最新号

「治療」2019年12月 Vol.101 No.12

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2019年12月 Vol.101 No.12
限られたリソースで使える 臨床現場の技

定価:2,750円(本体2,500円+税10%)

今月の視点

 今や「経験値」はエビデンスの前に劣勢である.しかし患者は経験豊富な医師を選ぶか,エビデンスに通じた医師に頼むか,どちらを選択するだろうか.エビデンスにいかに通じていようとも,経験豊富に勝るものではない.だから医師は1人でも多くの患者を経験しようと必死なのである.その理論にエビデンスがあるよりも,似た症例を経験したことに価値があると考えるほうが臨床にとって意義深い.
 エビデンスは比較対象するためにことを単純化する.〇〇の場合,〇〇とすると,など仮定が多く,〇〇は〇〇であるという.条件が多いのだ.その一方,臨床の現場では丸ごと1人の多様な因子をもち,かつそれらの矛盾し合う混沌とした人間において,ある理論の臨床適応を考慮しなければならない.治療には人生がかかっており,ヒトそれぞれ複雑な事情をかかえているのだ.臨床医が多くの臨床経験を積もうとするのは,1人ひとりの患者の事情と反応が全く違うからだ.
 臨床医がエビデンスを軽視してよいと思っているわけではない.エビデンスに基づいた知識は必要であろうが,現実の患者ははるかに複雑な存在であり,エビデンスに純化するには多くの労苦や経過が必要で,そこまで至らない経験は多くあると思うのだ.当然,経験だけあればよいという訳ではない.個人的経験に頼っていれば,流される.理論やエビデンス優位の学会の風潮に棹させば,孤立する.経験値とエビデンスのバランスは難しい.
 だがしかし,1人でも多くの患者を診ることによって確実に医師の経験値は上がっていく,それは確かである.われわれが臨床経験値を上げるために現場で営々と努力しているのはこの為である.ここに依頼した先生方は,エビデンスは勉強しているが,堅苦しい理論よりも1人の患者を診ることを大切に思っている先生方である.日々の修練をから得た多くの経験を語っていただいた.今後とも経験値を増やすためにも1人でも多くの患者を診ることを厭わない医師となるよう,若い先生方に願いたいと思っている.

[編集幹事]
川崎市立井田病院 かわさき総合ケアセンター 宮森 正

特集の目次

■できることを増やそう!
オピオイドの使い方(増田香織,他)
メサドンの使い方 ─「難治性疼痛」に対峙する─(久保田敬乃)
舌下投与できる薬剤とその応用(佐藤恭子)
皮下点滴(宮森 正)
失敗例から学ぶ漢方(樫尾明彦)
在宅看取り(佐藤将之)

■患者さんを楽にする!緩和ケアのコツ
緩和ケアの現場(小杉和博)
在宅がん末期患者の緩和(高木 暢)
内視鏡手術と緩和ケア(柴田泰洋)
肝胆膵がんの緩和ケア(加藤 薫)
血液疾患の緩和ケア(伊藤知紗子)
呼吸器疾患の緩和ケア(中野 泰)
重症心不全の緩和ケア(山岸 正)

■もっと視点を広げよう!
高齢者の診療ポイント ─薬物療法に焦点をあてて─ (服部ゆかり)
化学療法と緩和ケア・在宅ケアの統合(西 智弘)
医療現場の倫理問題とその解決(田中雅之)
人生の最終段階の決定(安藤 孝)
多職種連携とチームビルディング(村瀬樹太郎)
地域包括ケアと緩和ケア(宇井睦人)

連載

今月のお薬ランキング(45)
中枢性筋弛緩薬(浜田康次)

プライマリ・ケア診療の幅を広げる 飯塚☆漢方カンファレンス(10)
非常につらい倦怠感(吉永 亮)

症例× Q&A 超高齢社会シコウの利尿薬適正使用シコウ(6)
うっ血性心不全とループ利尿薬 だんだん利尿が得られなくなってきた ─ブレーキ現象と利尿薬抵抗性─(杉本俊郎)

こちらつるかめ病院臨床倫理カフェ つるりん(7)
ムンテラとうそと電子カルテ(金城謙太郎,長尾式子,竹下 啓)

映画で読み解く医療 ─シネメデュケーション(映画医療教育)─(11)
リビング・ウィルと蘇生処置の希望について考える(宇井千穂)

次号予告

2020年1月 Vol.102 No.1
家族志向型ケア入門
― 家族をみよう ―