多職種カンファレンスで考える 心不全緩和ケア

多職種カンファレンスで考える 心不全緩和ケア

書評

心不全緩和ケアを実践するにあたって手引きとなる書

佐藤幸人(尼崎総合医療センター循環器内科 科長)

 心不全の生存率はがんにも匹敵するほど悪いことが判明し,最期は耐え難い身体的・精神的苦痛が顕著となる症例も多い.しかし,緩和ケアのタイミングの判断がしばしば困難であることやエビデンスに乏しいことなどから,長らく具体的な記述が困難な領域となっていた.そこで2016年,日本心不全学会ガイドライン委員会は「高齢心不全患者の治療に関するステートメント」を発表し,その中の「終末期医療の指針」において,アドバンス・ケア・プランニングと緩和ケアについての提唱を行った.

 一方,心不全多職種チーム医療は日本では10年くらい前から取り組まれているが,欧米のスタイルを模倣しながら日本の社会背景に応じて独特な形に発展しつつある.慢性心不全認定看護師や緩和ケア認定看護師などの認定看護師を中心とした多職種チームも多くの施設で立ち上がってきているが,心不全多職種チーム医療のひとつとして,緩和ケアに焦点をあてることが2010年頃より数施設を中心に行われ始めている.

 本書はそのような社会的背景の中で,臨床現場から必然的に生まれた書である.心不全緩和ケアについて抽象的な概念にとどまらず,細部までこだわった具体的な記載が随所に認められる.特記すべきは,国立循環器病研究センターの実例について,詳細なチーム介入の経過が述べられていることである.患者向けの啓発パンフレットや薬剤マニュアル作成など,新しい試みも満載である.薬剤も詳細に使用法が記載されている.心臓移植,植え込み型左室補助循環を行う施設ならではの,倫理的問題についても触れられている.

 今後の課題であるが,心不全緩和ケアには社会的なコンセンサスも必要である.本書をはじめとする取り組みが社会に紹介され,国民全体で心不全緩和ケアを考える時代も遠いことではないと考える.