シンプルでわかりやすい 薬歴・指導記録の書き方

シンプルでわかりやすい 薬歴・指導記録の書き方

書評

舟越 亮寛 先生(医療法人鉄蕉会 医療管理本部 薬剤管理部長/亀田総合病院 薬剤部 部長)

 「シンプルでわかりやすい」という視点は、普段よりもち続けていなければならないものである。さらに世の中は、働き方改革と銘打って業務の効率化に注力している。医療界そして薬剤師業界においては、医師のタスクシフティング・タスクシェアリングと合わせてより急速に進み、機械化やAIの導入も推進される時代になった。
 一方で医療の質および患者安全の向上は、より客観的指標で評価され薬剤師業務の対人業務の保証も求められるようになった。対人業務の保証は記録である。しかし医療の質と効率化という相反する視点の中で指導記録さえも簡素化、チェックリスト化している動きもみられる。本書は薬剤師の指導記録の書き方から始まり、質の保証として監査修正(Audit)事例集として構成されている。本書の第1章では、問題志向型システムについて実例を挙げて解説している。薬剤管理指導が一般病院でも始まった20年前の書籍を適切に引用し、現代の薬剤師の活動範囲に合わせた形に表現されている。第2章の実践編では、退院時薬剤情報管理指導やお薬手帳への記載内容まで、実際に誰に読んでもらう記録なのかを常に意識させるように記されている。さらに改訂薬学教育モデルコアカリキュラム8疾患に代表される感染症治療、緩和ケア、がん化学療法などの日常で遭遇する代表疾患事例のみでなく、小児、高齢者のように年代別の事例も漏れなく構成されているところも特徴的である。第3章は著者の経験そのものが収載されているが、経験と根拠を相関させ、本書自体を何度も読み返せるように根拠ページが丁寧に組み込まれているところも日常業務の中で汎用できる仕様になっている。第4章は扉に記載されているように指導記録の監査・修正ではなく、患者との関わりの監査・修正であることを強調している。
 筆者と私は同世代であり旧知の仲であるが、語りかけ口調や対話表現がSNSやチャットのように図示されており筆者の人柄を表している。また、紙面上は日常でのコーチングの手法で記載されている。本書は指導者(上司)だけ、または学生や若手だけが読むための本ではなく、薬歴・指導記録に関する書籍の中でも、全世代に対して受け入れられるものとなっている。型に捉われ過ぎず、伝えるべき人に伝わる記録とは。本書の本質はそこにあり、全薬剤師にとって必読であると感じた。