医療従事者のギモンに答える!トラブルに巻き込まれない著作権のキホン

医療従事者のギモンに答える!トラブルに巻き込まれない著作権のキホン

書評

「知らなかったのか? 著作権からは逃げられない」

市原 真 先生(JA 北海道厚生連 札幌厚生病院 病理診断科 医長)

 参ったなあ,と声が出た.どうにかしないとなあ,と続く.書店で思いもよらない本に出会ったとき,SNS で自分がまったく触れたことのないジャンルの本を教えてもらうとき,いつもワクワクするぼくが,今度ばかりはビクビクしていた.
 法律のことはちっともわからない.ため息まじりにページをめくる.学術研究における著作権? 考えたこともなかった.データの引用と図版の引用の違い? 論文でそんなこと気にしてなかった.二重投稿禁止の意味? 学会の都合だろ,と思っていたが思いのほか学術的な意味が隠されていた.本を出すときの注意点? 知らずに何冊か本書いちゃったよ,どうしよう.講演のときに画像をどう使うか? わあ,まずい,今日からさっそくプレゼンを見直さなきゃ!
 踏切で一時停止せず走って行こうとした車を,隠れて見張っていたパトカーが呼び止める.そこで一時停止しないのは違反ですよ.切符を切られた運転手は,怒気混じりにつぶやくだろう.「そんなこと知らなかったぞ.」けれども,ぼくたちオトナは知っている,交通法規は「知らなかったから守れなかった」では済まないということを.
 たぶん同じなのだ.医術の世界に生きるぼくらは,もちろん法律の専門家ではないが,著作権を知らなかったでは済まされない.
 本書を読み進めているうちに気づくこと.現代,ぼくらは昔よりもはるかに多くの情報を発信し,受信をしている.検索して,引用して,一日一善ならぬ一日一クリエイションに励んでいる.ぼくらが無意識に行っている引用は「正当な引用」だろうか? ぼくらは「無断転載を禁ずる」の意味を知っているか? 知らないうちに踏切を突っ切ってはいないか?
 この貴重な読書体験をシェアしようと思い,初期研修医室の扉を叩いた.初期研修医たちは,「今度はどんな本を持ってきたんですか?」と目を輝かせた後,すぐに顔を曇らせる.
「著作権?」うん,気持ちはわかるぞ.でもぼくらはもう,逃げられない.