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「薬局」2020年6月 Vol.71 No.7

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2020年6月 Vol.71 No.7
がん薬物療法と腎機能低下
腎機能を考慮したマネジメントの基礎と実践

定価:2,200円(本体2,000円+税10%)

特集の目次

■特集にあたって(寺田 智祐)

■Onco-Nephrology −がん診療における腎障害について−(北井 悠一朗ほか)

■抗がん薬による腎機能障害の予防・対応策(小出 博義ほか)

■がん患者の腎機能評価と腎機能に応じた抗がん薬の投与量調整
・がん患者における腎機能評価と留意点(下方 智也)
・抗がん薬のPharmacokinetics/Pharmacodynamics(野田 哲史ほか)
・腎機能低下患者(保存期)および透析患者における抗がん薬の投与量調整(大野 能之)

■慢性腎臓病/腎不全を合併するがん患者で注意すべきがん薬物療法
・S-1+シスプラチン療法(松尾 宏一)
・CapeOX+ベバシズマブ療法(古田 祐美子ほか)
・シスプラチン(カルボプラチン)+ペメトレキセド+ペムブロリズマブ療法(藤田 行代志)
・メトトレキサート大量療法(山崎 伸吾)
・腎癌領域の分子標的抗がん薬(藤堂 真紀)
・慢性骨髄性白血病の分子標的抗がん薬(三浦 昌朋)
・抗EGFR(epidermal growth factor receptor)抗体(髙橋 克之ほか)
・支持療法・がん性疼痛鎮痛薬(平井 さやかほか)

シリーズ

■薬剤師ふたばの症例検討奮闘記
フィードバック
症例検討会終了後は成長のチャンス
(湊川 紘子,上塚 朋子)

■プロフェッショナルEYE 専門薬剤師からみた勘所
真のバチルス菌血症を研究せよ!
(望月 敬浩,倉井 華子)

■薬剤師が三ツ星シェフ −業務に活きる!活かせる!経静脈栄養のホントのところ−
経静脈栄養組成の立案に必要な情報 −経静脈栄養の適応と投与ルート−
(東 敬一朗)

■医療マンダラ 〜思考と感性のセンスを磨く〜
地球規模で拡大している新型コロナウイルス感染症をめぐって思うこと
〜人類と感染症の闘いの歴史と闘い方に見られる日本独特の文化〜
(中野 重行)

■薬剤師にもできる! 将来幸せに働くための投資講座
暴落に負けるな! ピンチをチャンスに変える方法
(桑原 秀徳)

■「治療」薬局」合同連載 症例×Q&A 超高齢社会シコウの利尿薬適正使用シコウ(最終回)
利尿薬の適正使用を目指して
The use of diuretic regimens remains an art rather than science
(杉本 俊郎)

巻頭言

 高齢化の進展に伴う,がん患者と慢性腎臓病(CKD)患者の動向に関する3つの統計について紹介したい.
 国立がん研究センターがん情報サービスの『最新がん統計』(更新・確認日2019年10月04日)で公表されているデータを解析すると,2015年にがんと診断された件数(罹患数)は,約89.1万件であり,男51.1万件,女38.0万件である.このうち,65歳以上の高齢者は65.3万件(全がん罹患の73.2%),75歳以上は37.4万件(同42.0%),85歳以上は11.9万件(同13.4%)と,がんと診断された患者のうち,実に約4人に3人は65歳以上となる.がん登録が整備された1975年からのデータを見てみると,男女ともに75歳以上の罹患数が増大していることが読み取れる.すなわち,医療の進歩などによる平均寿命の延伸に伴い,高齢がん患者が治療のために手術やがん薬物療法を受けるケースが増大していると考えられる.
 一方,同サービスの『がん診療連携拠点病院等院内がん登録生存率集計』(更新・確認日:2019 年12 月14 日)によると,2010〜 2011年における全がんの5年実測生存率は58.8%,また,がん以外による死亡を補正した5年相対生存率は66.4%と報告されている.さまざまながん種が含まれ,またⅠ期からⅣ期までのすべての病期を含んでいる統計であるが,がんと診断されても60%前後の患者は5年間生存していることになる.がん薬物療法が主な治療法となるⅣ期だけを統合したデータは公表されていないが,例えば,大腸癌Ⅳ期の5年実測生存率は29.4%,5年相対生存率は31.3%となっている.これらの生存率は,年度ごとに上昇しており,新しい検査や治療法の導入により,がん患者の生存期間は確実に延長していることが読み取れる.
 CKDは,1つの疾患の名称ではなく,腎臓の働きが徐々に低下していくさまざまな腎臓病を包括した総称である.主な原因としては,糖尿病による「糖尿病性腎症」,複数の難病を包括した「慢性糸球体腎炎」,主に高血圧や加齢による「腎硬化症」などが挙げられる.少し古いが,日本腎臓学会『CKD診療ガイド2012』によると,CKD患者数は約1,300万人(成人8人に1人)と推定されており,高齢化や生活習慣病の増加などにより,CKD患者はさらに増加していると予想される.一方で,CKDが進行し,末期腎不全となると透析療法が選択されるケースが多いが,これまでの腎疾患対策の結果,新規透析導入患者数は横ばいとなっている(日本透析学会『わが国の慢性透析療法の現況』,2018年12月31日現在).同調査によると,透析導入患者の平均年齢は9.99
歳であること,透析患者の死亡原因としては, 心不全(23.5%), 感染症(21.3%),がん(8.4%)の順であることなども報告されている.すなわち,透析導入患者の約10人に1人はがんが原因として死亡していることになる.
 これらの統計から推測できることは,今後も,がんの罹患年齢の高齢化と生存期間の延長によって,CKD患者(透析患者含む)にがん薬物療法を施行する機会がますます増加していくことである.このような場合,特に抗がん薬の投与量調整や副作用対策など,一般のがん患者と比較してより決め細やかな対応が必要である. そこで,本特集では,がん薬物療法と腎機能低下にスポットを当て,第一線で活躍している先生方にトピックスごとに解説いただいた.本特集が,がん診療に関わるすべての医療者にとって,良き参考書となることを心より祈念している.

寺田 智祐
滋賀医科大学医学部附属病院 薬剤部 教授・薬剤部長

次号予告

2020年7月 Vol.71 No.8
薬剤性光線過敏症
― 適切に対応できるチカラを身につける ―