最新号

「治療」2017年7月 Vol.99 No.7

在庫状況:在庫あり

2017年7月 Vol.99 No.7
複雑困難事例集

定価:2,700円(本体2,500円+税8%)

(今月の視点)

「そんなこと私の仕事ではない」 思わず口にしかけて飲み込んだ

 「そんなことは私の仕事ではない」後期研修医時代,込み入った社会的背景をもつ患者を前に,思わず口にしかけて飲み込んだ言葉だ.当時の力量では絡み合った問題を紐解くことができず,逃げ出したいような気持ちだった.先輩スタッフに助けられながら壁にぶつかっては何とか解決し,ときには解決できないまま無力感にとらわれるといったことを繰り返すうちに,「そんなことは私の仕事ではない」とのつぶやきは,いつの間にか「これは私1人では解決できない,さて誰に相談しよう」に変わっていた.
 複雑な問題を複数抱える患者を診ていくことは,プライマリ・ケア医の大きな役割の1つである.複雑困難症例に向き合うとき,すっきりと解決させてくれるような一元的なツールはなく,理論や手法を学ぶと同時に,そのたびごとに頭と身体を使って取り組む必要がある.マニュアル化できないからこそ,個別性を大切にするマインドをもち,各職種の視点を互いに尊重しながら地域のネットワークを活かして協力し合う地道な努力が必要となる.
 それでも自身の体験から現場で格闘する諸先輩方から学べることは大いにあると確信しており,今回の特集を企画した.前半は総論に加え,各地の最前線で診療されている先生方に各テーマを軸として事例にこだわって執筆いただいた.また後半は多職種連携に焦点を当て,あえて連携における困難さについて執筆いただき,さらに地域で粘り強く活躍されている方々の連携会議という取り組みを座談会形式で紹介している.
 1人でも多くの方,とくにかつての筆者のような若手医師には是非一読いただきたい.諸先生方の汗をかきながら現場に取り組まれる力強い姿から,きっと明日の診療に役立つ知恵と力とが得られるはずである.

[編集幹事]川崎協同病院総合診療科 吉田絵理子

特集の目次

■総 論
複雑困難な問題を愉しむ ─複雑困難な問題にどう立ち向かえばよいのか?(髙木 博)

■事例集
貧困:ワーキングプア(貧困労働者)が治療を中断する背景(栄原智文)
小児:イラッとするとき,患者は何か困難を抱えている(和田 浩)
LGBT:LGBT診療は究極の「思い至る」診療(星野啓一)
野宿生活者:価値観の個別性に対する配慮(和田浄史)
精神疾患:地域で支えるための一工夫(大矢 亮)
認知症:認知症困難事例(久野遥加,他)
災害時要援護者(災害弱者):災害の急性期で実践した心理社会的アプローチの経験(髙栁宏史)
物質依存(アルコール依存症):増加中の「認知症+アルコール依存症」! 「ハームリダクション」と「連携」で乗り切る!(鈴木 伸)
へき地,医療へのアクセス困難:徘徊や摂食障害がみられたが,ついに衰弱しきるまで入院に至らなかった高齢女性の一例(松澤廣希)
複雑な家族関係:家族により在宅療養の退路を断たれたアルコール依存症のケース(朝倉健太郎)
疾患が重篤:事件性が疑われた,とある急性アルコール中毒によるCPA患者症例から─医師としての適切な捜査協力のあり方とは─(鈴木 諭,他)
疾患が複雑:複雑な原因は何か? 優先順位を考慮せよ(廣瀬由美)
都市部の終末期医療:身寄りのない高齢者の終末期の治療方針を考えるときに (山本一視)
多職種連携(医師の立場から):ケアマネジャーとの連携がうまくいかず,病院スタッフに陰性感情が残った一例(山本由布,他)
多職種連携(MSW の立場から):医療従事者と患者のすれ違い(手呂内裕美)

■特別座談会
地域における院所を超えた多職種カンファレンスの試み ─地域のなかで連携し協力し合うことでできること,これからの課題─ (吉田絵理子,高橋靖明,中澤 伸,仁科淳子,島田珠美)

連 載

今月のお薬ランキング(16)
片頭痛治療薬(浜田康次)

楽しく臨床(15)
介護力の病態 「介護不全」と「限界家族」(宮森 正)

ゼロからわかる遠隔医療(13)
メディカルスタッフによる遠隔医療(竹村昌敏)〈監修〉exMedio

「治療」「薬局」合同連載 ポリファーマシー“ 処方整理力”を鍛える! Dトレ(16)
それは原因? それとも結果?(矢吹 拓)

「治療」「薬局」合同連載 Dr. ヤンデルの言葉のネタ帳
―“病院ことば”の,じっくり,例えば,結局は―(4)
女子力も免疫力もハラスメントだろうか ―Note4.「免疫」を言い換える―(市原 真)