動きながら考える!内科救急診療のロジック

動きながら考える!
内科救急診療のロジック

書評

山中克郎 先生(諏訪中央病院総合内科)

 なんて素敵な表紙なのだろう.若い男性医師が病院の廊下を疾走している.救急患者のもとに駆けつけようとしているのだろう.本のタイトルに「動きながら考える」とある.まさに救急診療はそうだ.病棟診療とは異なり,とにかく時間がない.緊急性の高い疾患かどうか即断しなければならない.こんな時は型を決め,必要なことをルーチンで行うという診療スタイルが効果的である.

 救急車から初療室のベッドに患者を移動するまでの1分間で気道,呼吸,循環,意識レベルを簡単に評価する.次にPrimary surveyでは,「A」シーソー呼吸・陥没呼吸・stridorの有無,「B」呼吸音の左右差・呼吸複雑音の有無,「C」バイタルサイン・エコー(下大静脈径の呼吸性変動,左心室の壁運動,心嚢水・胸水・腹水の有無),「D」JCS・GCSの再評価,共同偏視,瞳孔左右差,麻痺の有無をチェックするという.重要ポイントが大変わかりやすい.

 丁寧にくまなく問診・診察することが必要なSecondary surveyでは,見逃しやすい所見について言及されている.背部の皮疹や靴下を脱がしての足壊疽の確認は,急いでいるときは観察がなおざりになりがちだ.

 (1)緊急性があり,(2)新たに発症したもの,(3)治療可能なものに基づいて,優先順位の高いプロブレムを選ぶ.同じ鑑別診断で病態が説明できるプロブレムを1つのグループとしてまとめ,説明できないプロブレムに対し新たに鑑別診断を展開していく.必要な治療を行い,入院するか帰宅するかの判断を下す.これらが「内科救急診療のロジック」であるという.なるほど…….

 鑑別診断の絞り込みに大切な,血液ガスの解釈とエコー検査についても詳細な解説がある.後半は7つのシナリオを用いて,救急室での診断と治療が臨場感を持って展開される.このように系統的に考えるクセをつけておけば,救急診療に慣れない医師でも標準化された診療が可能である.救急室で質の高い教育を行いたいと願う指導医にとっても大切な武器となる.救急診療に携わる全ての医師に強く推薦したい良書である.