ポリファーマシー見直しのための医師・薬剤師連携ガイド

ポリファーマシー見直しのための医師・薬剤師連携ガイド

書評

林 昌洋 先生(虎の門病院 薬剤部長)

 世界に類をみない速度で超高齢社会を迎えたわが国では,健康長寿を謳歌していただく意味でも,医療提供体制を健全に維持する観点でも,高齢者の薬物療法の最適化は喫緊の課題となっている.
 日々の業務の中で,持参薬確認や薬歴管理に際して,高齢者のポリファーマシー問題を意識する機会が増えているのではないだろうか.しかし,高齢者は複数の疾病を患っていることも多く,それに対して複数の医療機関を受診しており,各疾患にはそれぞれ主治医がいて処方が出されているため,ポリファーマシーの見直しは難しいと感じている薬剤師が多いのも事実である.
 こうした問題への道標となり解決策を提示してくれる書籍として本書が出版された.
 本書は,総論,医師・薬剤師連携のアクションチャート,医師と薬剤師の対応・連携に関するQ&A,症例でみる実際の連携と見直しのポイント,現場で使える連携ツールの5章から構成されている.初心者にもわかりやすい構成であると同時に,実務経験豊富な薬剤師にとっても新たなヒントが満載の知恵袋的な内容となっている.
 中でも,41 項目のQ&Aは,30 文字程度のQuestion,数行の回答Summary,1頁程度の解説から構成されており読みやすい.この領域に初めて関心をもった方が通読するのもよいし,日常業務において遭遇した問題点について参照するにも便利である.このQ&Aと合わせて特筆すべき点が,医師と薬剤師がポリファーマシーの見直しを連携・協議している場面が描かれた22項目の症例である.
 本書の記載から少し紹介してみよう.Q36では「高齢者がヒスタミンH2受容体拮抗薬を使用する場合の注意点は?」のQuestionに対し,Summaryでは「特に高齢者では認知機能低下やせん妄のリスクとなること」「腎機能低下患者では排泄が遅延して血中濃度が高くなり有害事象が生じやすいこと」を認識する必要があると回答されている.本書では,このQ&Aが症例とリンクしている.リンク先の“症例2”では,薬剤師が「シメチジンは薬物相互作用もあるので,ほかの薬剤へ変更してはどうでしょうか?」と医師に処方提案すると,医師は「胃潰瘍を起こされても困るので,中止してランソプラゾールへの変更をしましょう」と処方を再考する場面が用意されている.書籍の中で,擬似的にポリファーマシーチームのラウンドに立ち会う経験ができる仕組みとなっている.経験豊かな薬剤師の着眼点やコミュニケーションスキルのお手本が学べる工夫も,ぜひ本書をお勧めしたいと感じた根拠である.
 ポリファーマシー対策は,多職種連携のもと進める必要があるが,本書の利用の手引きには「医師・薬剤師の連携・協働はポリファーマシー対策のセンターライン」と書かれている.薬剤師であれば誰もが薬の専門職としての責任を再認識するとともに,ポリファーマシー対策に取り組む“勇気”と“知恵”をもらえる一冊となっている.