ワクチンで困るケースをみんなで話してみました

ワクチンで困るケースをみんなで話してみました

ケースで学ぶ予防接種の実際

書評

山口征啓 先生 (健和会大手町病院感染症内科 副院長)

 本書は,その名前の通りワクチン診療を行っている医師の対談をもとにしている.登場する医師は,各方面の第一線で診療を行っている医師たちで,とても豪華な顔ぶれである.ケーススタディとディスカッション形式のためにとても読みやすいが,内容は非常に濃厚であり,読者に現場のノウハウを伝えようという著者らの熱意を感じる.
 各章が一つのワクチンを対象にしており,PartIは小児8ケース,PartⅡが成人4ケース,PartⅢがトラベラーズワクチン4ケースという構成になっている.どれも本当に「困るケース」なのであるが,それらに対して基本的な知識に加えて,実践的なTipsやコツが満載である.たとえば,引っ越しで自治体が変わった場合の対応,2種類の製剤を組み合わせる場合,季節が逆になる南半球へ旅行する場合,卵アレルギーの対応,妊婦の渡航ワクチンなどなどである.またワクチン診療では費用が問題となることが多いが,保険適応や公費負担,接種法など細かいところまで議論されている.各所で重要なエビデンスを紹介しつつも,エビデンスの届かないところには貴重なエキスパートオピニオンが述べられている.このようなコツは,成書や講演会では得にくく,実際にワクチン外来で研修をしないと習得は難しいが,本書はケースとディスカッション形式をとることで,これらをまとめることに成功している.
 各章のはじめには各ワクチンについてまとめられており,後から参照するときにもわかりやすい.各章の最後にはTake home messageが箇条書されている.また本書はディスカッションを元にしているが,収録日と最終更新日がきちんと記載されており,良心的である.
 日本のワクチン診療は,諸外国に遅れていたワクチンの導入や新たなワクチンの登場で大きく変化しており,アップデートが重要になっているが,小児から高齢者までカバーしている本書は,プライマリケアの医師の診察室にお勧めの1冊である.