リハビリテーションとしての在宅医療

リハビリテーションとしての在宅医療

書評

長谷田真帆 先生 (佐久総合病院地域医療部)

在宅医療に携わると,大学では教わらなかったような問題,病院では考え得なかったような状況にしばしば直面させられる.「在宅医療の技とこころ」シリーズは,まさにそのテーマについて知識を得たい,と感じて手にとってみたくなる本ばかりであり,気が付いたときには自分の本棚に一通り揃ってしまっていた.
同シリーズの第8巻である本書は,在宅医療の際に活用できる,リハビリテーション(以下リハ)医療の中のノウハウのエッセンスが詰まっている.
在宅医療の目的は「本人らしく生きることを支えること」であり,在宅医療に従事する医療者には,単なる医学的介入のみならず,生活空間の中で,いかに本人の目標を達成するかという視点が求められる.急性期病院の研修では養うことが難しい,その視点を補う一助となるのが本書である.
序盤は在宅医療におけるリハとしての観点と,多職種協働による評価・目標設定をすることの重要性について,わかりやすく簡潔に述べてある.
中盤からはポジショニング・動作の介助方法などについて,文章にコマ送りの写真数枚がついて説明をされており,非常にイメージをつかみやすい.住環境整備,とりわけ福祉用具の選定における注意点なども同様である.また認知症や心疾患・呼吸器疾患,生活期(維持期)のリハなど,他の職種や時には家族から必要性を理解されにくいものに対しても,リハ的な介入の仕方とその効用について疾患毎に数ページずつ記載されている.
最後は実際の症例4例をICF(国際生活機能分類)のフレームワークを用いて機能構造・活動・参加に分けて評価し統合的に本人を捉えた上で,短期・長期的な目標を立て,どのように働きかけることができるか,という一連の流れを制度上のことも絡めて記載されている.それまでの内容を具体的に活用する作戦とそのメリットを,改めて確認することができる.
いずれの章も,専門的知識が必要と思われる部分はさらりと触れる程度に書いてあり,リハの知識が薄い者でも無理なく読むことができ,最低限の知識は得られるような仕組みになっている.欲を言えば,具体的なケースについて,(現行のもので構わないので)どのような制度をどのような手続きを踏むことで利用可能となり,それによって本人にどのようなメリットがあるのか,という点についてもう少し詳細な紹介が欲しかった.
本書は患者さんの生活を支えたいと想いながらも,その介入に関して悩みを持っているスタッフ(自分のような在宅医療の初学者のみならず,全ての職種)に,比較的手軽に新たなスキルを与えてくれる可能性のある一冊である.