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「治療」2016年5月 Vol.98 No.5

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2016年5月 Vol.98 No.5
こころの診療ファーストエイド

定価:2,700円(本体2,500円+税8%)

今月の視点

総合診療医に求められる「精神疾患のファーストエイド」を知る

 精神疾患のファーストエイドについて考えるとき,ある30代前半の女性が治療を求めてきたときのことを思い出す.当時,総合診療医として働いていた筆者は,「脳が溶けるような感覚に陥っていてどうしようもない.どうにかしてほしい」と訴える彼女を,夜間救急外来で診察し,身体的に問題がないことを確認し帰ってもらった.しかしながら,その女性は,数年後,筆者がまさに精神科医として働き始めようとしたときに精神科に強制入院となったのだ.筆者が診察して以降,どこにも受診歴
はなく,初めての精神科への入院であった.入院するまでの間,彼女は統合失調症を発症し,病状は非常に進んでいた.夫の傍らで泣きわめきながらつらそうにしている彼女をみて,「私に助けを求めてきたときにどうにかできていれば,これほどまでになっていなかったのではないだろうか」と何度も自問した.
 総合診療に携わる医師として,精神疾患は避けて通れない.というのも,筆者が救急外来で診た女性のように,精神疾患をもつ,あるいは精神疾患になりそうな患者の多くは,最初から精神科を受診するわけではなく,ほかの科を受診することが多いからだ.精神疾患かもしれないとわかったとしても,何をしてよいかわからずに,診療を避けたいと思った方も少なくないかもしれない.
 本特集では,医療従事者として専門家につなぐためのファーストエイド(メンタルヘルス・ファーストエイド)と,総合診療に携わる医師として実際に精神疾患患者を診療するうえでのファーストエイドという二部構成になっている.各項目では,うつ病・不安障害・精神病性障害・物質関連障害・自殺問題といった主要な問題に対して,それぞれのエキスパートの先生より精神症状の評価から,薬物療法,精神療法,早期介入の是非,当事者の視点に立ったファーストエイドのあり方まで幅広
く,披瀝していただいた.また,精神障害の当事者であることをオープンにして活躍するお笑いコンビ,松本ハウス(ハウス加賀谷,松本キック)と対談を行い,加賀谷氏の体験から,精神疾患に対するファーストエイドとして総合診療科医に求められるものを議論した.
 本特集が,読者諸氏の日常診療や指導,地域での活動のお役に立つなら,編者にとって望外の喜びである.

[編集幹事]  国立病院機構 肥前精神医療センター 久我弘典

特集の目次

■特別座談会
当事者の視点でみるファーストエイドの重要性 (久我弘典,大杉泰弘,織田麻奈美,ハウス加賀谷,松本キック)

■総 論
精神疾患のファーストエイドの重要性 ─精神科医の立場から─(大塚耕太郎,他)
精神疾患のファーストエイドの重要性 ─総合医の立場から─(井村 洋)
精神疾患のファーストエイドの重要性 ─当事者の立場から─(広田和子)

■メンタルヘルス・ファーストエイド
メンタルヘルス・ファーストエイドとは(鈴木友理子)
うつ症状に対するメンタルヘルス・ファーストエイド(小原圭司)
不安症状に対するメンタルヘルス・ファーストエイド(藤澤大介)
精神病症状に対するメンタルヘルス・ファーストエイド(橋本直樹)
物質使用障害に対するメンタルヘルス・ファーストエイド(長 徹二)
医療従事者向けのメンタルヘルス・ファーストエイドに則した短期教育研修プログラム(加藤隆弘,他)

■総合診療医による診療ファーストエイド実践編
総合診療医が行う,うつ病へのファーストエイド(今村弥生)
総合診療医が行う,不安障害診療のファーストエイド(中前 貴)
総合診療医が行う,統合失調症診療のファーストエイド(佐藤創一郎)
総合診療医が行う,双極性障害診療のファーストエイド(高尾 碧,他)
総合診療医が行う,アルコール使用障害診療のファーストエイド(青山久美)
総合診療医が行う,自殺危機介入のファーストエイド(張 賢徳)
総合診療医が行う,精神療法ファーストエイド(大野 裕)
精神疾患への早期介入の是非 ─認知症を例に─(名郷直樹)

■おわりに
プライマリ・ケア医療と精神科医療の〈わたし〉(久我弘典)

連載

今月のお薬ランキング
β遮断薬(αβ遮断薬含む)(浜田康次)

楽しく臨床(1)
「ありがとう・おいしい・ごちそうさま・ごめんなさい」 ─男子諸君に勧める高齢化社会の礼儀作法─(宮森 正)

「治療」「薬局」合同連載 ポリファーマシー “処方整理力”を鍛える! Dトレ(2)
これがないと眠れないんです…(矢吹 拓)

心楽しく働くにはどうしたらよいか?? 信念対立解明アプローチ入門(19)
炎上の人(京極 真)

在宅医療をはじめよう! 在宅医療の質=理念×システム×制度の知識 (17)
【システム編】組織の規模と運営について ─ 1人? それとも複数体制?─(永井康徳,他)

プロ×プロ イナダ(研修医)も学べばブリ(指導医)になる 現場のプロと臨床推論のプロが教える診断能力アップ術 (10)
「外傷だ〜.これは,すぐに頭部 CT だ〜」……ではないよ!(田中惇也,林 寛之,大西弘高)