痛みの内科診断学

痛みの内科診断学

書評

「鍋島先生の痛みの思考過程が単著で学べる稀有な一冊」

志水太郎 先生(獨協医科大学病院 総合診療科)

 著者の鍋島先生には自身が所属する日本病院総合診療医学会の総会の会場で数年前,お目にかかったのが初めてでした.その際,大学教授でこんなに物腰の柔らかい先生がいらっしゃるのか,というのが第一印象でした.同学会で鍋島先生が大会長を務められた学術総会のテーマは「内科診断学の復権」でしたが,その内科診断学への思いが痛みというトピックで昇華されたのが本書,というのが,評者が書籍を拝読したとき感じた第一印象でした.本書は単著であり,そのため「鍋島道場」ともいえる鍋島先生の世界観が展開されています.鍋島先生の文章は物語的で,まさに診断を大事にされる鍋島先生ならではの,映像化ができるような話の展開に序文から引き込まれます(ご自身のエピソードなど). 続く本論では,痛みからの問い(痛みをどうとらえるか),痛みのメカニズム,痛みの分類,診断(病歴とフィジカル),治療に続き,10の症例と続いている包括的な内容となっています.章末に時々息抜きのように挟まれるコラムも,鍋島先生の実体験に基づく逸話が多く,共感を覚えるとともに,痛みのエピソードを理解する非常に良い勉強になります.
 本書は単著であるため,どの章を通しても一貫して鍋島先生の思考が学べること,さらに鍋島先生の柔らかい語り口と豊富な具体例,さらに,読み進める中で読者がその思考過程を頭の中で再現できるような記載が,本書が学習者目線で痛みの学びを深めることができる内容になっているといえると思います.評者が読者の皆さんに特にお勧めしたい本書の勉強法は,最終章の症例集の前までの理論編を熟読したのちに,最後の症例集を「痛みへのアプローチ」という鍋島先生の解説を手で隠しながら「自分ならこう考える」と紙に思考過程や鑑別疾患を「書きながら(書くと自分に言い訳ができない!)」ステップごとに読み進めることです.こうすることで,自分自身がどのように考えたか(または,考えられなかったか)を手で隠された“鍋島先生のアプローチ”と比較して,自己デブリーフィングができると思います.
 このように,1冊で理論と実践(しかも鍋島先生の思考過程!)を学べる痛みについての単著の本は,個人的にも余り拝見したことがありません.お薦めです!