え方は,災害とは何かを知り,災害による被害を理解し,被災により発生する健康危機に陥った傷病者の予後を改善することです.

災害医療教育は,この一連の流れを踏襲し,系統だった構成になっていることが必要不可欠であると考えられています.災害時の医療は,日常の医療に比べ大変まれな事象であるため,座学で得た知識だけでは迅速・確実に対応することは不可能であり,常に実践向けの準備が必要になります.その準備とは訓練やシミュレーションになりますが,現状では,目の前にあることを処理するための一時的な対応に過ぎず,効果的な手法が考案されているとは言いがたい状況です.

日本集団災害医学会セミナーでは,1997年より長きにわたり座学とシミュレーションによる災害医療の現任教育を展開してきました.しかし,今もなお概念の習得に留まり,具体的で実践的な方法(技術や手法)を指導するところまでには至っていません.

本書は,①テーマの位置づけで「何を学習するか」を明確に示し,②演習の目標で「具体的な到達目標」を設定し,③演習の準備で何をどのように準備するかを具体的に示し,④演習のフローチャートで具体的な実施方法を示し,⑤必要な知識と技術を十分に解説し,⑥評価の視点にもふれ,⑦練習問題も掲載され,他の書籍に類を見ない構成になっています. まさに「概念を実動に落とし込む」プロセスを分かりやすく解説した書籍であると言えます.

災害というまれな事象に対応するための準備であるからこそ,「憶える学習」より「考える学習」が重要であり,本書の出版により「考える学習」が可能になることは確実です.また,本書の活用により,災害訓練やシミュレーションを実施する際に,その都度行っている「概念を実働に落とし込む」煩雑な作業を省くことが可能です.

本書は,職種を問わず,学生教育から現任教育まで広い範囲で活用でき,災害看護を学ぶ人だけではなく災害医療を学ぶすべての方々にとって,座右の銘と呼ぶべき1冊であると思います.また,日本集団災害医学会セミナーなど,多くの研修会に参加される際の事前学習用テキストとしても,最適な1冊であると考えます.