痛みの内科診断学

痛みの内科診断学

書評

「痛み診療と3つのキョウ」

平島 修 先生(徳洲会奄美ブロック 総合診療研修センター)

 はじめて著者の鍋島茂樹先生とお話しをさせていただいたとき,大学教授という立場で,研究・教育・教室のマネジメントだけでなく,一般外来・救急外来でも第一線で診療にあたられていると伺って,現代版ウィリアム・オスラーではないかと感じた.今回,鍋島先生が,内科医が苦手としがちな「痛み」に関する書籍を上梓され,楽しみに読ませていただいた.
 本書で強調されている,痛み診療に必要な“3つのキョウ”「興味・共感・協力」を実践するのはほかの疾患に比べて難しい.「くも膜下出血の痛みはバットで殴られたような痛み」と教わったことがあるが,バットで殴られた経験者はほぼいないし,患者さんにそのまま「バットで殴られたような痛みですか」と聞くと,このお医者さん大丈夫か?と心配されかねない.試しに,自分の頭をバットで殴ってみようと思う人もいないだろう.「痛み」は患者を最も苦しめる症状であり,患者は誰でもいいからこの苦しみをとってほしいと思うが,医師はその痛みを経験したことがなく,同情はできても共感は容易ではない.そしてCTなどの検査異常のない痛みに対しては,患者の苦しみを軽視されがちになる.
 では痛みに対して興味をもって共感し,協力するとはどういうことか.痛みの生理学的メカニズムを知り,解剖学的にアプローチして検討し,問診・身体診察から患者一人ひとり違うストーリーを引き出すことではないだろうか.痛いところはCT検査という短絡的診療では,3つのキョウはいずれもなされず,検査異常のない患者は痛み難民と化してしまう. 本書は痛みのメカニズム・解剖学的考察,そして痛みを癒やす技まで丁寧に解説されており,「痛み」という学問への興味を強くそそられる.そして最後の症例集で,学んだ知識を現場でどう使っていくかという実例が提示されている.
 痛みを学び,診療が楽しみになることが3つのキョウへの第一歩ではないだろうか.

【初掲】「レジデントノート」Vol.22 No.7(8月号)2020