薬剤師よ,心電図を読もう!

薬剤師よ,心電図を読もう!

書評

ラブストーリィは波形にのせて

平井みどり(神戸大学医学部附属病院 教授・薬剤部長)

 心電図とラブストーリィ,一体どんな関係が? と思った方は,ぜひ本書をお読みいただきたい.本書の構造は,章別のテーマがあって,ダイアローグ形式の解説が続き,最後に「ポイント」と「薬剤師に知って欲しいこと」というまとめがついている.最も特徴的なのは,各章最後の「薬剤師に知って欲しいこと」,すなわち,診断のために心電図を読むのではない薬剤師として,チャートの示す意味が理解でき,そして病態および治療薬の選択につながるような知識の整理ができることを目指した短評にある.薬剤師資格をもつ医師である著者の大八木氏ならではの視点が,そのまま本書の価値を決めているといっても過言ではない.
 
本書の使い方としてお薦めしたいのは,まず「付録」の「薬剤師に必要な基本的臨床医学知識~循環器編~」を読むことである.一読して「あ,こんなの知ってる」と思える人は,本文も難なく読みこなせるだろう.本文の最初から読み始める前に,「薬剤師に知って欲しいこと」に一通り目を通すこともいいだろう.知るべきことは意外に限られているので,ここでちょっと安心できるのではないかと思う.突然目の前に心電図の12誘導が出てきたら,よほど自信がない限り「パス」となってしまうだろうが,概略が理解できていれば,チャートから何か一つでも情報を得よう,という姿勢がもてるのではないだろうか.そこから抗不整脈薬との関係や虚血性心疾患,心不全や電解質異常との関連性などを読み取れるようになれば,薬剤師としては十分であろう.
 
そして,最も大事なのは正常の波形がどういうものかを,持続時間も含めてしっかりと頭に入れておくことである.意思疎通のために知っておくべき基本的医学的知識と,職種として知っておくべき専門的知識,この区別がうまくできないと,どこから攻めていけばいいかわからず,頭を抱えることになってしまう.その辺りを,医療現場を背景にしたドラマ仕立てで非常にわかりやすく,かつ実践的に説明する著者の力量は並大抵のものではないと,畏怖の念を抱くのは私だけではないだろう.