医療従事者のギモンに答える!トラブルに巻き込まれない著作権のキホン

医療従事者のギモンに答える!トラブルに巻き込まれない著作権のキホン

書評

羮(あつもの)に懲りて膾(なます)を吹かないために!

狭間 研至 先生(ファルメディコ株式会社 代表取締役社長)

 医師にしても薬剤師にしても,免許を取ってしばらくすると「学会発表してみてよ!」と言われます.そんなの無理!と思いながらなんとか頑張ってこなすと,ちょっとした達成感もあるし医療における階段を一歩上がったような気もして機会を見つけて発表するようになります.
 そうこうしていると,「ペーパー(論文)にしてみてよ!」と言われます.忙しい毎日でそんなヒマ(!?)あるかいな!と思っても,周りを見渡すとなんとなく書いている人もいるし上司からのプレッシャーもあるし,見よう見まねで書いてみます.すると確かに大変だけれど学会発表とは比べものにならない充実感があって,「次は何を書こうかな?」と思うようになります.
 そういった活動を続け,臨床経験も積む中で,自分の専門領域ができてきます.するとひょんなところから「ちょっと記事を書いてもらえませんか?」と原稿依頼が来たりします.話を聞くと,自分も読んでいる専門誌の特集記事の依頼だったりするので,ついうれしくなって書いてしまいます.そうするとありがたいことにまた別のご依頼をいただくようになります.
 こうなると「○○の専門家」となっていきますから,「一般の方向けの講演会に出ていただけませんか?」と言われたり,メディアの取材の依頼が来たりするようになります.最初は何の気なしに始めた学会発表からあたかも「わらしべ長者」のように次々に仕事がつながっていくというのは医師も薬剤師もしばしば経験することだと思います.
 こんなときに一貫して気をつけないといけないことが二つあります.
 一つは依頼があったときには「頼まれごとは試されごと」の精神で,まず受けてみることです.返事は,0.2秒で「ハイ」か「イエス」なのです.もちろん,毎日は忙しいのですが,頼まれたというのは「ご縁」です.断る理由はいくつもありそのストーリーも完璧だとしても,そこをあえて挑戦してみるのです.私の先輩で論文をコンスタントに書いている先生に「どうやってそんなに書けるのですか?」と聞いたことがあります.するとにこっと笑って「1日1文ずつ書くって決めるんだよ」と言われました.1文書くとついまとめて書いてしまうとも.確かに時間は作るものですね.
 そしてもう一つが「著作権」の問題です.学会発表,論文,依頼原稿,講演会などさまざまな場面で自分の専門領域をお話ししたり,少し興味をもって聞いてもらおうとしたりすると,キーになる有名な図表を使ったり,有名タレントの写真をスライドに映してみたりしたくなるものです.しかし,インターネットの普及も背景に起こりやすい安易な「コピペ」は後々「著作権侵害」という大変な問題を引き起こします.とはいえ「著作権」を恐れ過ぎて過度に萎縮していては自分のメッセージが伝えられないというジレンマに陥ります.そうならないための懐刀のような一冊が本書です.
 日常的に執筆や講演を行っている中堅からベテランの先生はもとより,これから学会発表を始めようという若い先生にも,ぜひご一読いただき,「羮に懲りて膾を吹く」ことのないようにしながら存分に自分の専門性を高めていただく一助にしていただければと思います.