目指せ感染症マスター!抗菌薬処方支援の超実践アプローチ

目指せ感染症マスター!
抗菌薬処方支援の超実践アプローチ

書評

大曲貴夫 先生(国立国際医療研究センター 国際感染症センター)

感染症診療に数歩踏み込みたい薬剤師のための手引書

 わが国における感染症診療は過去10年で大きく変わった.好ましい変化であるといえる.感染症の原則的な考え方の重要性が医療現場で理解されるようになり,医療実践も変わってきている.
 従来,そのリーダーは感染症を専門とする医師,あるいは感染症診療を得意とする各科の医師であった.しかし,感染症を得意とする医師がいない現場も現実にはよくある.ならば関係する者が力を合わせて臨んでいくしかない.そこで大きく力を発揮するのが薬剤師である.
 日本の医療現場では感染症の診療に深く参画する薬剤師が増えてきていることを,筆者は実感している.しかし,薬剤師が感染症の診療に関わることは必ずしも楽ではない.意見を求められるのが用法・用量などに限られていればまだよい.しかし,実際には「よくならないから何か抗菌薬を教えて欲しい」などの極めて難しい質問を受けて答えられずに苦悶する,なにやら怪しげな抗菌薬処方をしている医師に治療を変えさえようとしてもその医師を納得させるような意見を述べることができないなど,厳しい現実があるのも事実である.
 無理をせずそこには踏み込まないことも選択の一つである.ヤケドする.しかし,そこで踏み込むと決心したならば,腹を括って学んで実践するしかない.何を学ぶかといえば,感染症診療の考え方を実際の場で適用して自分の実力にしていくことである.すなわち,さまざまな患者・多様な疾患の患者がいる中で,その問題にどう対処するかを,原則的な考え方を手がかりに何度も繰り返すことである.
 本書は事例ベースで構成されている.しかし,事例に直面したときの考え方をどうすべきかを,医師と薬剤師の対話の形で愚直に繰り返して説いている.この繰り返しこそが重要である.