目指せ感染症マスター!抗菌薬処方支援の超実践アプローチ

目指せ感染症マスター!
抗菌薬処方支援の超実践アプローチ

書評

徳田安春 先生(地域医療機能推進機構(JCHO)本部 顧問)

病院医療の価値を高める実践書

 著者を存じ上げていなかったので,バイアスなしに読んで,「すごい本」であることが分かった.著者は「すごい!」のである.患者ケアでの著者のパフォーマンスは,一般の非感染症科医師が行うレベルを超えているのだ.監修者が感染症専門医であるとはいえ,この本の内容を読むと,著者が行っているパフォーマンスの質の高さが分かる.
 まず,病歴聴取と身体診察について,ポイントをおさえながら詳細に記述している.ベッドサイドに足しげく通い,診断に決定的なフィジカル所見をみつけている.医師が見逃すような,CRBSIでのライン刺入部の発赤や心内膜炎での粘膜の点状出血,糖尿病足での骨まで届く深い皮膚潰瘍,など,これを読むと感染症診療でのフィジカル診断のポイントが分かる.
 また,徹底的なグラム染色検査を施行している.医療関連感染症で問題となる肺炎と尿路感染症の可能性を常に念頭において,喀痰と尿を染めている.その解釈も非常に専門的なハイレベルである.また,抗菌薬投与後のグラム染色検査を行って,治療効果の判定をみずから行っている.読者もグラム染色を「やってみよう」という気になる.
 鑑別診断の根拠も妥当である.もちろん,推奨する抗菌薬内容は,論理的で薬学的な知識を存分に提供してくれている.各種感染症のモニタリング法も,症状,バイタルサイン,身体所見などを重視し,CRP値や画像検査に振り回されることのない,高価値な医療(High Value Care)を実践している.ベッドサイドでフィジカルを取れる薬剤師が今後ますます増えてくるであろう.
 各ケースの後の反省点も正直で潔い.医師が書く本にはあまりない部分で,謙虚さと向学心がうかがえる.監修者からのコメントも有用であり,ピットフォールを分かりやすく示してくれている.参考文献も最新のものであり,メジャーなジャーナルから慎重に引用している.一読した直後に評者は,著者が勤務している病院を検索した.薬剤師がこの高価値医療を提供できている病院を知りたかったためだ.調べてみると,札幌市内の脳神経科病院であった.著者の病院のように,薬剤師と医師がうまく協働して,感染症ケアを薬剤師中心に行っている病院が今や全国に広がりつつある.
 評者の結論は,全国の病院薬剤師が本書を読み感染症ケアの重要な一員になるということ,である.全国の薬剤師が本書の内容を実践すれば日本全体の医療の価値が高まるであろう.