在宅医療×感染症

在宅医療×感染症

書評

亀井 三博 先生(亀井内科呼吸器科)

私が開業した20年ほど前から,医療という名の大河は病院から在宅へとその流れを変えてきた.在宅医療を巡るシステムの整備のおかげで長期人工呼吸など,病院で過ごさざるを得なかった多くの患者さん達はご家庭で過ごすことができるようになった.その流れに身を置きかつて病院医師として,そして今診療所医師として患者さんのお宅に向かう日々を過ごす身として感じるのは,病院と在宅の間に横たわる河は存外深くて広いものであると言うことである.患者さんとともに望む向こう岸は遥か霧に霞んでいる.それは彼岸の医師にとっても同様であろう.どこにあっても日々直面する感染症という普遍的な問題の解決の切り口から在宅医療に迫った,あるいは在宅医療という視点から感染症に迫ったこの書籍は彼岸と此岸をむすぶ架け橋ともいうべき力作である.在宅医,病院専門医,そして看護師が胸襟を開き語り合う中から私たち読者は多くの学びを得ることができる.知らぬ間に付箋だらけになったこの本は在宅で患者さんを診る医師にとって有用な情報,専門医からの温かいメッセージが満載である.しかし個人的にはこの本は一生在宅には縁がないかもしれない研修医・医師達に読んで頂きたい.病院では可能な感染症治療・予防のためのベストな選択は家で暮らす患者さんとそのご家族の生活を守るためにベターな選択にならざるを得ないことを知って欲しいと思う.この本を読んで頂くことで霧に霞む河の向こう岸に患者さんとたたずむ私たちの顔が,そしてお互いの顔が見通せるようになり,より多くの在宅で暮らす患者さん達の生活が豊かなものとなることを信じている.